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2話


そうだ。俺、家ないんだった。


思わず、膝から崩れ落ちる。ベロキラ達が心配そうな鳴き声を鳴らしながら顔を擦り寄って来る。


「ああ、ありがとう。大丈夫だよ」


優しく撫でながら立ち上がる。


クソ、人攫いに追われて、この森に逃げ込んだのを忘れてたぜ。


家がないことをすっかり忘れていたが、爆散したベロキラの死骸をアイテムストレージに入れるのは忘れない。


「どうしたもんかな。戻っても人攫いに追われそうだし。ベロキラ達が入れるか入らないかの問題もあるしな」


ひとまず、この辺りで野営するか。ベロキラ達がいるから少しは安全だろう。


「すっかり暗くなってしまったな。それにしても日が落ちたら急に寒くなったな」


近くの大木に背中を預けて座り、アイテムストレージから伐採した木材を取り出す。そして、スキルのクラフトマスターで、木材の水分を飛ばしたら薪木の完成である。


 プチファイヤー


しっかり組んだ薪木に、プチファイヤーで火を着ける。


「ふー、暖かいな。それにしても、この服はボロボロだし、薄いから地味に寒いだよな」


こんな衣服で過ごすのは、健康にも防御面にもよろしくない。


「よし、毛皮がある魔物を狩ったら服を作ろう」


少し大きいベロキラが隣に座り、大木を囲むように他のベロキラ達が陣取る。


「そう言えばコイツがこの群れのリーダーだったな。一応、名前を付けた方がいいかな?」


流石に、このリーダーぐらいには名前を付けてあげたい。それに、名前がないのは少し不便である。全部には名前を付けてあげたい。しかし、このリーダー以外は見分けが付かないの。他のベロキラ達は、名前を付けるかは保留である。


「うーん、名前。何がいいかな。ポチ、タマ、ハチ、シロ、タローなんかどうだ?」


うわ。ダサい。マジかよ。見たいな顔で見るなよ。いい名前だと思うだけどなそうだ。それじゃあ、最初のテイムした魔物だから、ゼロって言うのはどうだろう?


「なら、ゼロ、ってのはどうだ?」


嬉しそうに目を細めながら顔を擦り寄せて来る。多分、気に行ってくれたと思う。


「よし、今日からお前は、ゼロだ。よろしくな」

 

ゼロと命名されたベロキラは嬉しそうにしている。


個人的はポチが好みだっただが、本人が嬉しそうならいいか。


「それにしても腹が減ったな。ここの世界に来て何も食べてないな。爆散したベロキラは食えるかな?」


そもそも肉食系は肉が硬くて食えた物ではないと聞く。しかし、背には腹は変えられない。


すまぬな。


アイテムストレージから爆散したベロキラを取り出して、ウィンドカッターで足を切り落とす。そして、さらに食べやすい大きさにスライスする。


「よし、棒に刺して焼くか」


寄生虫などが怖いので、遠火でしっかりと焼く。30分程で完全に焼けたので手に取ってみる。


よし、食べてみるか。いただきます。


・・・うん。


結論から言うと食えた物ではない。非常に硬いくて、獣臭さが脳を破壊しそうなぐらいである。


「うぅぅ、吐き捨てたいが・・我慢だ」 

 

貴重な食糧を食べない訳には行かない。ましてや、ベロキラ達がいる目の前で吐き捨てるのは申し訳ない。


・・ふー!何とか飲み込めた。


うん、ベロキラの肉は2度と食べる事はないだろう。


この世界に来て歩き通しだだったので、流石に眠くなって来た。


ベロキラ達に見張りをしてもらい。ゆっくり寝るとします。


「ゼロ、頼んだよ。・・おやすみ」


空腹も合間って、気絶するように眠りに落ちる。


ゼロ達のお陰で、魔物がまったく寄って来なかった。しかし、大木を背にして寝ていた為から朝日が昇る前に目が覚めてしまった。


「うーん、太陽は上がってないか。暗闇の中移動するのは難しいからな。どうするか?」


暗闇の中を移動するのは大変。しかも、森の中で迷子になっている身である。太陽が昇るまで動かないほうが賢明だと思う。それまで創造スキルで、何か作成するのが良い判断だろう。


