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興味を持って頂きありがとうございます。
ヒデキたちは4階層まではほぼ素通りしよう、と言う事にした様だった。
ゴブリンたちが襲ってきた時は仕方がなく対峙はしたがそれ以外はひたすらに階段を探して下層へと向かった。
ヒデキは事前に質の良くない紙を多く用意しており、それに地図を書いているようでダンジョン攻略に慣れている様子だった。
「ヒデキ、随分と丁寧な地図を描くな」
「そりゃあ1位を狙うなら必要だろ。帰る時に迷うのも嫌だしな」
「違いない」
「それにしてもこのダンジョンって広いわね」
「本当に。足がパンパンよ」
アイリとサナエは文句を口にしてはいるがその足取りは軽い。
何せこの世界でひたすらモンスターを斃し続けているのだから転生前とは比べ物にならないほど体力は増強されている。
彼らはクラスメイトたちを横目に足速にその場を去っていった。
(モンスターを斃さないとポイントを稼げないぞ)
そんなこちらの事を心配してくれている同じ騎士学部の生徒の声に片手を挙げて応えながらヒデキたちは初日の夕方には5階層に到着していた。
一般的に5階層に到着するのは早くて3日目。
それをヒデキたちは1日目で到着した事になる。
「一つ相談があるんだが、ここの階層主を斃さなくても6階層に行けるが、実力を確認するために階層主にチャレンジしたいと思うが、どうだ?」
ヒデキは5階層を探索しながら4人に相談を持ちかけた。
もちろん、周囲を十分に警戒しての上だ。
「良いんじゃないか?」
「俺も賛成だ」
「うん。私も」
「早くやっちゃいましょ!」
4人は悩む事なくヒデキに同意する。
途中ゴブリンが幾度となく襲ってくるがほぼ瞬殺だ。
それがビッグゴブリンと言うゴブリンの上位種であろうと臆する事なく向かって行ける自信となっている。
「よし。それなら今一度装備を取り替えよう」
最近はヒデキによる付与魔法のお陰で高難度の依頼も受けれる様になり金銭面がかなり余裕ができ、新しい武器や防具を揃える事ができていた。
そこで彼らは学院指定の鋼鉄製のブロードソードから高評価のドワーフが鍛造したミスリル合金のブロードソードに武器を変える。
ランクで言うなら良1等。
ラミル皇女が学院の入学試験の際に使用していたミスリルコーティングソードよりもはるかに高価で攻撃力の高い武器を手にしているのだ。
防具に関しては飛竜の皮を使ったものでBランク冒険者が好んで使うもの。
これらに対してヒデキは不破壊と攻撃力アップ、物理防御アップや魔法防御アップ、状態異常耐性アップなどを付与していた
「ほんと、これヤバイな!」
「ああ、そこらの冒険者には負ける気がしねぇぜ」
「もう少しオシャレだともっと良いんだけどね」
「アイリは普段からオシャレとは縁遠くない?」
「ひっどーいっ!それを言うならサナエもそうじゃない!」
ヒデキ、リョウジそしてシンヤは「また始まったよ」と呟きながら装備を身に付けていく。
アイリとサナエも言い合いしながら3人に遅れまいと着替えていく。
長く5人で共に行動している事もあり、3人と同じ場所で着替える事に慣れているようで恥じらいなく下着姿になっていた。
「クラスメイトの手前あんまり良い武具を身につけていると五月蝿いからな」
「どこで買ったとかな」
「剣なんかはどうにか紹介してもらったっていうのにな」
「そうよね。自分たちは努力をしないで利益だけ得ようとするんだから」
「まぁ、ウチらもヒデキに頼りっぱなしだから他人の事言えないけどね」
「「「言えてるっ!」」」
以前から4人は漠然とヒデキをリーダーとしていたが、今では明確に自分たちのリーダーであると公言している。
格上の魔獣を斃せるのも、良い武具を買えるのも、何より金に困らなくなっているのはヒデキが導いてくれているからだ、と明確に認識しているのだ。
「いや。お前たちが俺を支えてくれているからだな。さぁ、階層主を屠っていくぞ!」
「「「「おうっ!」」」」
新しい武具で身を包んだ彼らは、先程まで以上にゴブリンを瞬殺していく。
ゴブリンの小さな魔獣石もどんどん溜まっており既に400個はあるだろう。
