上
実在の人物、神話には何の関係もございません。時代も時間も越えます。
あまり旅人も通らないような山の中にある、古い小屋のような家から二人の子ども達が元気良く扉を開け放ち、駆け出して行った。
「クリスー!待ってーぐりずぅぅぅ」
「うるさいな!泣くんじゃない!ノロノロしていると置いていくよリン!!」
同じ髪の長さに同じ身長、だけど二人は全く違う色の髪をしていた。
二人に血のつながりも、親も居ない、物心ついたときから二人は一緒に居て、この山に牧場を営んでいる老夫婦に育てられていたのだった。
「クリスー、リンー遠くに行くんじゃぁないぞー」
「はーい」
おじいさんに言われたことを元気良く返事していつものようにそれぞれの役割を果たしに行く。
「……本当に不思議じゃァねぇ」
「お婆さん」
「金色の天使のような気の強い女子のクリス、紫色の小悪魔のような泣き虫リン……あの二人は本に不思議な子じゃァ」
「そうじゃなぁ、ワシらがあのコらを拾ってもう何年経ったかー……一向に姿が変わらん」
若かった相棒の犬も、もはや老犬になってしまった。もう昔のように羊を追って走り回ることができなくなっていた。
「……お別れが、ちかいの」
「そうじゃな、お婆さん。ワシも昨日夢を見たよ」
そういって、おじいさんは微笑んだ。
「神様が、あの子らを迎えに来ると仰られておった。綺麗な神様じゃった」
「あの子らはやはり……」
二人は微笑んで杖を掴んだ。
「ええ子じゃ」
「リンちゃん!どうだった?」
「産まれてたよクリス!」
籠いっぱいに採れたての野菜を入れたクリスが家畜小屋に顔をのぞかせた。
泥と草だらけになったリンは汗をかいた顔で叫んだ、臨月の近かった牛が丁度今朝方子牛を産んだのだ。
「わーい、やったやったぁ!」
「おや、二人とも抱き合ってどうしたのかな?」
「じっちゃん、聞いて!子牛が産まれたの!」
「おぉ、本当じゃな。」
子牛を舐める親を見てリンは目を細めた。ソレを見たおじいさんはリンの頭を撫でる。
「クリスやぁ、いまから野菜洗うんじゃ、手伝ってくれんかねぇ?」
「いいよ!じゃあリンちゃん。おじいちゃんをちゃんと手伝うのよ」
「クリスもね」
二人は手を振って別れた。
クリスはおばあちゃんと一緒に畑仕事や家事などを手伝い。
リンはおじいちゃんと一緒に家畜の世話や家畜から取れる綿や乳や卵を回収するお手伝いをしていた。
決して裕福ではない暮らしではあったが、四人は確かに幸せであった。
この時が永遠に続けばいいのにと幼い二人は思っていた……。
時代の流れがたまによく変わったりします(いまは順調)
性格も変わります。