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060 魔族の王女

興味を持って頂きありがとうございます。




パルティア王国は魔族の国だ。

魔族は人族より強大な魔力と強い膂力を有し、好戦的な種族として知られていた。

見た目は人族と大きく変わらないものの、体躯は非常に恵まれており平均で男型で2メートル50センチ、女型であっても2メートルにも及ぶ程だ。

パルティア王国はセレーコス帝国メアトロ領の北部に接し現在は休戦状態となっている。

パルティア王国北部は巨大魔獣が多い極地であり農作物の栽培はメアトロ領に接したごく一部でしか行われていない関係で恒常的に食糧不足に悩まされており、魔獣石を交換資源として食料は帝国からの輸入に頼っていた。

そういった理由によりパルティア王国はセレーコス帝国とは休戦でなければいけないのだ。

そこで両国間の関係を良好に保つと言う名目で魔王ミトラダノスの第1魔女(第1王女)であるザルヴァルドゥクトは交換留学生としてセレーコス学院の貴族学部に在籍していた。

体躯の違いなどは強大な魔力を使って人族と然程変わらない程度に偽装し、完全に学生として溶け込んでいる。

しかし、彼女がセレーコス帝国に来ている目的は両国の関係を云々は二の次であり、本当の理由は魔族が崇拝する魔神カーリス(・・・・)の崇拝者を増やす事で帝国を傀儡国家にするためであり、そして信仰と言う名の洗脳を強化させるのを目的としてザルヴァルドゥクトは帝国に来ていたーーー


〈ザルヴァルドゥクト視点〉


セレーコス学院学院寮。

多くの学院生は相部屋だが妾は王族と言う事もあり寮の中であっても個室、しかも上位貴族用の個室を当てがわれていた。

その部屋で侍女に淹れられた紅茶で口を潤しながら、


「カルマニアで起こした魔獣スタンピードは失敗に終わったわ……エリュタウラー海で準備していたスタンピードも失敗……次の一手を考えなければいけないわ」


ー リュウタがエレンとマヨルカのレベルアップのために地龍3頭を斃したのがカルマニアでのスタンピードを失敗させ、転生者たちのレベルアップのために海龍を屠っていった事でエリュタウラー海でのスタンピードが失敗となったのだ。

