上
ある日のことだった。
「ねー、リンちゃん」
「あ?」
最近、クリス村につれてきた子どもたちがリンの家の周りをうろちょろする。その理由は多分リンが牧場を営んでいるからだと思われる。
「卵ちょーだい」
「ほい」
「リンちゃんってねー、悪魔なんだよね」
「おう」
少女の一人、名をリリカという少女はエリンの図書館で借りた本を広げた。人間の作った神話の挿絵の部分で、魔王ルシファーがのっていた。
「リンちゃんも、黒い羽とヤギみたいな角はえるの?」
「はやそうと思えばはやせるし、ヤギにもなれるけど?」
「そうじゃなーいー」
リンは本の絵を見ながら頭をかいた。
「あのね、悪魔と天使はもとは同じものなんだって知ってたか?」
「えー?嘘だー」
「嘘じゃねーし、悪魔も天使ももとは同じ魂の塊で、その魂が自分の身体を構成するものとして必要なエネルギーを吸収する。そのエネルギーのもとが違うから天使と悪魔ってわかれちまうんだ」
「???」
こどもたちは頭の上に一杯のクエスチョンマークを浮かべた。
さっぱりという顔
「・・」
リンもタオルで汗を拭いながら困った顔をした。
「おりゃー賢くないんで・・賢い人に聞いてください」
「図書のおねーさんも知らないって言ってた」
「その図書のおねーさまよりも賢い人がこの村にいるだろう」
「・・リンじゃないよね」
「失礼な、そうだけど」
子ども達の視線が自然とリンの家の隣に移った。
隣の家は農業やガーデニングなど、植物を育てることに秀でている人が住んでいた。
「いってこい」
子ども達はお礼もいわずに走っていった。
「リン様?お食事の用意ができましたよ?あら、こどもたち、いそいでどちらに?」
「知恵の女神のもとにさ、さーてと、バード!飯飯~」
お昼の用意を済ませたクリスはエプロンを取るとテーブルに並べた。
今日はバードが作るといっていたからリンの分を作る必要は無い。あの大食いは身体が細いわりには大食いだからいつも作るのは大量でめんどくさい
今日は楽でいい
「クリスちゃーん」
「ん?」
一度手に持ったお箸を机の上において扉を開けた。そこには子どもたちが居た。
「あら、リリカにトーマ、リコリスにネルにマキャベルじゃない、どうかした?」
「・・」
「?」
「イー匂い」
子ども達のお腹がグーッと鳴った。
「お昼食べてこなかったの?」
「クリスちゃんに聞きたいことあったから」
「へー・・しょうがないな」
クリスはもう一度エプロンを手に取ると料理を始めた。ものの数分で作ったお料理は輝いて見えた。
「さすがクリスちゃーん」
子ども達はいただきますというと、綺麗に残さず平らげた。
クリスも満足
「で?聞きたいことって?」
「うん、リンちゃんがね・・なんだっけ」
「もう、トーマったら!悪魔と天使の魂のエネルギーの違いがどうたらって」
「ほう、それで?何が聞きたいのかしら」
「天使と悪魔が同じってなんで?でも違うって何がー?」
クリスは子どもが何を言っているのか分からないけど、とりあえず天使と悪魔について知りたいのだろうことを察した。
「えーとね、つまり悪魔は人間の『悪い意思』を食べるの」
「悪い意思?」
「そう、殺してやろうとか苛めてやろうみたいな」
「へー」
「で、逆に天使は『良い意思』を食べて返還するの」
「返還するの?どうして?ゲロッちゃうの?!」
「違うわ!良い意思って言うのはつまり、美味しい料理なのよ、ソレを食べたら幸せでしょう」
「うん、さっきのクリスの料理美味しくって私幸せだった」
子どもの素直な感想にクリスは微笑む。
「そういうことよ、つまりお腹をすかせた人がいるとするわよ?」
「うん」
お腹をすかせた人、まぁ仮にAさんとTさんが居るとする。
Aさんは居酒屋に行って強いお酒や脂っこい肉ををバンバン食べまくる。
逆にTさんは高級レストランに行って美味しい料理を食べる。
「そうなると、Aさんはベロンベロンに酔っ払って暴れだす。これが悪魔ね」
「悪魔は酔っ払いなの?」
「違うの、良いことと悪いことの区別がついているけど、自分の本能に素直ってこと」
「Tさんって天使?」
「そう、美味しいもの食べて幸せになったらお店の人にチップを渡す。まぁ天使はチップ代わりに幸せや奇跡と呼ばれるものを渡すんだけどね」
「へーそうなんだー」
こどもたちは納得した様子で満足したらしい。
「悪魔が酔っ払いと同等に扱われた・・」
「ん?リンいたの?」
「居酒屋の何が悪い」
「例えよ」
「うわーん」
泣いているわりには、リンは楽しそうだった。
楽しければーいーんですbyリン