金と火
錬金をつかさどる金の女神、エレストはいつも自分の家である『金豪籠殿』にて引きこもり、何かを作っていた。何を作っているのか本気で誰も知らないという・・。
クリスは滑らかな柱を見つめながら、売ったら高そうだなと考えていた。
「久振りじゃな、クリス・・昔知恵比べをして以来かな」
「そうね、エレスト・・相変わらず・・ってとこ?」
長い銀色の髪の毛が床をすっていても気にしないらしい。
「何作ってたの?」
「何も」
「何も?」
こんなにも煙がもくもくとあがっているのに?
「ワシは探求していたのじゃ」
長い髪の毛がうっとおしかったらしく、前髪をたまねぎのように持ち上げ束ねた。
「世界の物質をな」
「根に持ってるのね、知恵比べで私に負けたこと」
「当たり前じゃ、これでも『錬金』の巫女・・すなわちすべての知恵を駆使して作り出す金属・・」
「だーもう、いいってそういうことは」
「いくら賢いお前でも、世界のありとあらゆる物質の成分生成などわかるまい」
「もういいってば・・で?私の用件聞いてくれるかしら?」
「よいぞ」
「まだ何も言ってないってば」
クリスはうんざりしたようにうな垂れた。
まぁ自分も負けたらそうなっていたかもしれないがと、クリスはあきらめた。
知の女神候補はいくらでも居るが、誰一人クリスに挑んでは足元に及ぶことすらできず敗れ去る。誰も彼女に勝つことはできないだろう・・なぜなら神の中でも許された、選ばれたものしか読むことができない世界の理の書を唯一読んだことがあるからだ。・・リンもあるけれど、誰も信じないので論外
「クリス村に移住だろう?よいぞ、お前がいつでもワシの挑戦を受けてくれるならばな」
「いいわよ、勿論」
めんどくさくなってクリスは許可した。
・・負ける気もしないしね。
・。・。・。
『緋翔殿』は灼熱の劫火の中で守られる、というよりは覆いかぶさるようにそこに鎮座していた。もっとも最下層の地獄に近い場所と呼ばれている。
「おぉーいラオー」
普通の天使が入ってしまえばたちまち穢れる、もしくは焦げるが、悪魔のリンには業火はなれたものだった。よく閻魔のところいってるし
「おや・・リンか、久しいな」
「よ」
閻魔は魂の罪の振り分けをする裁判員で、ラオは罪状を言い渡すのが仕事だ。
「書類の仕事ようやるわな」
「ふふ・・リンもいい加減やらねば、山ができるぞ」
そもそも神にははっきりとした性別がないが好んで女の姿を作る。そのなかでもどっちつかずの姿をしているのがリンとこの炎をつかさどる女神『ラオ』であった。
というか元老院の中ではリンとラオは男神と判断している人たちも多々いる。
「山どころか・・山脈ができてるだろうなー。はーっはっはっは!憂鬱」
「・・で、世間話でココに来たわけではないのだろ?」
「そうそう、クリス村に来いよ」
「断る」
そっくとーう。
しかしめげるリンではない。
「仕事なら向こうでもできるしさ・・のーんびりできるぜ」
「ふふ・・私にそういうことは通じないぞ」
「ちっ・・」
この真面目人間め!
・・しかーし、馬鹿なリンちゃん一応考えてる。
「クリス村なら、安全に彼氏にあえるぞ」
ぴく、反応した。
にやぁぁーリンは口が裂けんばかりに笑った。
「たぁしっかぁー?レベルはそこそこの大天使だったけー?ま、レベルは高くても神レベルの称号の高さが違うからなー・・逢引するのはココだと彼氏が穢れるしー、かといって向こうに言ったら騒がれるし?」
ゆれてる、震えてる、後もう踏ん張りだな。
「彼氏つれてクリス村初結婚式とかあげちゃったりしちゃったりしちゃう?」
「け、結婚など・・!そそそ、そんなのまだ早いのではないか!ま、まだ手、手しか繋いでないし」
お前は純粋な中学生か
自分でも言うのもあれだけど、こいつ美男子みたいな顔して乙女思考だな・・。
「分かった!そこまでいうならクリス村とやらに移動してやろう」
「せーんきゅー」
「・・・・け、結婚・・」
リンは頭がかゆくなった。