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メイド☆イン☆勇者〜お嬢さまと世界は、このメイドが守りますっ!〜  作者: 紅茶ごくごく星人
第2章 メイドの勇者と旅に出る☆☆

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第六話 勇者の私の魔王討伐......ヒャッハー

不気味な、ぐにょっと捻れる声。

「モウ一人ハア?」


邪悪に見える笑顔を浮かべた四天王は、そんな無邪気な声で訊いてきた。


世紀末(センチュリーエンド)スライムさん、よろしくお願いします。

お嬢さまの場所は今は教えられません。」


「フウン」


「では、覚悟!」


私は脚を踏み込み斬りかかる。


しかし世紀末スライムの体はぐいっと変形し、その剣をすり抜けた。

すぐに剣を切り返すが、またも瞬時に体は変形し避けられた。


「ヒャッハー!雑魚雑魚!効カナイネエ!」


何度やっても、世紀末スライムに攻撃は当たらない。


「知ッテルヨオ!」

世紀末スライムは言った。

「勇者血率ガ世界最高ノ癖ニ、勇者二目覚メラレナイ駄目ナ、オジョーサマト旅ヲシテルッテ!」


「お嬢さまは駄目なんかじゃありません!

優しく気高い、お嬢さまは本当に素晴らしい人です!


勇者血率の覚醒状態も少しずつ上がって来ています!」


「デモ、上限ガ0.0002%ノ君ヨリモ、マダ低インデショウ?」


「まだ然るべき時でないからです、お嬢さまはいずれ必ず力を覚醒させます!」


「モシ覚醒シナカッタラ?」


「もし覚醒しなくても、お嬢さまは既に素晴らしいお嬢さまですから、問題ありません!

私が命に換えてでも、お嬢さまを一生守り抜きます!」


「フウン?デモ攻撃ハ当タラナイシ、ソレジャ守レナイデショ」


世紀末スライムはこちらに向かって来た。


「いいえ、護ります!」


私は正面から切り返そうとするが、再び避けられる。

私の後ろにきた世紀末スライム。


背後からわずかな風向きの変化を感じ、私はすぐさま横に転がり避けた。


想像通り、攻撃が来た。

元から大きかった()()()()()()()()()が、とてつもない長さに伸びていた。


そのトサカは硬いようで、なんと向こうの方にある木を切り倒していた。

そして直後、伸びたトサカごとじゅうっと音を立てて溶け落ち消え去った。


直撃していたら私の体がどうなっていたか想像するまでもなかった。


私は避けた勢いで、世紀末スライムにそのまま切りかかる。しかしすんでのところで避けられる。


「ヤッパリ、当テラレナイネ!」

また私の剣を避けながら言う。


「いいえ、当てられます!」


当てる方法ならある。

トサカ攻撃の直後、世紀末スライムは硬直していた。

そこを狙う。


危険だけど、ちゃんとタイミングを見計らえば大丈夫。

旅が始まってからずっとお嬢さまに、稽古をつけてもらってきた。


これは単なる勝機ではない、お嬢さまの凄さを証明するチャンスっていう豪華なおまけつきだ!


「はあっ!」

剣を振る......と見せかけて、私は世紀末スライムを蹴っ飛ばした。

ダメージはないみたいだけど、無事命中し吹っ飛んだ。


これで遠距離攻撃のために、トサカ攻撃をしてくるはずだ。


私は走って近づいていく。

あっちも私にトサカを確実に当てるために、適度に遠いながら避けられないほど近い距離を見計らっているだろう。


「ソモソモ、メイドノ姿ノ勇者ナンテオカシインダ。

......ア!ワカッタヨ!


君ナンカト一緒ニ居ルカラ、オジョーサマハ勇者ニ覚醒デキナインダ!!」


「っ!?」

私はその言葉に、動揺してしまった。


世紀末スライムはぬるりと一歩素早く私に近くと、私の腕に酸のようなものを吐き出した。

その瞬間、腕から感覚が抜けた。


力が入らなくなった手から剣が離れ、そして世紀末スライムはトサカをこちらに向けた。


どうにかして避けないと......っ!


そう思った時、私の上を影が覆った。


私は上を見た。


お嬢さまだった。


しかめっ面をしたお嬢さまは空中で大羅炭刀をとった。

世紀末スライムの中心部分、心臓に剣先を向けて、槍のように剣をとてつもない速さで投げた。


世紀末スライムは貫かれ、心臓を破壊された。

そしてぐったりと倒れた。


しかめっ面のまま、こちらに歩いてくるお嬢さま。

それでも私の中で、世紀末スライムに言われたことが反響していた。


お嬢さまの勇者の力が覚醒しないのは、私のせい。


私は後退りして、そのまま逃げるように走り出す。

避難した人々の方に向かった。


「おお勇者様!助けていただいてありがとうございます!」


「もう大丈夫ですよ。襲って来た魔物は皆倒しましたから。」

震えながら、聞こえているかもわからない小さな声で言った。


「あの、勇者様?大丈———」


すぐに去った。


町を出た。


走った。


泣きながら、前も見ずに走った。


走りながら、思った。


お嬢さまは強くて、凛々しい。


だけどお嬢さまが強いのは、屋敷にいた頃から稽古に励んでいたから。

今のお嬢さまがあんな険しい顔をするのは、私が目障りだから。


今思えば、屋敷にいた頃はお嬢さまを見るといつも笑っていた。

優しくて声で話してくれた。暖かさを感じていた。


だけど今ではすっかり笑わなくなった。

声も冷たくなった。


私のせいだ。


私がいるからだ。


私は走った。

がむしゃらに走った。

木を飛び越え、草を掻き分け、濁流を泳ぎ、そして案外すぐにたどり着いた。


禍々しい空と城壁。魔王の城だった。


私はすーっと息を吸って、はあっと吐いた。


「終わらせる。」


私は大きな門を殴り付けて、お城の内側に吹き飛ばした。

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