ステップ4
「エリンさん、今日はなんの本読んでるの?」
「クトゥルフ神話よ」
病室の中で少女は本から目を話さずに愛想をふりまく看護婦にそう簡単に答えた。エリン・ソーは10歳の頃に医者に不治の病になっていると宣告され、それからずっと病院の住民と化していた。
「く?クフルフ?」
「クトゥルフ神話、知らないのも無理ないわね。ラヴクラフトが創作した数十篇の小説や詩を他の偉人が色々足してできた話よ、この根底に到底普通の人間には理解し得ない、できない存在への『宇宙的恐怖』があるのよ」
「へ?へぇ~?」
「つまり、架空の神様の話よ、私は神の存在や宇宙の可能性について知りたいの」
看護婦はクエスチョンマークを浮かべて出て行ったのを見てエリンは扉に向けて本を投げた。
「なによこんな本渡して!」
彼女の両親は有名な大学の教師であった。両親は気を利かせてなのかどうか分からないが、彼女の暇にならないように本をよく届けてくれたが、彼女には面白くないものであった。
花の16歳、まだまだ遊びたい盛りなのに
「つまらないわ」
「確かにつまらない」
エリンは顔を上げた。
「病院ってのは静かで時が緩やかに流れている。病院って現実とは少しずれた緩やかな時間軸にいるって知ってた?」
「誰!?」
四階の窓からぺらぺら喋る女は紫色の髪と瞳をしており、獰猛な獣のような笑みを浮かべた。
「おい、ナースコール押そうとするなよ」
「きゃ」
ナースコールが浮いた。
「なぁ、お前世界が見たいんだろ」
「だ、だから何?見せてくれるとでも?」
「うん」
紫の人は微笑む。
「自己紹介がまだだったな俺はリン」
「エリン」
リンは深く笑った。
「よし、じゃあお前クリス村の住民な!」
「クリス村?」
「そうだ、俺の村でもいいけどね」
「どっちでもいいわ、でも・・私」
「OKじゃあ今すぐ行こう」
「え?」
リンは指を鳴らした。
エリンの風景が変わった。
広くスカスカの家が並ぶ土地だった。つまり、何もない地味な広大なところ・・ココが世界?
「あ、りーん、もういいからね~」
「おう、よかったなエリンお前で最後だ」
全く普通の家とは違う不思議な形の家がたくさんな並んでいた、ケーキの形をした家やサッカーボールの形をした家、ある家は炎を模った家もあった。
「ワンダー・・」
「ココはクリス村、ちなみに村長のクリスね」
綺麗な少女が現れた、金色のウェーブのかかった髪に滑らかな物腰が上品さを醸し出していた。
「不思議ね、朝なのにあんなにはっきり月が浮いてる」
「私が月の女神で光の巫女だからよ」
クリスはにっこりと笑った。
「どんな家に住みたい?場所は?はい地図」
そんなに広くないことが地図から分かる。
「じゃあ広場の斜めマスの上に・・あの」
「分かったわ、本屋ね」
「何も言ってない!?」
「分かるわよ」
クリスは不敵に微笑んだ。
「だってクリスちゃんだもの」
・・・分からない。
「家の形さ、本の形にしたら?面白いじゃん」
「リンナイス、じゃあそういうことで」
「え、嫌私は普通のでいいんだけど」
「「いいの私(俺)が面白いから」」
ココの家の形は、実は二人で勝手に決めてる?
エリンは不安よりもこれからの先の希望で笑ってしまった。もしかしたら私の天職になるかもね?