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興味を持って頂きありがとうございます。




〈ファンザ・カレー〉の強盗事件後、防犯カメラの設置や虫型ホムンクルスなどによる警備を行い、また警備員も常駐させる事にした。

帝都はそれなりに治安が良く、リュウタやファンザもまさか帝都で強殺があるとは思ってもおらず、それが防犯意識を不十分にさせたとして少し過剰な警備となったのだ。

亡くなった料理人たちの家族には十分な補償をし、店舗もより警備しやすい場所に移転して再スタートを切った。

店舗再開の時にはしばらく休業していた事もあり、大行列が起き最高売り上げを叩き出したのは別な話だ。

その頃になるとリュウタたちも学院生活に慣れ、1年生にとって初の学院イベントが近づいてきていた。


「えーこれからダンジョン実習の説明を始める!」


学年主任となっていたディスマス・パパデウス教授が大講堂の壇上で生徒たちに説明を始めた。

ダンジョン実習は学院の近くにある低レベルの洞窟型ダンジョンに1週間ほどかけて探索を行うと言うものだ。

地下10階と大きさはそれなりなのだが、ダンジョン自体は帝国騎士団により管理されダンジョン内を徘徊するモンスターもそれなりに低レベルのものばかりだ。

大講堂には貴族学部、魔法学部そして騎士学部の生徒、合計230人とそれなりの人数が集められており、しかもダンジョン実習と学院での初の、しかも大型イベントの説明だからかこれだけの人数が集まっているにも関わらず誰1人として口を開く事なくディスマス教授に目を向けている。

これには理由があり、ディスマス教授は数理学科の教授という事もあり壇上ではあまり強者のオーラと言うものはないが、特任教授となったSランク冒険者であるガビルとゲランが壇上から眼光鋭く学生たちを見ているのだから自然と私語がなくなったのだ。


「6人でチームとなり37チームをこちらで勝手に編成した。各学部混成となっており実力はなるべく均してある」


ディスマスの言葉に学生から質問が出た。


「すみません。生徒の数からすると38チームはある筈なんですが」

「ああ。エレン騎士団のメンバーはダンジョン実習の際、教員と共にサポートに回る事にした。だから1チームだけは5人で1チームだ」


エレン騎士団の構成員はファサド以外はセレーコス学院の生徒。

団長のエレンを筆頭に俺、ノルン、マヨルカ、タミレ、アンティオコス、キュジケノス、ラオディアそしてデメテアがそうだ。

ファサドは院生ではなく、またアレクサはバクトゥーリア王国にいるので今回は9人がサポート役となった訳だ。


「装備は学院指定の物を使用するように!指定以外の装備を使用した場合、即刻実習中止の上単位は出ないからそのつもりでいろっ!それと、原則、サポート役は戦闘の補助はしないからな!!重傷を負ったら軽い傷くらいなら私たちが癒やしてあげるから安心してくれ」


ディスマスの説明に質問の手が上がった。


「エレン騎士団って俺たちと同じ1年生ですが治癒魔法を使えるんですか?」


治癒魔法は一般的に高レベルの魔法使いしか使えない。

ディスマス教授は神官の家系と言う事もあって問題なく使え、ガビルとゲランに付いてはSランク冒険者なので治癒魔法を習得していても不思議ではない。

俺たちエレン騎士団もまたSランク冒険者なのだがクラスメートたちはそれを知る者も少ないので不思議に思っているのだ。

実際は神玉石の力により元々治癒魔法に親和性が高いハイエルフのエレンはレベル50、神獣であるノルンは然程練習せずにレベル20で他のメンバーは全員がレベル10の治癒魔法を使える様になっていた。


