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興味を持って頂きありがとうございます。




10階層にある拠点内にて


「教授、ヒデキ……彼は強さだけなら達人冒険者レベルと言えそうです」

「そうなのか?」

「はい。冒険者ギルドで言うならBランクいやギリAランク相当ではないでしょうか」

「他の4人はどうだ」

「他は……Cランクギリギリでしょうが学院生レベルではないですね」


実際のところ学院には冒険者ギルドに入って活動している生徒は少なくない。

だが、そのほとんどはEランクで、少数ではあるがDランクも存在していた。

Cランクは学院卒業後、上手く行けば数年で上がるレベルだ。

ヒデキたちは俺の推測通りの実力で階層主を苦もなく周回して見せた。


「ビッグゴブリンってこんなに弱かったか?」

「いえ、一般生徒なら苦戦した上での辛勝と言うのが一般的でしょうか」

「今年は……リョウタを含めて規格外が多いな」

「ははは。それは否定できないですが……彼は、危険です」


彼らは俺が転生する前に執拗に虐めてくれた5人組だと言う事が鑑定で知った。

一瞬、心臓が強くドクンと鼓動を打ったが、すぐに冷静になれた自分に気がつく。


(虐められた事は5万年以上経っても忘れていなかったが、今が幸せだとここまで冷静になれるのか……)


転生前と今では別な世界なのだ。

もし、また何かしてくればその時はその時だ。

たがそれとは別の問題がある事が鑑定で知る事になった。

ヒデキが使用している装備から魔道具店襲撃犯、そしてここ最近帝都内で頻発する商会襲撃犯でもある事が分かったのだ。

それを俺が知っている事をどう伝えるかが問題で、鑑定と言うものがこの世界では一般的ではない事がそれを難しくする。


「できれば神殿にて鑑定を受けさせる事ができれば良いのですが……」

「それだけの何かをヒデキが抱えていると言うことか?」

「詳しくは話せませんが」

「分かった。その事は記憶に留めておこう」

「すみません。よろしくお願いします」


エレンは俺の心の揺らぎを感じたのだろう、手を握ってきて、


「リュウタ、大丈夫?」

「ん?あぁ。彼とは過去にいろいろあってな」

「そうなんだ。1人で抱えてないで何かあったら頼ってね」

「ありがとう。エレン」


俺はエレンの手を強く握った。

パパデウス教授はそんな空気を3人きりの部屋の中でするなよ、と思うのだがため息を1つ吐いて諦めるのだった。



ニカラウス、キュジケノス、ラオディアそしてデメテアの4人は初日の夜、3階層で野営する事にした。

流石に1階層、2階層で躓く様な学生はおらず、3階層に設けられている安全区域(セーフティーゾーン)で生徒たちの点呼を取った。


「ニカラウス先生、216人……騎士学部のヒデキたち以外は全員揃っています」


キュジケノスが点呼情報をまとめてニカラウスに伝えた。


「ありがとう。それでは各班はこの安全区域内で夜営準備を始める様に!食事なども自分たちで用意するんだぞ!」


ガビル特任教授、そしてゲラン特任教授のグループは先に進んでおり、この216人はニカラウスたち4人で見守る事になる。

ただ、安全区域で問題になりそうなのはラミル皇女くらいで、彼女のグループは当然かの様にニカラウスのグループ、正確にはキュジケノスの側で夜営準備に入った。


「ラミル殿下……グループのテントはもう少し離して設置して頂けませんか?」


ニカラウスがそうラミルに伝えると、阿吽の呼吸で彼女の侍従であるティモンが間に入り、


「ラミル様の御学友がおられますから、その側にテントを設置するのは当然だと思いますが」

「これは実習ですから私たち講師側は野営地全体を公平(・・)に見る必要がありますし、何より御学友……キュジケノスくんは現在臨時講師扱いですから特定の学生と懇意に接する事はできません」


そんなニカラウスの努力を無にするかのように、彼の後ろではデメテアがキュジケノスにべったりとくっついていた。

それもラミルに見せつけるかの様に。

当然、それに気が付いているラミルはハンカチを口に、今にも引き千切らんとする程の状態でギリギリとニカラウスに聞こえる程の歯軋りをしていた。


「はぁ……デメテアさんも節度のある行動を。あなたはすべての学生の規範となるべきなんですよ。それとラミル殿下、再度の”指導”ですがテントを他の生徒同様私たちから離して設置してください」


ニカラウスは目の前に立つティモンではなく、ラミルに直接言ったのはここでティモンが反論でもしようなら彼が仕えるラミルが処罰される事になると知らしめるためだ。

ティモンはそれを理解して、


「ぐっ……わかりました。テントを撤去させて頂きます……」

「ティモン!もっと圧力を掛けて……「ラミル様、これ以上反抗すると実習中止の宣告を受けるかも知れません」」

「そ、そうなのね……そこのデメテアさん。貴女の挑戦、確かに受け取りましたわ。覚えてらっしゃい!」


ラミルはティモンの言葉に対し完全な敗者の弁を口にしているものの、側からは完全にラミルが勝者かの様に聞こえるのは腐っても皇女なのだろう。

彼女らは急いでテントを撤去し少し離れた場所に再設営を行った。

少し離れたとはいえ、他の学生からすればそれでもかなり近い所ではあるのだが。

ニカラウスは小さくため息を吐き、


「それでは私たちも夕食にしましょう」


そう言うと、キュジケノスたちは虚空庫からテーブルや椅子などを取り出し、食事を並べ始めた。

ニカラウスも虚空庫を持ってはいるのだが、今は学院の実習中と言う事で学生たち同様の食環境にしようと考えてたのだが転生者たちはリュウタから受けたものを半ば自慢したかった様だ。


