プロローグ1 「 記憶のない少年 」
気が付いたら森の中にいた。
「まさか始まりの冒頭でこんな事を思い浮かべる日が来るなんて思いもいなかったな~」
記憶もない。
「ははぁ~、これはあれだな、 定番のあれを言っておこうか。 ・・私は誰? ここは何処?」
しかし、その答えを返事してくれる人物は何処にもいない。
「―――ッふぅー・・・ふむ。 これは困った。 兎に角、困った」
だが困った理由は自分のいる立場ではない。
自分自身の記憶がない事も、ここが何処なのかも正直そこまで困っていないのだ。
逆に冷静すぎて怖いくらいだ。
だけど、それらを置いて尚、俺は困っていた。
俺が今いる場所は・・・いや、この世界は、俺が知ってる世界ではないからだ。
「空を飛んでるあれ・・・ドラゴンだよな~」
飛行機よりも大きく、特撮の怪獣映画に登場しそうな大きな大きなトカゲが、俺の頭上をゆっくりと飛んでいく。
そのシーンは正に誰もが憧れるファンタジーなシチュエーションで、まるでアニメの冒頭シーンを見ているようだった。
今の俺には記憶はない。
自分が誰で、何処から来て、何故こんな森の中で眠っていたのかさえ思い出せない。
しかし
空飛ぶドラゴンを目撃して仮想動物だと判断できた頭の中で、俺はある答えを導きだした。
「俺は――異世界転移してきたんだ」