第1話 ひとめぼれ?ですか?
「アン…君は僕の運命の人だ!結婚してほしい!!」
(・・・えええええっ???)
アンネリーエは混乱していた。
両親と兄に連れ出された初めての舞踏会。そこで…思いもかけない、いや、まったく想定外の愛の告白を受けている最中だ。しかも、さっきから私の手を握っているこの人は、美男子と言われ続けた兄がかすむほどの美丈夫。すらりと伸びた手足、煌めく黒髪。エメラルドのような瞳…。
なにせ田舎にある領からほとんど出たことがない田舎者だし。
どうしてもデビュー時に一度くらいは社交界に出ないわけにはいかない、と両親に説得されてしぶしぶ出てきたが…。
ストレートのサラサラヘアの姉と兄にいつも比べられていたもこもこの金髪は伸ばしても伸ばしてもくりくり。しかも色が濃いので茶色に見える。瞳もこげ茶。
お母様が言うには、曾祖母に似たらしいけど…。
それなのに?なぜ?
この会場内をざっと見まわしても、お綺麗な方はたくさんいるでしょう?
ほら…あの方とか、その方とか…。な、なぜ?え?人違いデスヨネ?
「ユーリウス、僕の妹をからかうのはよせよ。」
(デスヨネ?)
彼女の兄が頭の中が真っ白になったアンネリーエの前に立ちふさがってくれた。
父と母は、面白そうに傍観している。姉は旦那さんを連れて見学に来たようだ。
「いや。彼女こそ、僕の運命の人だ!」
(なんでそうなる?)