第4話 身代わり、ですか?
「お兄様?」
お茶会を済ませて、ユーリ様に送られて帰ってきた。
玄関先で別れを惜しむユーリ様を、タウンハウスの使用人たちが生暖かい視線で見守ってくれる。
「なに?」
ソファーに横になって本を読んでいた兄に、今日あったことをかいつまんで説明する。
「私…どなたかと…ユーリ様の初恋の方かなんかと似ているだけなんじゃないでしょうか?その方が亡くなって…生まれ変わりとか??」
「え?時間軸がおかしいでしょ?」
「・・・なんか、事情があってその方とは結婚できなかった、とか?」
「あいつに関して、そんな色気のある話、聞いたことないけど?そもそも、言い寄る女の子が多すぎて、めんどくさくなっての寡黙だし。」
「じゃあ…私はどなたに似ているんでしょう?」
「うーーーーーん。」
「だいたい、運命の人、っていうこと自体、意味が分からないんですけど?ユーリ様のお母様もそうおっしゃっていましたし。今流行の…前世の記憶、とか?」
「お前にもあるの?」
「いえ。まったく覚えがありません。」
「ふーーーん。まあ、いいんじゃない?望んでも手に入らないほどの好条件だよ?学院でもその話題でもちきりだし。毎日のように僕の所に問い合わせが来るよ。」
「まあ…例えばですよ?私が絶世の美女だとか、ものすごい才能があるとか、それなら百歩譲って私も納得するかもしれませんが…。」
「・・・でも、アンはかわいいよ?小さいころからかわいかった。」
「・・・そんなことを聞いているんじゃないんですよ!お兄様!!!そんなことを言って下さるのはうちの家族限定でしょう??」
「じゃあさ、アンはユーリの事、どう思っているのさ?嫌い?」
「き…嫌いでは…ありません。」
そうですね…最近ようやくなついた大型犬、って感じでしょうか?
「急に事がぽんぽん進んじゃったから、アンも動揺しているんでしょ?僕もユーリがあんなによく笑って、よく話すの初めて見たもの。最近は雰囲気も柔らかくなったしね。でも、どうしてもアンが納得できないなら、二人でよく話せばいいんじゃない?まだ、婚約したばかりだし、時間はあるでしょう?」
「・・・・・」