「あー、キュジケノスさん、ラオディアさん、デメテアさん。騎士団としてダンジョンに潜るなら良いんですが、今回は学生の実習の指導者と言う立場ですからそれらは片付けてください」

「えっ、そうなんですね。分かりました」


キュジケノスがすんなりニカラウスの言葉を受け入れたのだがラオディアは少し不満気の様子だ。


「ラオディアさん。貴族の子女である貴女には貧しい食生活を強いますが冒険者にとってはこういった食生活でダンジョン探索をするのが標準ですから」

「はぁい……」

「騎士団の団員でもあるのですからそこはしっかりとしていきましょうね」


ニカラウスの言葉にラオディアは大人しくなった。

キュジケノスはそんな雰囲気を一掃しようと、


「それなら簡易竈門を作り干し肉のスープと保存用の黒パンを食べましょう!」

「そ、そうですよ!私の料理の腕前を披露するわ」


デメテアもキュジケノスの言葉に乗っかり明るく振る舞った。

こうして4人は他の学生と同じような食事を摂るのだったが、実は、この食材も全てリュウタ特製のもので保存用の黒パンは色形は固そうに見えるが実際はふんわりと柔らかでバターも多めに使ったデニッシュパンに近い味わいだ。

ニカラウスは「リュウタ様も甘やかしてるなぁ……」と半ば諦め顔で夕食を共に摂るのだった。

一方、リュウタはと言うと、他の学生の目がないのを良い事に、マスのムニエル、サラダ、コンソメスープ、白パン、アップルジュースといった帝都でもそれなりの貴族が夕食で食べるようなメニューを堪能していた。

そう、リュウタはキュジケノスたちを甘やかしているのではなく、単に自分が食べたいものを彼らの虚空庫に入れていただけだったのだった。



ヒデキたちはと言うと、周回していた5階層の階層主がいる部屋の中で食事をしていた。

階層主はこの部屋から一旦出ないと再出現(リポップ)しない事から、この日はこの部屋で寝泊まりする事にしたのだ。

そして、ヒデキは空間魔法の中からあるものを取り出した。


「ヒデキ、これは……」

「ああ、カレーライスだ。まとめ買いしておいた」


大きな寸胴で作られたカレーは40皿分はあろうか。

米も大型の釜で炊いているのが2つ分あるのだから思うがままにおかわりをしても十分な量だ。

当然、「ファンザ・カレー」から強奪した品々だがそこは黙っておく。


「ヒデキ……お前ってスゴイ奴だよ!」

「夢にまで出たカレーライスが食べられるのね!」

「あぁ、夢なら醒めないで欲しいわ……」

「さあ、カレーが冷めてしまう前に食べようか。食うぞ、サナエ!」


サナエは胸の前で手を組みながら上を見上げ、まるで祈っているかのような姿勢のまま固まっていた。

そこにヒデキが声掛けしたのだが、彼女の取った行動は思いも寄らないものでビクっと反応した後、ヒデキに抱きついた。


「今まで(つる)んできたけど、こんないい奴だって改めて思ったわ!ありがとうね!!」


そう言うとサナエはヒデキに口づけをした。

仲間から隷属へと完全に堕ちた瞬間だ。

ヒデキは心の中でほくそ笑みながら、


「俺は昔からいい奴だぜ。仲間にわな。さぁ、食うか!」


ヒデキはそう言うとカレーライスを一口、口の中に放る。

それを見て4人もヒデキに続いて食べ始めた。


「うめぇ!これこそカレーだっ!」

「あぁ。カレーがこんなに旨いなんて昔は思ってみなかったけどな」

「うっ、うっ……美味しいよぅ……」

「アイリ、本当に美味しいね」


5人はカレーライスを数杯おかわりをして、この日は早めの睡眠を取る事にしたのだった。

一方この様子をモニター越しに見ていたリュウタは怒りで身体を震わせていた。


「リュウタ?どうしたの?」


エレンはリュウタの雰囲気が急に変わった事に気が付き声を掛けた。

モニターを見つめるリュウタから「ギリッ」と奥歯を強く噛み締めた際に発生する歯軋りが聞こえ、両の拳を強く握る事で爪が手のひらに食い込んだのだろう血が滴り落ちた。


「あの寸胴は……ファンザカレーで使用しているものだ」

「えっ?それってどう言うこと?」

「ファンザカレーで使用している調理器具は全て俺が創って提供したものなのだが、強盗が入った際に寸胴が1つ奪われていたんだ。あの寸胴はその際に奪われた寸胴だ」


俺はヒデキが魔道具店の襲撃犯であるだけでなく、自分の身内の店であるファンザカレーの襲撃犯である事が分かった事でヒデキをこの世界で放置しない事を心に決めるのだった。

お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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