「そうだな。貴族学部でAクラスなだけあり全員が使えるな」


ディスマス教授の話に貴族学部と魔法学部の生徒は感嘆の声を漏らす。

基本、貴族学部は上位であっても専科とも言える魔法学部や騎士学部の上位学生ほどの実力ではない、と言うのが通例だった。

それが、治癒魔法が使えると言う事は魔法学部であっても最上位者である事が確定したのだ。

ただ、騎士学部はあまり魔法について造詣が深くない事もあって貴族学部でありながら治癒魔法が使える異常さに気が付いていない様だった。


「……そして魔獣石は階層毎に係数が掛けられてポイントが与えられ、その合計ポイント数で成績を決める。他に質問がない様だったら、大講堂の後ろに掲示されているグループに別れて、明日から始まる実習の準備に入る様に。明日は現地集合だ。遅れるなよ!」


そう言うとディスマス教授を始めガビルとゲランも壇上を降り教授室へと戻っていった。

残された学生はグループ分けを確認して早速明日の準備に取り掛かった。


「俺たちは……この5人でグループか。足手まといがいなくて良かったな」

「ああ。何せ魔法学部のトップでさえ俺たちの火魔法より弱っちいからな」


リョウジとシンヤは自分達が同じグループになった事で、さも自分達が学院最強かの様に騒ぐ。

そんな2人を見てアイリとサナエはそれを否定はしないが窘める様に、


「あまり実力をひけらかしちゃダメよ」

「そうよ。対策されちゃうからぁ」


そんな4人を見てヒデキは、


「確かにアイリとサナエの言う通りだな。俺たちは余裕持って実技に臨もうか」


ヒデキは中級ダンジョンを単独で踏破できた事に自信を持っていた。

今まで散々苦労していたオークだけでなくオーガの上位種であるオーガソルジャーでさえ余裕で斃せたのだ。

今回の初級ダンジョンは1階層がゴブリン単独、2階層から2体で出現し5階層は5体出現しフロアボスがビッグゴブリンだ。

6階層からはゴブリン上位種のゴブリンリーダーやゴブリンソルジャー、ゴブリンメイジなども出てきて混成で階層数と同じ数の出現で10階層だと10体出現となる。

ダンジョンボスは多くの学院生では太刀打ちできないゴブリンジェネラルとなっている。

しかしヒデキなら単独でダンジョン踏破も余裕だろう。

そういった背景があるので彼の行動には余裕が見られるのだ。


「そういえば最近ヒデキは1人で何やってるんだ?」

「確かに夜中によく部屋からいなくなるよな」

「えっ、そうなの?」

「もしかして彼女ができたとか?」

「そんなんじゃないな。ただランニングとか体力作りをしているだけさ」


努力を嫌うヒデキが体力作りとは文字通りには受け止められないが、4人は「ふーん」といった感じに聞き流す事にした。



ダンジョン実習当日。

簡単な説明が行われ、そして1チームにつき1つのマジックバッグが支給された。

討伐した魔獣などから魔獣石やドロップアイテムが得られるのでそれを入れるためのものだ。


「いくら管理されている低レベルの初級ダンジョンだからと言って気を抜くな!それと貴族学部の生徒は自身の家格を背景に圧力を掛けるなよ?」


今回、教員からはパパデウス教授、ガビル特任教授、ゲラン特任教授、そして魔術関連の実技講師になったホムンクルスのニカラウス・ラーンジュの4人が入る事になり、責任者はパパデウス教授が務める事となった。

そのパパデウス教授は音声伝達魔法を使い、221人もの学生にしっかりと伝達事項を伝えた。

俺たちは、俺とエレン、ノルンとアンティオコス、マヨルカとタミレ、そしてキュジケノス、ラオディア、デメテアの3人でチームとなった。

キュジケノスを3人チームにしたのは勿論、ラミルの御学友として側使えさせないための方策だ。


「エレン騎士団のエレンさんの所に私が、ノルンさんのところはガビル特任教授、マヨルカさんのところにゲラン特任教授、そしてキュジケノスさんのところにはニカラウス講師が同行する」