「「レッズにぃちゃんー!助けて!」」


複数の子供の助けを呼ぶ声が聞こえる。声の様子からかなり切羽詰まっている感じする。助けに行った方が良い感じた。


「ゼロ、この声の主のところに案内できるか?」


ゼロは頷いて、背中に乗れと言わんばかりに身体を下す。


「ゼロ、頼んだぞ」


ゼロの背中に飛び乗り、首に腕を回す。すると、周りのベロキラ達に合図を出したと思った時には、一直線に声の主に向かって走り出して行く。木々の間を縫うようにスルスルと抜けて行く。


ヤバい。振り落とされそう。コレ、あぶみみたいなものがないとマズいな。作るのがいっぱいだな。着る物に、住む場所、生活に必要な道具なども作らないといけないだろうな。


木々を抜けたと思ったら少し開けた場所に出る。

そこには、二足歩行をしている犬の集団が大勢の子供の集団を襲っている。そして、大勢の子供達は円陣を組んで、牽制をしながら近づかさせないようにしている。しかし、怪我をしている子供もいるので崩壊は間近に見える。


「ゼロ!あの犬こっろをヤレ!」


ベロキラ達は、二足歩行の犬達を背後から襲い掛かる。急な二方面戦闘に強いられた二足歩行の犬達は混乱状態になっている。しかし、ゼロ達は容赦なく鋭い爪と牙で切り裂いて行く。


「いまだ!俺たちも押し返すぞ!マリアナはコボルトを盾で押し返せ!エマは、残りの魔力を使ってコボルト達を殲滅しろ!それ以外は、しっかり守りを固めろ!」


 『『りょうかい!』』


ふーん、あの二足歩行の犬はコボルトなのか。武器を持っている様子はないが、爪と牙は鋭いからそれが攻撃手段なんだろな。


マリアナと言われた女の子が大きな盾を使って、力で押し返したり、吹き飛ばしたりする。そして、反対の手に持っている片手剣で、横から襲い掛かるコボルトを無表情切り裂いて行く。


その後ろでは、魔力を高めながら詠唱を開始しているピンク髪の女の子がいる。多分、この女の子がエマと呼ばれた子なんだろう。エマは詠唱が終わるとファイヤーボールが完成する。そして、少し離れたコボルトに放たれる。そのファイヤーはコボルトの顔面にヒットする。コボルトは叫び声も上がることなく一撃で沈む。


そして、みんなに指示を出していたのはスラム街の広場で声を掛けて来たレッズだった。レッズは双剣を使用して、綺麗に回避しながら乱舞ようにコボルト達を切り裂いて行く。本来、盾持ちが前線に立って戦闘をして、双剣は中衛で敵を倒して、安全に戦うのがセオリーだ。でも、レッズは盾持ちより前に出て戦闘をしている。危険を犯しているように見えるが、無茶をせずに手に負えなくなる前に盾持ちのマリアナの後ろまで戻る。そして、状況が落ち着いたタイミングで前線に斬り込んで行く。この状況に置いて、的確に数を減らして危険度を最速で減らしているように見える。


へぇー、凄い連携だな。冒険者って感じだな。


ベロキラ達とレッズ達の攻勢もあったお陰で、瞬く間にコボルト達は劣勢に追い込まれて、急激に数を減らして行く。そして、いつの間にコボルト達は包囲されている。


「よし、残り、5体だな。一気に殲滅しろ?」


ベロキラ達がコボルト達を何かを促すように声を上げている。そして、ゼロが歩み寄り大きな咆哮を上げてコボルト達を見下ろしている。


大きな咆哮でコボルト達は完全に降伏した様子で、尻尾を丸めて固まっている。そして、ゼロがこちらを見つめている。


ああ、なるほど、コイツらをテイムしろってことなのか?


