移動中
クリス村は無傷だった。とっさに魔法壁を巫女達が張り、敵の攻撃を和らげたのだ。しかし、状況は変わらない。
「双子に壊されて修復中の村を、これ以上壊されちゃたまんないわ」
「「ごめんなさい」」
さりげなく皮肉を込めたクリスに謝りながら、ルミは敵を見た。
「あれもまた、あんたら支配者の先祖?」
「面白いこと言うわね、ルミ」
クリスは全くそう思ってないような顔と声で言うと、異空間からロットを召還し、目の前にかざした。
「私たちは支配者じゃないし、血族的なものなんて霧よりもあやふやなもの。とどのつまり無関係よ」
「へぇ、で?」
ルミは後方へと下がった。
「あいつら、どのぐらいのレベル?まぁ、あたしらにどうこうできる相手じゃないでしょうけど」
「察しがよくて嬉しいわね」
敵が放った気功弾をロットを振りかざし、クリスは破ったが、第二波は破れず、魔法で弾き返す。
向こうの魔法型らしい敵は、指で魔方陣を紡ぐと、そこから黒いオオカミのような獣が現れ、クリスをスルーして村に特攻していく。
「なんか来てんねや」
昼寝していたラゴウが家から出て、発した第一声がこれだった。
リンが獣をクナイで脳天ブチ飛ばしていく。
「あいつらの強さ、どのぐらいだと思うリン」
「え?えー」
リンは頭をひねる。
「村人が三輪車だとして、ルミたちは自動車。クスリやスリープたちは電車だとして、特急だな!」
「……その考え方。わかりずらいわ」
「とりあえず」
クリスは指定魔法を精製し、場所を異空間に移動させた。
村人は終わった?っと顔を出す。
「終わってないぞ」
腕を組んだままラオは難しい顔をしている。
「いつもなら、クリスかリン。どちらかが瞬殺しているのに、今回は場所を変えた」
「それって、難しい相手ってこと?」
「いや、どうだろうな」
ラオは村人のほうをむいて苦笑いを浮かべた。
「なんせ、あの二人はお遊びが大好きだから」
「瞬殺できる相手でも長引かせることあるからな」
「……」
村人は納得したらしい。
それはそれでクリスたちの人望は大したもんだとアクは思った。
アクはふと横にいるクスリを見た。いつも静かに傍観しているクスリだが、今回は何やらいつもとちがい腕を組んで何か考え込んでいた。
「どした?クスリ」
「えぇ……少しクリスの行動が気になって」
「移動したのは村狙われたら面倒だからだろ?」
「そんなのわかってるわ」
一刀両断されアクは少し落ち込む。
「何故ロットを出したのかしら」
「え?」
本来魔法使いがロットや錫杖、魔導書を使用及び取り出すときはだいたい魔力を保存、供給、増幅などに利用するときだけ。
「クリスのようなモンスターも逃げ出す魔力量の持ち主なら、本来ロットなんていらないはずよ」
「お前、仮にも娘にひどいな」
「まぁ、でも」
指を鳴らすとクリス村のソラがスクリーンに変わる。
「これであの子たちの『本来』の実力が分かるかもしれないわね」
「?」
クスリは微笑んだ。
「あの二人、臭すぎるんですもの」
「……あたしからしたら、天界の連中なんて、みんな一緒じゃないかい」
「アクちゃんは淫魔だから、分からないわね。神はね」
クスリは嗤う。
「『神』という『名』を与えられた『人であり』『人ならざる』モノなのよ」
アクはぞくっとした悪寒を隠すようにクスリから目を逸らし、空を見上げた。
「……わかりたくもないね」
「そのほうが賢明よ」