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メイド☆イン☆勇者〜お嬢さまと世界は、このメイドが守りますっ!〜  作者: 紅茶ごくごく星人
第2章 メイドの勇者と旅に出る☆☆

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第五話 数ヶ月後の不仲......大量の一生と世紀末四天王

あれからどれほどの歳月が経っただろうか。


私たちは魔王城に向かう道中で、襲いかかってくる魔王軍の刺客を倒したり、魔物に襲撃される村を守ったりを何度もした。


彼女(メイド)は手を滑らせてフォークが刺さった相手がたまたま指名手配犯だったり、転んだ拍子に洞窟を倒壊させたり、相変わらずドジっ子メイドなままだった。本当に愛らしい…。


そんなわけで彼女は相変わらずドジだったけど、だから彼女のそんなところが村や町の人たちに大人気だったんだ。


私は他の人たちに囲まれ仲良くする彼女を見ていると、心が締め付けられるような感触になった。

彼女をまるで取られたみたいで......


そうしているうちに、何故だか私は彼女への当たりが強くなっていった。

「2人にはサービスでおまけにつけとくよ」

そう言って店主さんはパリパリの焼き目がついた大きなレッグを付けてくれた。

美味しそうな香りがふわーっと私たちの目の前を漂っている。


「わあ、ありがとうございますっ!」


それから私は皿に盛られた大きなオムライスを、スプーンいっぱいにすくって、口いっぱいに頬張った。


「お嬢さま、とても美味しいですねっ!」

メイドである私はお嬢さまと共に、町のお食事処にやってきていた。


「......」


「お嬢さま、とても美味しいですね!甘い卵と、お米に絡んだトマトソースの酸味がとても合っていてっ——!」


「ええ、それはよかったわね。」

文面上は前と変わらないけれど、声のトーンは冷たかった。


お嬢さまは最近なんだか様子がおかしい。

私はお嬢さまと旅ができてとても幸せだったが、どうやらお嬢さまは違うみたいだった。


確かに、旅は辛いものだとは以前から想像していた。

私はお嬢さまに毎日幸せな気持ちにしてもらっているけど、私はお嬢さまを幸せにできていないのかもしれない。


「お嬢さま!」


お嬢様は相変わらずパスタをフォークで綺麗に巻き付けていた。


「私と旅をしてくれて、ありがとうございます!」


「……」


「あっ、別にっ、別れの挨拶とかではないですよ!これからも、どうかよろしくお願いいたします!」


「......」


いつものことのはずなのに、改めて考えたからかなんだか悲しくなってきて、少し泣きそうになった。

それで、つい口からぽろっと言葉がこぼれ落ちた。

「お、お嬢さまが嫌なのであれば、私は......」


「よろしく、これからも。」

お嬢さまはそっぽを向いて言った。


「......っ、はい!!!」


それから少しの間、沈黙。


「え、えっと......こほん、じいやじゃよ。」

耐えきれず、私は物真似をした。


「......」


「お嬢さま。私から一つ、言葉をお送りさせてもらいますじゃ。」


私はすーっと息を吸って、はーっと吐いた。


「......お嬢さまと一緒なら、私は二百年や三百年の道のりでも、四の五の言わずに突き進めます。

七転び八起きのその後は、九死に一生が大量です!」


「......大量?」

お嬢さまはこっちを見ないまま、でもちょっと口角が上がったのを私は見逃さなかった。


「はい、大量です!」

それが嬉しくて、私は少し声を弾ませて言った。


「私はもし魔物に1人で遭遇したら、死ぬのは簡単だと思います。」


「そんなことはないと思うけれど。」


「いいえ。だって私は、生まれ育った村でたった一人しか生き残れなかった。

村のみんなが私を逃してくれたおかげで、私だけが生き延びて、あの時お嬢さまと出会えた。


1人で何日も泣いて彷徨っていた私にお嬢さまが差し伸べてくださった手のぬくもり。

今でも覚えています。


お嬢さま、私を見つけてくださってありがとうございます。」


「たまたまよ。良かったわね、運が良くて。」


「いいえ、運は悪かったです。

勿論、お嬢さまと出会えたことは幸運で、とっても幸せなことです!感謝しかありません。

私が今ここにいられること、それ自体は良かったとはっきり言えます。


でも、本当は、みんなが生きていた方がいいに決まってる。

もしみんな普通に生きていられたら、一緒にお嬢さまのメイドをやりたいと!そう言うに違いありませんっ!!!」


「はぁ?」


「私は!お嬢さまと一緒だから戦おう、この先も生き延びなきゃって思えるんです!」


「メイドという立場だからお嬢さまに付き従うのは当然、しなければならない義務よね。

私がいなくてもあなたはやっていけるのだから、仕方なくやっているメイドなんかやめて———」


「嫌だったらとっくにやめています。」

お嬢様の言葉に、強気で被せた。か、被せちゃった......!でも、続けて言わないとだ!


「私は、お嬢さまがお嬢さまだから、私の一生をお嬢さまのメイドとして捧げたいと思うのです!」」


「意味わかんな———!?」


その時、外で悲鳴が聞こえた。


「!?」


店を出ると、突如大量のスライムたちが攻めて来ていた。


「お嬢さま、行きましょう!」


「一人で倒せるでしょう?」

お嬢さまは冷たく言うと、席を既に立っていた私に剣を投げ渡した。


「あおおっとっとっと!?」

私はなんとかキャッチする。


「私は町の人たちの護衛をするから、お願いね」


「......はい!」


剣を鞘から引き抜く。

力を加えるほど硬くなる性質をもった特別な物質・ダイラ炭を使って作られた剣。


大羅炭刀(だいらたんとう)>の揺らめく火炎のような模様の刀身が曝け出される。


私に一斉に向かってくるスライムたち。


スライムたちのゼリー状の体。

その中心にある心臓のような部位を狙って、複数のスライムたちを一度に、横一直線に切り裂く。


心臓ごと真っ二つになったスライムたちは、メロディを奏でるように地面に落下した。


繰り返し一直線に切る。ボトボトと地面に着地するスライムの亡骸。


その音に混じって空中から空飛ぶスライムが私に強襲を仕掛けてくる。


しかしその脚撃をかわし、空飛ぶスライムの心臓を鷲掴みにして握り潰した。


すぐにスライムはいなくなり、これで終わったかと思った。

しかし最後に一匹、一際異なる雰囲気を放つスライムの親分が現れた。


「ハジメマシテ、メイドノ勇者サン!

魔王軍四天王、<世紀末(センチュリーエンド)スライム>ダヨ!」


頭に大きなトサカの生えた、奇抜な模様のスライムは言った。

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