表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/63

058

興味を持って頂きありがとうございます。




パパデウスの手元にある資料には、入学時ではあるがヒデキが冒険者ギルドのDランクであると書かれている。

だが、彼の動きはDランクなどの下位(・・)ランクではなく上位ランカーの動きであると直感が教える。

そしてヒデキと共に動いているシンヤもまたゴブリンソルジャーを危なげなく屠っており資料通りの実力でない事が分かる。


「このまま今日中にはこの階層に到着だな」

「そうですね。彼らがダンジョンボスの間の前に着いたら、そこで彼らの違反を指摘しましょうか」

「そうだな。それが良さそうだ」


エレンは俺とパパデウスの会話に口を挟む事なく、他の階層を見ていた。

他の階層ではゴブリンの集団とどうにか勝てるか、といった感じであり少し退屈な戦い方をしている。

そんな戦いを見ながら自分ならどう動くかとシミュレーションをしていた。


「エレンならどう動く?」


俺の質問は不意なものだったらしくエレンはビクっと反応した。

そして右手の人差し指に髪を巻き付けながら、


「大したことがない考えかもだけど……このグループは4体のゴブリンに正面からぶつかっているでしょ?この時、動線をこうすると2体のゴブリンとの対峙にできると思うの」


エレンはモニターに指差しながら説明を始めた。

彼らではゴブリン4体と正面から戦うには少々荷が重い。

だがエレンの言う通りに動いていればゴブリン1体に対して3人で対峙でき、余裕で勝つことができるだろう。


「確かにそうだね。それならこのグループはどう思う?」


俺はそう言うとヒデキのグループに指をさす。

エレンは彼らの動きが入学時のものとは別人と思えるほどレベルアップしている事に気が付き感嘆の声を上げるが、


「動きは……さっきのグループとあまり変わらないわね」

「というのは?」

「強いみたいだけど……ヒデキ、でしたっけ、彼が指示を出すまでは他のメンバーは単純に真っ直ぐ突っ込んでいるのね」


ヒデキですらゴブリンが現れると条件反射的に突っ込んで斬り伏せる。

ゴブリンとは実力の差があると踏んで慎重さが足りないのだ。


「そろそろ危なそう……ほらっ」


俺とパパデウスはどちらかと言うとエレンの声の方に驚いているのだが、彼女が指摘した途端、先程危なげなくゴブリンソルジャーを屠ったシンヤがゴブリンからの奇襲を腕に受けて真横に吹き飛ばされる。


「これで腕1本使いものにならなく……あれ?意外とダメージが通っていない?」

「そうだね。装備に複数の付与魔法(エンチャント)がなされているからね」

「確かに慎重さを感じさせない荒い戦い方だな……実力と結果が伴わないのは経験のなさを装備で補っているからだ」


パパデウスは俺の言葉に肯定の趣向をしてため息混じりに答えた。

装備に頼った楽な戦いばかりしていると、このままでは実力に見合った経験は積めずに取り返しの付かない事になるだろう。

そうならない為にもここで彼らを失格にしなければならないとパパデウスは言うのだった。



〈ヒデキ視点〉


4日目。

俺たちは10階層の攻略を始めた。

食事も休息も十分に取れている事もあり、疲れを全く見せる事なくダンジョンを進んでいた。

この階層はゴブリンが10体で襲ってくる。

しかもゴブリンメイジ2体にソルジャーが3体を含むので普通なら冒険者ギルドのDランクの6人フルメンバーでどうにか怪我をせずに勝てると言った組み合わせ。

それに対して俺たちは装備に助けられて経験値だけは十分に獲得してきたからか問題なくゴブリンたちを蹴散らしている。

それだけではない。

俺はゴブリンメイジを斃す度に水魔法の中級スクロールをゲットしたフリをして仲間たちに使わせていたので、今では火魔法と水魔法が使える様になっていた。


「俺たちもついに2種属性持ちか!」


シンヤがダンジョンの最下層だと言うのに大声でその喜びを表していた。


「バカッ!ゴブリンがやってくるじゃない!」

「そうよ!もう少し考えて行動してよね!」

「まぁ、良いじゃないか。どうせ殲滅すれば良いんだしな。それに、シンヤが喜ぶのも分かるだろ?」

「「そりゃあ、嬉しいもの!」」


俺らは少なくとも膂力の他に剣術、火魔法そして水魔法の合計4つのスキルを所持している事になる。

アイリとサナエはそれに加えて豊穣のスキルも持っている。

今まで生きていた中でスキルを3つ所持しているだけでも多い方だと思っていたのに、今ではそれを超えるスキルホルダーになっているのだ。

しかも魔法のスキル自体が希少で、多くは単属性(アレフ)魔法(キシュフ)なのだが、彼らは2属性(ベート)3属性(ギメル)

2属性は全体の2%にも満たない程であり、3属性に至っては0.2%程度。

これだけでも魔法学部の学生ならば上位卒業が確約される。

その上中級魔法まで使用できるのだから、将来の道は確約されたようなものなのだ。

ちなみに4属性ダレットは10000万人に1人、5属性以上は多属性(ラヴ)と呼ばれており、実に10万人に1人と言われ、現在、多属性魔法使いは存在していないとされている。