ただ、当のリュウタはザルヴァルドゥクトによる陰謀の芽を摘んだとは思ってらず、それ故にザルヴァルドゥクトもリュウタの存在に気づいていなかった。 ー


長いため息を一つ吐き、最近学院で話題になっている人物について考え始めた。


「……あのヒデキという人族の本質は魔族ね」


と呟く。

妾が独自に入手した情報によると帝都を震撼させた「ファンザ・カレー」における強盗殺人や連続魔導屋襲撃事件などの犯人はヒデキだった。

この世界にも当然ながら犯罪者気質を持つ者は少なくないのだが躊躇する事なく人を殺す事ができる者は多くない。

一昔前であれば強盗殺人は珍しくなかったが、この所戦争もなく、それに合わせて日常生活で殺人が起こる事は随分と減ったのだ。

そして、今回のような短期間で強盗を繰り返して殺人に手を染める者の魂は魔族との親和性が高く、そういった人族と子を為すとより魔力の強い子が得られる。

しかもヒデキは学生としては破格の魔力と剣術を修得しているようだから婿候補として申し分なかった。

帝国の皇子ゲルカエスと縁談の話もあるのだが、ゲルカエスは父親である皇帝グレイオス同様愚鈍で女好きなだけの男。

それであれば魔族としてはヒデキの方が遥かに好ましいのだ。


「少し手を回して彼を無罪に……そうでもしないと死罪になりそうね」


そう呟きながら侍女に指示を出す。

指示を受けた侍女は黙って首肯で応え、部屋から出て行くのだった。



数日後、ヒデキは釈放され街中のとある商会内にある一室に呼び出した。

やはり学院寮は何らかの方法で監視されていると見た方が良いだろうと考えていたからで、パルティア王国の息がかかった商会でなら監視される事はないだろうと踏んだからだ。

室内は窓がなく、非常に厚い石材で囲われた安宿の一室程の広さ。

装飾物などなどなく、ただ小さな四角いテーブルと木製の椅子が2脚置かれているだけだ。

そこにヒデキを待たせていると、ヒデキは収監先から直接来たからか薄汚れた平民服で貧乏揺すりをし腕を組みながら不機嫌である事を隠そうとしないで座っていた。

そんなヒデキを値踏みするかの様に観察する。


「貴方がヒデキ・ヤマダね?」

「……ああ、そうだが。俺に何の用だ?知っての通り釈放されたばかりでな……んぐっ」


座って妾を見上げるようにしているヒデキの唇を奪い蹂躙する。

最初は抵抗を示していたヒデキだが例え冒険者ギルドのAランクに手が届きそうな実力があろうと魔族の王女とは格が違う。

途中で争うのを止め妾を受け入れた。


「……っ、いきなりなんだお前は!」


ヒデキは女に言いように嬲られた事に怒りを示していたが椅子からは立ちあがろうとしなかった。

妾との実力の差を肌で感じたからだろう。

そんな子猫みたいなヒデキを可愛いと思いながら、


「お主、神の恩寵を捨ててまで殺人を犯したのか……しかも……この異質な魂、転生者か?」

「なっ……お前は何で知ってるんだ!」

「妾の名はザルヴァルドゥクト。親しい者はザルヴァと呼ぶからお主もそう呼べ」

「名前なんてどうでも良いっ!お前は何で転生の事まで知っているんだ!!」

「ザルヴァだ」

「……ザルヴァ。どうして……「それはお主の魂を読んだからじゃな」

「魂を……?」

「そうじゃ。お主ほど魂が穢れているのは魔族の中でもそうはおらん」

「悪かったな!って、魔族?」

「そうじゃ。妾は魔族じゃ。それに魂が穢れていると言うのは魔族にとっては褒め言葉なんじゃぞ」


ヒデキは妾の話を聞いて少し混乱しているようだったがお構いなしに話を続ける。


「お主は死刑が確定しておったのじゃが妾が手を回して無罪とさせたのじゃ。そして、今後は妾の婚約者として学院生活を送り卒業後は魔族の国、パルティアへ向かい最終的には王になってもらおうと思う」

「……俺が、王!?」

「そうじゃ。王配ではなく王になってもらい世界を征服するのじゃ」


ヒデキの顔は醜く歪み……魔族としては最高の笑顔となり妾の話を受け入れてくれた。


「ふははは。俺が王か。嘘でも話が壮大で気に入った!婚約者となってやろう!」

「そうか。受け入れてくれるか。それでは……」


妾は再びヒデキと唇を交わした。

体液を交あわせながら妾の魔力とヒデキの魔力を循環させる。

ヒデキは背中を大きく仰け反らせようとしたが、妾の膂力でそれを抑えこんで魔力循環を進める。

転生と言う事もあってなのかヒデキの隠されていたドス黒い魔力は相当な伸び代があり、最終的には妾の魔力と同じくらいまで大幅に増加した。

それでもヒデキの魔力成長は限界を見せておらず、これなら魔族の王となっても心配はないだろう。


「うっぷ……気持ち悪いが……さっきまでより数倍、いや数十倍は強くなった気がする」

「そうじゃな。今、お主……いやヒデキ様の魔力は凄まじく肥大していての、ほぼ全ての魔法はレベル8まで使えるじゃろうて」

「レベル8!?それに、何やら使える魔法が変わったみたいだ」


今までヒデキが使えていた光属性と聖属性がそれぞれ闇属性、魔属性へと変わっていた。

状態異常を癒すのは聖属性か魔属性なのだが、癒される側が魔族なら聖属性は毒にしかならず、また人族なのでも犯罪者気質が強い程聖属性は効きが悪くなる。

ヒデキは本来の魂の穢れに見合った属性へと変化した事になるのだ。


「ヒデキ様は魔法なら大陸最強クラスになったのじゃ。当然、剣術も同様にレベル8まで引き上げられておる」

「そうなのか?それなら学院でも鼻持ちならぬエレン騎士団よりは……」

「……あやつらにはまだ勝てぬ。化け物じゃよ、奴らは」


思った事をそのまま伝えるとヒデキは悔しそうに唇を噛む。


「俺は奴らに恨みがあるんだ。いつか、絶対に殺してやる!」

「いい感じじゃ。そういった恨みや辛みを抱えるほど魂は穢れ強くなるのじゃ」


妾はヒデキを再び抱擁し唇を重ねるのだった。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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