上
あれから何年の月日が流れたのだろうか、天界の空気にも慣れ、そこでの暮らしにも順応したクリスは出会った神たちに『天使』の称号を与えられ、天使の通う学校に行っていた。
学校でのクリスの成績は優秀で、教師(もちろん天使)からも一目置かれていた。
「クリスさん」
「はい先生」
クリスは常に外面は良いし、いい笑顔で返事する、だから内心→「いまから遊びに行こうとしたんですけど」っと思っていても思うだけ。口にも態度にもしない、それがクリスクオリティー
「実は近々大神様がおいでになるの」
「視察ですか」
「それで、上でもクリスさんの知名度は知られていて、ぜひお会いしたいんですって」
メンドクサイと思いつつクリスは微笑んだ。
教師に媚を売っておいて損な事はない。
「私に会いたいだなんて、光栄ですわ。えぇ勿論私でよければ」
とか言いつつやっぱりメンドクサイなと思っていた。
―――と
「大神ってなに?」
「きゃあああああああああああああ!悪魔ぁ!汚らわしい!天使領域に入ってくるなとあちらの悪魔に教わらなかったの!?」
「先生落ち着いてください!リンちゃんおいで」
天界より参上したクリスとリンは神にそれぞれ『天使』と『悪魔』の称号を渡されその領域に分けられたわけであるが、どうしたことかリンは悪魔領域になれずに隙があれば天使領域に入りクリスに会っていた。
ちなみに天使は悪魔が大嫌いらしい、逆も然り。
「なんでリンちゃんこっちにこれるの」
「あの悪魔のババァやなんだもん」
「イヤイヤ、そうじゃなくってね」
悪魔領域から天使領域の境目には二人の男女の神が強い結界を用いて、お互い通れないようにしているはずだが、リンはなぜかほぼ毎回来ることができていた。
本当は来ちゃいけないのだけれど
「なークリス?」
「何」
リンはクリスに連れられて公園のベンチに座った。そしてクリスの作った甘いお菓子を食べながらリンはクリスにさっきと同じ事を聞いた。
「大神ってなんだ」
「神様より上位ってことよ」
リンが口からお菓子を落とした。
「神様より上が居るのか」
「授業で習わなかった?」
知らないとリンは言い切った。それもそうだ、いつも悪魔学校では逃げ回っているのだから、そもそも真面目に授業なんて受けたことすらない。
クリス溜息ついた。
「ちなみにね最高位は『大神天魔師』様、その次が『大天師』様と『大魔師』様、二つあるのは聖君と魔君ね」
「?」
「光と闇に分かれてるって事、悪魔と天使のお偉いさんって考えたら分かる?」
ちっとも理解していないようなのでクリスはこの説明を止めることにした。
馬鹿に何を言ったって無駄と言うことは今までの経験上分かっているからだ。そんな労働力の無駄なことはしない。
「次が大神でその最期が『神』今の私達の親だとか言ってる人たちね」
「その言い方酷いな」
白く仙人のような姿をした男が美しく似たような服を着た女性と歩いていた。
ちなみに男はクリスが栗を投げた相手だ。
「ねぇ、なんで大神がクリスに会うんだ?」
「それはね、私達が本当の親ではないからですよ」
「知ってる」
えぇって驚いたリンに対し、クリスは冷静に返した。
「じゃあ大神様の子どもって事?」
「さぁ?我らが頼まれたのは、あなた方を人界から回収及び天界の空気に慣れさせるというリハビリ係りに過ぎないのです」
「ようするに、詳しいことは聞いてないって事だ」
「それにねリンちゃん」
クリスはリンに微笑みかけた。
「この秀麗なクリスちゃんがこんな下級天使の身分で収まるわけ無いでしょ」
「……」
あっはっはと笑うクリス。リンはクリスのくれた空になったお菓子の袋を逆さにしていた。
二人の神は苦笑いで二人を撫でた。
今はまだ、流されるだけの少女で居て欲しいと言うのが二神の望みであった。
神様の強さもピラミット式