そうはしゃいでいると当然ながらゴブリンたちがやってきた。

覚えたばかりの魔法を放っていると当然ながら魔力が足りなくなってくる。

何せ自前で魔法を覚えた訳ではないので、魔力が十分にあるとは言えないからだ。


「魔力が枯渇すると動けなくなるぞ!剣を主体にここぞって言う時に魔法を使え!」

「やっぱ、そうだよなぁ〜」

「俺の魔力量がどれだけあるか分からねぇからもっと慎重にだな!」

「剣でもゴブリンに負ける気はしないけどね」

「折角だからこの階層で経験値稼ぎしない?魔獣石もゲットできるし〜」

「そうだな。皆の実力アップでもしようか!」


俺たちは10階層で次々とゴブリンを滅していった。

途中、食事や休憩を挟みながら夕方までに300体以上も屠っていき、そしてダンジョンボスが待つボス部屋の前にやってきた。



〈リュウタ視点〉


「さぁ、いよいよダンジョンボスだな!」


ヒデキが声を掛けると4人は緊張しているのか黙って首肯で応える。

そして、ボス部屋の扉に手を掛けようとしたその時、後ろから声が掛かった。


「そこで君たちの実習は終了だ」

「誰だ!?」


ここにはヒデキたちしかいないと思っていたのだろう、思わず声が出てしまったようだ。

当然他の4人も同じで、驚きを隠せていない顔でこちらに向かって振り返るとそこにパパデウス教授、俺そしてエレンエレンが立っていた。

エレンは学園1の美女として知られている程だからだろう、シンヤとリョウジはエレンの顔を見て惚けている。

そんな中、パパデウスの声が鋭くダンジョン内に響いた。


「君たちは実習規則違反によりダンジョン実習は失格となる」

「どうして終了なんだ!」


声の主がパパデウス教授だと言うことに驚きつつも、実習終了宣言に対してシンヤが噛み付く。


「ガイダンスでも伝えた筈だが、ダンジョン実習は学院指定の装備を使用する事になっている。だが、君たちの装備はどうやって持ち込んだのかは知らんが指定の物ではないのは明らかだ!」

「……装備?そんなモンどうでも良いだろうが!ダンジョンなんてモノは攻略が全てじゃないのか?」

「「そうだそうだ!」」

「それの何が悪いって言うのよ!」

「装備ぐらいで実習失格だなんて横暴よ!」


パパデウスの言葉にヒデキが反応し、それに対して加勢しようと4人が声を荒げた。

その上リョウジとシンヤは腰の剣に手を掛けてさえいて、あからさまにパパデウスに対して武力での脅迫を意図した行為を取っていた。

何せパパデウスの出自は神官家系であり、しかも担当教科は数理学。

人数では勝っているのだから武力で対峙すれば折れるのはパパデウスだろうと踏んだのだ。


「……それは脅しかね?下手したら退学行為だが良いのか?」

「はんっ!ここでお前が死んだらどうやって俺たちを退学にできるんだ?」

「ふーっ。分かってはいたが、お前たちは本当にバカなんだな」


そう言うとパパデウスは「出よ、軍神の武具」と短く詠唱を唱えると、リュウタたちの持つワードローブ機能と同じように自動で光り輝く軽鎧を身に付けており右手には聖剣をも軽く凌駕する神剣を持っていた。

彼の持つ武具はどれも神界物で、ランクはC2と人間界の物より遥かに強力なモノだ。


「教授、それは……?」

「ん?これは私の主神グラディウス様から賜ったものでな。生半可な攻撃では傷一つ付かないものだ」


リュウタが思わず聞いた事に丁寧に応えるのは教授としての性なのだろうが、そんな隙を見逃すようなヒデキではなかった。

パパデウスの視線がリュウタに向けられた瞬間、ヒデキが剣に手を置いて斬りかかった。


「戦闘の最中だぞっ!」


学院生とは思えない程の鋭い踏み込みで一気にパパデウスとの距離を縮めると、居合には向いていない筈のバスターソードで水平に剣を薙ぎ払った。

このダンジョンで幾度も練習し一撃必殺の剣技として習得したものだ。

ゴブリンソルジャーでも一閃で胴体を上下に分つほど強力な剣技。

それをヒデキはパパデウスに向かって放ったのだ。


ギンッ


しかしヒデキの剣は振り抜かれる事はなく剣の軌道の途中で動きを止めた。

パパデウスの持つ剣にその剣撃を受け止められたからだ。


「なっ……!?」

「バカには分からないだろう。お前の持つ剣と私の持つ剣の差だけではなく剣士としてのレベルにも大きな差がある事を」

「くっ……まぐれに決まっているだろうがっ!」


ヒデキは再びパパデウスに斬りかかるが今度は受け止めずに全て受け流した。

金属音が微かにもしない程、高度な剣術でヒデキの剣撃を受け流す。

20合もする頃にはヒデキは肩で息をしているかのように上下に大きく動かし、動きも鈍くなっていた。


「まだ続けるかね?それでは「強化拘束(ハイパーバインド)」」


ヒデキは魔力による拘束を受けると同時に身につけていた鎧などが強制的に脱がされた。

この強化拘束を受けると身体の自由が奪われるだけではなく魔力の使用もできなくなるのだ。


「そこの4人はどうする?最後まで反抗して罪を重ねるか、それとも武装解除して大人しく捕まるか。今なら実習失格だけで済むぞ?」

「くっ……武装解除します」


シンヤが真っ先にパパデウスの言葉を受け入れて鎧を脱ぎ下着1枚となった。

それを見たリョウジ、アイリそしてサナエも脱ぎ下着だけとなった。

鎧の下は薄い下着のみだった事もありアイリとサナエはバインドを受けると小ぶりな双丘が際立つ事になり恥じらいを示していたが、犯罪者には人権がない世界と言う事もありエレンですら配慮しようとはしなかった。

パパデウスは彼らの持つ武具を回収し、リュウタたちと共にヒデキたちを地上へと連行するのだった。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