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第2話 お付き合い、というのをしています。

「いやあ…堅物で有名で、どんな美女の誘いも断って、笑わないシェパード、とか言われている男なんだけどね?舞踏会に出ても、誰とも踊らないしな。入学以来同じクラスだけど…あんなに笑った顔を見たのは初めてかもな。」

「・・・・・」


(え?お兄様、シェパードは結構…見た目に反してフレンドリーな甘えん坊ですよ?)


「いやーん。私も旦那と子供連れで良いならあの子と恋に落ちてもいいわ!いい男よねえ。黒髪もクールだわ。いいじゃない、いいじゃない?」

「・・・・・」


(お姉さま…旦那様も子供もつれて行くのは共感できますが…。それはどうでしょう?)


「まあまあ、アンが領地にこもっているから、婚活はどうしようかと思っていたけど、手間が省けて良かったんじゃない?よかったわね、アン。」

「・・・・・」

お母様…そんな、娘をお荷物みたいに…。


「フェーベ侯爵家だろう?あそこの母親は…一癖あるけど、まあ、条件としては悪くないな。婚約の申し出が正式に来たぞ?受けておいたから。」

「・・・・・」

お父様…本人の意向とかは?



・・・そう、あの後、有無を言わさずダンスに誘われて、なんと!続けて3曲も踊った。そりゃあ、引きこもっていても母親の教育が厳しいのでダンスぐらい踊れるし、3曲ぶっ続けで踊るくらいの体力は持ち合わせているが…3曲?

にこにこ笑いながらリードしてくださるのはユーリウス様。笑わない?いえ、ずっと笑っていましたけど?そう…微笑む、っていうより、笑う?

周りで次の曲の待機をなさっているお嬢様方の視線が突き刺さります。替わりますよ、次ですね?替わりますよ、次こそ…。



そのまま手を放さずに、バルコニーに。

私はまだ、プチケーキやオードブルを食べたかった!!


「かわいい。アン。今度、アンに似合うジュエリーを贈るね。」

「・・・・・」

「ドレスも贈るよ。僕の家に招待するね。父と母にも紹介したいから。」


そう言いながら、私のこのもこもこの髪に指を通し…


「・・・ブラッシングもしたい・・・。」


そうつぶやきました。ブラシぐらいではこの髪はまっすぐにはなりませんが・・・。



それからというもの、ユーリウス様は学院の帰りにお兄様と一緒にお花を持ってうちの屋敷に帰り、お茶を飲んで、なんだか…うっとりとしたお顔で私の髪をブラッシングして…今生の別れ、のような悲壮な表情でお兄様に帰されています。


そうそう、うちの警備隊長と呼ばれている放し飼いになったシェパードのテオはあっという間に手なずけられ、今はユーリ様を歓迎しているようです。まあ…毎日来ますからね…。



私はさっさと領地に帰る予定でしたが、婚約の顔合わせとかいろいろあるらしく、長期滞在になりそうです。帰りたいです。

それは…あれだけの美丈夫に熱く見つめられたら、勘違いもしそうになりますが…。

「やっと会えてうれしい。」

だの

「運命の人だ。」

だの…言われてもなあ…。


それなのに、お休みの日には連れ出されて…街に出ればほかのお嬢さま方に、あら、いい男!連れているのは侍女?みたいな目で見られてからの、ユーリウス様の一方的なお惚気発言で、驚愕の表情で二度見される。いたたまれません。そんな日々。


そうなんです!私は髪はもこもこ。瞳は茶色。顔は地味。背は普通。スタイルも普通。小さいころからサラサラヘアーの美人の姉と美男子の兄と比べられ、貴族用の学院にはいかずに領地にこもって、お父様が趣味で飼っている犬の世話をして過ごしてきました。ほぼ、犬まみれです。なんなら、お父様が所属しているこの国の愛犬クラブ、に就職してもいいと思っていました。勉強もしました。

ショーや競技大会、繁殖からの譲渡会、トレーナーの派遣…。


ああ…なんだか順調に遠ざかっていきます。


ただこの方、甘え方が不器用な大型犬ぽい。そこはほほえましい。

お顔がクールすぎるので、シェパードに例えられたのは納得ですが、シェパードは鼻回りが黒くないとね。

頭の中で、ユーリウス様の鼻回りを黒く染めて、耳を立ててみます。

あら…結構かわいいかも。




来週はいよいよ、ユーリウス様のお屋敷に呼ばれてしまいました。














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