途中、ゴブリン部屋とも言うべき、ゴブリンが100体以上が待機している部屋に突っ込んでしまった事で魔獣石が激増したのだ。
当然、ヒデキたちはゴブリンの集団など歯牙にも掛けずに屠っていった。
「この剣、ゴブリンが豆腐の様だったな」
「ゴブリンって結構骨が硬い筈なんだが……文字通り一刀両断だ」
「もう鋼鉄の剣に戻せないかも」
「そうよね。全然切れ味違うもんね」
「ああ、無理して買って良かったな……さぁ、階層主の間だ。気を引き締めていくぞ!」
階層主が待ち構えている階層主の間の前にヒデキたち5人は立っている。
入り口は巨大な石製の扉であり、力のない者は最初から排除しようとしているかの様だ。
「よし。開けるぞ!」
ヒデキが扉を押す。
ブリギッドから受けた膂力のスキルは重犯罪を犯した関係で失ってはいるが多くの戦闘による種族レベルのアップ、そして身体強化魔法により強盗時の数倍にも膂力はアップしている。
ズズズズズ……
扉が引きずられていく音がまるで地響きの様にフロア全体に鳴り響く。
人が入る事ができるほどの隙間ができ、ヒデキたちはその中に滑り込む様に入っていった。
中は薄暗いが、部屋全体を見回せる程度には明るい。
巨大な石壁に紋様が描かれており、その奥に巨大な石でできている椅子、いや、玉座と言って良いほど装飾が施されている椅子があった。
「……?何もいないぞ?」
「ああ。確かここにはビッグゴブリンがいる筈だが」
リョウジとシンヤは部屋の中に違和感を覚えそれを口にしていた。
玉座はただ、そこにあるだけでこの部屋には魔獣は存在していなかったのだ。
すると玉座の両脇にある篝火台から焔が立ち上がり、それと同時に魔素が玉座に集まっていく。
「なに、あれ……?」
「魔獣が……形成していく……」
ヒデキは既に中級ダンジョンを踏破しているので知っていたが階層主は最初からそこに存在するのではなく、侵入者があって初めて階層主が現れるのだ。
ビッグゴブリンは通常のゴブリンに比べると身長が3倍近く。
ヒデキたちよりも巨大なその体躯を見た事で4人は怯みが出てしまった。
「気を引き締めろっ!回避しろっ!!」
ヒデキの声で我に帰った4人は回避行動を取ると、次の瞬間、彼らがいた場所に丸太の様な棍棒が振り下ろされていた。
「リョウジ、シンヤ、火球!アイリとサナエは蔦で足を絡め取れっ!!」
「おうっ!」
「まかせろっ!」
「「蔦よっ!」」
ビッグゴブリンはレベル2になった火魔法に包まれもがき苦しんでいるが、足に蔦が絡み逃げる事ができない。
そこにヒデキがビッグゴブリンに向かい飛び出して首を刎ね飛ばした。
「みんなお疲れ様っ!」
「ヒデキ、スゲぇな!絶対お前だけは俺たちとレベル違うだろ」
「俺もそう思うぜ。悔しいけどお前は毎日鍛錬しているからな」
「私もそう思うわ。少しだけカッコよく見える」
「私も負けないように鍛錬しないと」
「ははは。そんなに違わないと思うけどね。さぁ、魔獣石とドロップ品……おっ、中級火魔法スクロールか。どうせまた出るだろうから……リョウジさっさと使って火魔法を覚えてくれ!」
ヒデキはそっと空間魔法から中級火魔法のスクロールを取り出し、さもビッグゴブリンでゲットしたかのように振る舞った。
本来、初級ダンジョンの下位〜中位層からは魔獣石しか得られないのだが、中級ダンジョンを踏破した際に様々な種類の魔法スクロールが得られる。
良い機会と思い強奪したスクロールをドロップ品と偽り仲間のパワーアップを図る事にしたのだ。
「俺で良いのか?」
リョウジはシンヤの方をチラッと見るが、シンヤは無言で首肯しリョウジがスクロールを使う事に同意する。
「なぁ、折角早く来ているんだし、階層主を周回して全員がレベル4火魔法覚えちまおうか?」
当然ながら反対する者はおらず4人とも火魔法のレベル4を覚える事ができたのだった。
お読み下さり誠にありがとうございます。
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これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。