「パパデウス教授、それでどのチームがどの階層を担当するんだい?」


パパデウスにゲランが質問するが、パパデウスはさも当然かの様に、


「私のチームが10階層、ガビル特任教授は8階層と9階層、ゲラン特任教授には6階層から7階層、ニカラウス講師には1階層から5階層をお願いしたい。早々に3階層までは学生もいなくなるから実質は4階層と5階層を監視してくれればと思う」

「そうだな。俺はそれで構わないぜ」

「俺もだ」

「私もそれで良いと思います」


実際、ダンジョン内には虫型ホムンクルスを相当数配置しているのだが、学生が集まる4階層から7階層に関しては特に多く配置してアンティオコスとキュジケノスに情報をリンクさせているので障害が残るような怪我をする学生はまずいないだろう。


「それでは中での混雑を避けるために呼ばれた順にダンジョン内に向かえ!」


途中からはパパデウスに代わりゲランが指示を出す。

それというのも、最下層を担当する俺たちは当然ながら先にダンジョン内に入る事になるからで、最後は当然ながらラミル皇女のチーム。

安全性を考えての事もそうだが低階層の担当がキュジケノスと言う事もあり、少しでも長く一緒にいたいと言う乙女心を侍従のティモンが捻じ込んだからだ。

俺たちはダンジョン内に入るとパパデウスを背負って神速を使い移動を始めた。


「な、な〜〜っ!」


パパデウスはあまりの速さに驚き絶叫する。


「教授、口を閉めないと舌を噛みますよ!」

「んっ!んんっ……」

「リュウタ、階層主はどうするの?」

「そこは転移して通過だね!」

んんっ(転移っ)?」

「教授には後で説明しますから……」


エレンには付与魔法を掛ける事で俺の神速について来れる速度となっているので気兼ねなく速度を上げる事ができる。

多くの場合、1階層に初めて入る学生は2階層に進むには半日はかかる。

それを30分もかからずに2階層に進むのだから昼前には10階層のボス部屋に到着してしまった。


「よし!これからここに拠点でも創るか!」

「おい、ダンジョン内に拠点なんか造ったらゴブリンの棲家になるだろう」

「いえ、壁の中に創れば良いんで……」


俺はダンジョンの構造上、家屋を壁の中に創っても問題のない場所を選び早速作業に取り掛かる。

幅1.5メートル、高さ2.5メートルの入り口からまっすぐ10メートルほどの通路を創り、その奥に部屋を創っていく。

部屋の高さは3メートルで統一して、30帖ほどのリビングに手洗いを4か所、大浴場2か所に12帖ほどの個室を15室、そして客間や食堂、キッチン、そして監視室などを創っていく。

監視室は各階層に10ほどのモニターを割り振り、10階層は少し多めにし、そのうち4つはボス部屋となっている。

これにより全階層を一括して監視する事ができる様になった。

ちなみに水道は水魔法で確保し、排水は温度を下げて浄化したものは100メートルほど下を流れる地下水に転移させて流す様になっている。

そして家具や食器、リネン類などを設置して完成だ。


「教授。それでは中にどうぞ。この入り口は隠蔽されている上に無感知機能付きの結界が展開するので特級魔法使いでも見つけられませんから安心ですよ」


俺は歩きながら拠点内の説明を始める。

パパデウスはその拠点内を口を開けながら見ていると徐に、


「あ、あぁ……一つ訊ねたいが君は学院にいる意味があるのかね?」


と聞いてきたが、俺は当然と言った感じに、


「まぁ、自分なりに学べてますよ?」

「解答が疑問形なのは気になるところだが、学べているのならいいか」


と、パパデウスは納得いかない感じではあるが俺の回答を受け入れる事にしたようだ。


「で、ここが監視室です」

「これは……全生徒が網羅されている?ラミル王女はまだ2階層にいるのか……遅いな」

「ラミルの視線は完全にキュジケノスに釘付けね」

「デメテアがいるって分からないのかな……恋は盲目って言うからキュジケノスに避けられている事を理解できない様だ」


実習の観察と言うより完全にラミルの観察となってしまったが、俺たち3人はここで1週間籠って観察する事になった。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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