下
「見つけたぜ・・くく、クククク!ハーハッハッハ!!」
エデンと呼ばれるそこには、二人の支配者が統治しており、ソレを象徴するかのように月と太陽が同時に存在していた。
「ん?」
「どうしたのリン?」
今日は魔学校と聖学校と合同で、校外授業を行っていた。地形などを利用した戦い方の授業だ。
「いや、なんか気配を感じた」
「そりゃーねぇ」
クリスは扇子で顔を仰ぎながら言った。
「ここ、ジャングル区域だもんねー」
実習地に選ばれたのは『ジャングル』であった。
「ゲリラじゃあるまいし、ジャングルで戦うことなんてないってーの」
「わーい」
「ラゴウだけよねー喜んでるのって。見てリン、ヴァニラなんて」
汗ダラダラ滝のように流して目も虚ろ白雪のような肌が真っ青になっていて、いまにも倒れそうな勢いである。二人は冷や汗をかいた。
「大丈夫?ヴェニラ・・氷属性に火属性の土地はきついでしょう?」
「なんのこのしき、これしきで根を上げていては氷の巫女など務まりませんわ!」
素晴しき根性。
「でもヴァニラ、見苦しいわよ」
クリスの痛恨の一撃でヴァニラは沈黙した。ラゴウとリンは黙ってクリスを見た。
「・・なによ」
「べつに」
もう駄目、と呟いているヴェニラをみてクリスは溜息を漏らした。
「仕方ないわねー。ホラ」
クリスが指をくるっと回したらヴァニラの顔色がよくなった。
「ヴァニラだけ、魔法で涼しくしといたわ、あと回復もね」
「さすがクリスさん、暑すぎず、寒すぎず、適温ですわ。このぐらい調節できるのは素晴しい」
「・・ヴァニラの言い方って、どこか教師じみてるのよねー」
「そうでしょうか?」
ラゴウがニカッと笑った。
「っていうか、おばはんぽいんやなー」
「な、なんですって!!!」
氷の矢が降り注ぐ、ラゴウは泣きながら逃げた。
「・・バード!」
リンはバードを呼び出すと空に向けてバードは風を吹かせた。風が刃に変わる。
キィン!
刃が跳ね返された。
「やっぱり、誰かいたわねリン」
「あぁ、・・誰だ?」
暗闇から現れたのは、ツンツン頭で背の低い男。
にやっと笑うと魔力を一気に放出した。他の人は魔力に気がつき悲鳴をあげた。
「きゃぁああ!極悪王子ぺジ様だわぁ!」
「逃げろー殺される!!」
みんな逃げていった。
クリスと、ラゴウ・ヴェニラを覘いては。
「ぺジ?聞いたことあるなー」
「あぁ、あれよリン、アクの息子で囚人だったって奴」
「なんかよう?」
リンは恐れもせずぺジを見て聞いた。
「ナンのようだと?」
ぺジは魔力をリンに向けて思いっきり放った。周りにいた三人は素早く飛びのいた。
「リン!」
ラゴウがリンの名を呼ぶ。
煙が濛々たちこめる。
「俺がエデンのヤミを支配するに相応しい、後からやって来た貴様になんぞ、くれてやるものか!!」
「典型的なもんね」
クリスが呆れた声を出した。
「貴様を殺ったあと、アクも殺す!はーっはっはっは」
大笑いを始めたぺジを三人は呆れた顔で見合った。
「アクって、どっちのアクなんだ?」
「!!??」
けむりが風に完全に流れていく。
「馬鹿な!?」
「馬鹿なのはあんたよ」
クリスは魔法でぺじを地面に叩き落とした。
「あんたとリンじゃあ差があるってことぐらいも分からないなんて、高が知れてるわ」
ぺジは怒り狂った目でクリスを見た。
「おい」
リンはぺジの頭を踏んだ。
「クリスはスカートなんだから下から見上げんな」
「大丈夫よ、中は真っ暗っていう魔法かけてるから見えないわ」
「どんな会話しているんです!はしたない」
クリスとリンはお互い顔を見合わせた。
「さぁってと」
「どうする?」
「決まってます」
「反撃やな」
ぺジ様ピンチ!
そしてフルボッコ
「で?」
リンは魔法で出したモアイの像の下に居る、ぺジを見下した
「何しにきたって?」
「おのれ、糞がー!この俺様を何だと思ってるんだ!!王子だぞぉぉ!」
「はーオッサンがなに言ってんだろうな」
リンは指を立てると空からもう一つモアイが落ちてきた。
「ぐは!」
クリスは飽きたらしく大きな欠伸を一つしてクグリを召喚した。
「帰る」
「おーい、まってくれよー」
「い・や。雑魚ばっか見ててもつまんない」
「ザ、雑魚だとぉ!魔界のプリンスであるこの俺を雑魚扱いだとぉぉ!」
「あー、もううっさい」
リンはもういっこ追加した。
「リンさん」
「何ヴァニラ」
「警察を呼んでおきましたから、モアイを消しなさい」
「あ、無理」
リンは手を振った。
「出せても消せない、消せても出せない」
「・・クリスさん、この方は何を言っているんでしょうか」
「両極端なのよリンちゃんは」
クリスは指を鳴らして全部のモアイを消して、代わりに雷の檻を作って縛った。
警察隊がやってきて連行する。
「ご協力に感謝します!」
警察の一人がそういって頭を下げて走って言った。
「さてと」
クリスは手のひらに魔力を集め、練り、ある場所に向けて攻撃した。
どっかーん
「うぎゃ!」
ぼと、真っ黒焦げのアクが落ちてきた。そしてあとから愉快そうな顔をしたクスリが微笑みながら出現した。全く
「面白いことしてくれるじゃない?」
「あら?何のことかしら」
エデンを支配しているこの二人の目から、逃げられるはずが無いのだ。たかがアクの息子が
「残念だけど、私らの実力を量るにはあの男には荷が重かったようね」
「そうね」
「認めてんじゃねぇか!」
「やはり貴女達は最強だわ」
リンの突込みを軽やかに無視。
「貴女達を、エデンの跡継ぎとして認めましょう」
「よかったな!」
わー
「すごいじゃないですかクリスさん、最上クラスのエデンの支配者だなんて、これ以上の光栄なことはありませんよ!?」
「リンすごいんやなー」
クリスの目が、きっらーんと光った。
「いらないわ」
・・え?
みんなの目が丸くなる。
「いらないっていったの、他人が用意したもんなんて、くだらない」
「伝統って言うのよ」
「どうでもいい、私が欲しいのは私が制覇した世界だけ」
何様神様クリス様発言。
「じゃあどうするの?」
「私は私で、村でも作るわ」
「「村?!」」
目をもう一度丸くする。
「私の村、クリス村を作るの!行こ!リンちゃん」
「ん?うん」
内容の良く理解していないリンを連れてクリスは歩いていった。