尻尾を丸めて固まっているコボルト達に歩み寄って、近くのコボルトの頭を触りながら魔力を流す。


ゼロ達をテイムした時の感覚が広がる。


よし、成功だな。あとは、他のコボルトも触りながら魔力を流してと。


完全に怯えている他のコボルト達の頭を触って魔力を流してテイムを終わらせて行く。


コボルトのテイムが終わるとレッズが近いて来る。


「お前は、広場にいたやつだよな。まさか、テイム魔法の使い手だったとは。本当に助かった」


「レッズだよな。俺も助かったよ。この森で迷子になっていたからさ。それよりも、テイム魔」


レッズにテイム魔法のことを聞こうとした時に、遮るように泣きながら男の子が割り込んで来る。


「レッズ兄さん。早く来て、ジルー爺さんがヤバいよ」


「わかった。すぐ行く」


レッズの後ろを追いかけて行く。すると、青髪の女の子が右腕を噛みちぎられたと思われる老人を止血している。青髪の女の子は失った箇所を必死に押さえて出血を止めようとするが、血は止まることなく流れ続けて、老人の顔色は段々と悪くなって行く。

 

「ろろあ、‥もう、‥いいよ」


「お願い、お願い、お願い、止まって!ジルー爺さん!ダメ!ダメだよ」


ジルー爺さんは、今にも呼吸が止まりそうになっており、意識も朦朧とした表情である。そして、かき消えそうな声で、止血をしているロロアと言う女の子に諦めるように促している。


「‥ロロア、‥諦めよう。血の匂いで、もっと凶悪な魔物が来ないうちに移動しょう」


ロロアは泣き叫びながら首を振って、血を止める為に押さえ続けている。


もしかしたら、賢者スキルで回復魔法を使えば助けられるか?物は試しだ。ダメもとで回復魔法を試してみよう。


ジルー爺さんの体を触り魔力を流しながら回復魔法をイメージする。


ハイヒール!!


しかし、何も起こらない。その間に、ジルー爺さんの意識がなくなってしまった。一刻の猶予もない状況になって来ている。


クソ、回復魔法はダメなのか?それともハイヒールがダメだったのか?よし、今度はヒールを試してみるぞ。


ヒール!!


すると、ジルー爺さんの体が薄い緑にオーラが包み込み始める。そして、ジルー爺さんの顔色が少し良くなり呼吸に力強さが戻る。しかし、肩の傷が塞がった訳ではないので血が流れて出ている。


「無詠唱で回復魔法?!」


「お願い!ジルー爺さんを助けて!!」


「わかった。やってみる。でもまずは、出血を止めないとヤバな」


クソ、このままでは出血死するな。ヒールではダメだな。ミドルヒールを試してみるか。


ミドルヒール!!


先程、より濃い緑色のオーラが包み込む。そして、ジルー爺さんの傷が徐々に塞がって、青ざめていた顔に精気が戻り始める。そして、ミドルヒールの回復魔法が解ける。


「傷が塞がった」


「ジルー爺さん、ジルー爺さん!」


しかし、ジルー爺さんは目を覚さない。なくなった血液は戻っていないのか?それとも、回復したけど意識が戻るには時間が掛かるのか?


「本当にジルー爺さんを助けてくれてありがとうございます。いつか、必ずお礼をいたします」


ロロアは、ジルー爺さんを抱きながら深々と頭を下げる。そして、レッズが歩み寄って来る。


「助かったよ。えっと、名前を聞いてなかったよな。名前は?」


「まだ、名前を名乗ってなかったな。エルランドって言うんだ。よろしく」


「エルランドか。よろしく。そして、俺からもお礼を言わせてくれ。本当に、俺達とジルー爺さんを救ってくれてありがとう。助けてくれなかったら俺たちは全滅だったよ」


レッズも深々と頭を下げる。


「いやいや、気にしないでくれよ。実は、この森の中で迷子になっていたから。俺もレッズ達に会えたのは助かっただよ」


その瞬間に、レッズ達や周りにいた子供達も驚愕の顔をする。


「お前、この死の森で、一人で入るなんて自殺行為だそ。でも、ベロキラをテイムしているなら生き残れる可能性はあるか?いや、アースドラゴンに見つかったら、死の森の殺し屋と言われるベロキラでも一刻の終わりだな」


