第3話 温かく迎えられています。
「まあ、あなたがアンちゃん?」
お母様の第一声。
ユーリウス様のお屋敷にご挨拶に伺いました。
今日は赤のワンピースに、ベルベットのリボンにガーネットが付いたチョーカー。髪飾りもガーネット。
「アンは赤が似合うよね。」
と、ユーリウス様が揃えて贈ってくださったもの。
「初めまして。アンネリーエと申します。」
「まあまあ、うふふっ。ユーリが言った通りのお嬢さまね?ゆっくりしていってね。ゆくゆくはあなたのお家になるんですもの。お庭にお茶の用意をしたのよ。」
どんな説明をしているんでしょう?お母様はご機嫌の様です。まあ、顔をしかめられたりしなくて何よりですが…。
侯爵家の中庭に出ると、まぶしいくらい白いクロスのかかったテーブル。
「こうしていると…そっくりね。」
「?」
「お母様。」
まあ、気にしていても仕方がないので、お茶を頂き、ケーキも美味しくいただきました。ユーリ様がご自分のケーキを一口フォークで勧めてくれます。マナーは??お母様がいるのに??断るとしゅんとしてしまうのは経験済みなので、ぱくっと頂きます。もう…やけくそです。ぱああっと輝くあなたの笑顔が直視できないほどまぶしい。
始終穏やかに、和やかに、お茶会という名のお披露目が無事に終わろうとしておりました。
「本当にそっくりねえ。笑いそうになったわ。」
「お母様…笑っていらっしゃいましたよ?」
「あ、あら、そう?よく探し出したわね?」
「ええ。まさか学院に来ないという想定はしていなかったので。まあ、どちらにしろ、アンが16歳になったら父上に頼んで婚約するつもりでしたが。」
「あら、まあ。貴方の運命の人、ですものね?ユーリ。」
「はい。僕の同級生にあの子の兄、コンラートがおりまして。アンに婚約者がいないのもリサーチ済みでしたし。」
「まあ。」
「赤が似合うでしょう?」
「うぷぷぷぷっ。そうね。あなた…本当にうれしそうね。」
「はい。ようやくです。」
(・・・なにが?)
何の会話でしょう?
お手洗いに行って席を外して、つい、庭の端っこに咲いているお花を見に行って…戻り掛けに…どうしましょう?私、立ち聞きしてるわ!!!
仕方なく来た道を戻って、わざとらしく帰ります。
ほんの少し、席を外しただけなのに、ユーリ様がわざわざ立ち上がって迎えに来てくださいます。それをお母様が目を細めて笑って見ていらっしゃる。
(ほんと…なに?)