アースドラゴンと言う物騒な名前が、レッズの言葉から聞こえたのは気のせいでしょうか。ゼロ達みたいな凶暴な魔物がいたぐらいなのだから、この森は危険地帯だったようだ。


「そうなんだ。知らなかったな。実はベロキラ達も迷子になっていた時にテイムしたからヤバかったかも」


「お前、マジかよ」


「あはは、それより、レッズ達はなんで、死の森と言われる危険地帯にいるだ?」


「それは、大勢の人攫いの連中に襲撃を受けてしまってな。俺たちは縄張りを追い出されてしまって、森の中まで追いかけられてしまっただよ」


「少人数になってしまった時に襲われる事はあったけど、今回は襲撃は、大勢でいる時に襲って来るのは初めてだったわ。誰かを探している様子もあったけど、一人も犠牲にならずに逃げ延びたのはきせきだわ」


ロロアが苦虫を噛むような表情で呟く。


「‥誰かを探してた」


まさか、探している人物は俺なのでわ?


「ああ、『全員生け取りにしろ。絶対に探しだせ』って叫んでたからな」


はーい、この元凶は俺のせいだな。関係のないレッズ達を巻き込んでしまったな。


「多分、原因は俺かもしれない。実は、レッズと別れた後に俺も人攫いの連中に追われてな。魔法を使ったら目の色を変えて追いかけて来たんだ」


レッズ達や周りの子供達も納得したように頷いている。


「そうだろうな。その年で、固有魔法の回復魔法を無詠唱。それ以外にもテイム魔法使えると来た。人攫いの連中なら複数の属性を使えてると知ったらたら目の色を変えて追いかけて来るだろうな。もしかして、他のにも使える魔法属性ってあるのか?」


「多分、全属性使えると思う」


「マジか。本当に実在するだな。すげえなぁ。回復魔法、テイム魔法、全属性も使えるなら国からスカウトされて貴族様になれるだろ」


「全属性使えるって、本当に使えるですか?」


レッズは驚きながらも信用している様子だが、近くにいたピンク髪のエマが食い入るように聞いて来る。


「一応、多分。やってみる?」


「はい!お願いします!」


エマは目を輝かせて顔を近づけてくる。しかし、レッズは遮るように止めに入る。


「エマ、お前の気持ちも分かるけど、ここは死の森の中だ。しかもジルー爺さんも助かったとは言っても意識はない。すまんが死の森の中を出ることを優先するぞ」


「あっ、そうでした。すみません。落ち着いた時にお願いします」


エマは思い出したような表情で、少し気まずそうにしながらも深くお辞儀をする。


確かにレッズが言うのはごもっともだ。負傷者がいる状況の危険地帯で魔法のお披露目会はよろしくない。それに、ジルー爺さんを一刻も安全な場所で休ませるのがベストだ。


「エルランド、森を抜ける為に一緒に来てくれないか?」


「ああ、わかった。逆に、レッズ達に付いて行きたいぐらいだったから俺も助かるよ」


「よし、皆んな、集まれ!マリアナは、先頭に立って、その後ろにエマが続け。ロロアは左側面、右側面が右側面で子供達を守りながら進むぞ。ガッツは、ジルー爺さんを背負ってくれ。エルランドはベロキラ達と一緒に後方をお願いしても大丈夫か?」


「よし、任せろ。ゼロと俺で一緒に後方を守るぞ。ゼロ以外は、前方、側面に別れて、皆んなを守ってくれ」


ゼロ達か鳴き声の返事がある。そして、ゼロの掛け声でベロキラ達は均等に分かれる。そして、新しくテイムした5体のコボルト達は、ベロキラに騎乗してドラゴンライダーのようになっている。


「すげぇな。ベロキラが守ってくれるなら無事に死の森から出られるかもな」


レッズがポツリと漏らすが、今のでフラグが立ったような気がしてしまうのはお約束だろうか。


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