052 ヒデキ襲撃
興味を持って頂きありがとうございます。
グロ表現あります。苦手な方は読み飛ばしてください。
「シェ・ジェノワーズ」でカレーを扱う事が決まり、カレーライスは1日100食限定、カレー粉は20グラム入りを1000個限定でそれぞれ銀貨15枚と銀貨20枚で売り出す事になった。
カレー粉は1家族2個までとしていたが貴族たちが家臣を使い買い占めようとした事もあって爆発的な人気となりカレーを求めて毎日のように行列ができる事になったのだ。
「リュウタ様!スゴイ売り上げです!!毎日、銀貨21500枚ですよ!!」
ファンザが驚きを隠せないのも当然と言える売り上げなのだ。
銀貨1枚が1万円相当なのでカレー関係だけで1日に2億1500万円もの売り上げが発生している事になる。
そういった事もあってカレー関係は「シェ・ジェノワーズ」ではなくカレー専門店「ファンザ・カレー」を別途作りそこでカレーライスとカレー粉の販売をする事になった。
カレーライスを求める列が毎日の様に続くので皇室にもという要望があり、結局は月に1回10食の提供をする事になった事で「皇室御用達」となり、それが人気を加速・定着させる事にもなった。
そうなると学院と冒険者ギルドの往復で世俗に疎くならざるを得ないヒデキたちシミタリア領勇者候補の面々にもカレーライスの存在が知られる事になった。
「おい、カレーの店ができたらしいぞ!」
ヒデキたちが学院の食堂で一番安いランチを食べていると、そこにシミタリア領勇者候補の1人であるリョウジが興奮気味にやってきて開口一番、カレーの話しを始めた。
当然ながら貴族や商家の子弟たちは既にカレーの事は知っている事もあって、リョウジの声の大きさで一時的に視線を彼らに向けて妙な静けさが起きたもののすぐに興味を失った様で再び雑談で食堂は騒がしくなった。
「カレーって、あのカレーか?」
「ああ。俺たちが知っているあのカレーだ」
ヒデキの問いにリョウジはニヤリとしながら答えた。
以前からヒデキたちはもう一度食べたいものとして、カレーライスとラーメンを上げていたのだ。
この世界には定期的に転生者が来ているようで「カレーみたいなもの」は今までにも何度かお目に掛かったことがあるのだが彼らの記憶の中のカレーとは全く別なものなのだ。
米もあるにはあるのだが、供されているのは長粒種でありジャポニカ米に近いものはシミタリア領では見たことがなく、帝都でも同様だった。
しかし、リョウジがあまり期待せずに「ファンザ・カレー」の前を歩くと、記憶に強烈に刻み込まれているあのカレーの匂いが漂っているのだ。
「だが、ちょっと問題もあってな……」
「問題?」
「ああ……。実はカレーライスが1杯で銀貨15枚もするんだよ」
騎士学部の生徒たちの中でもカレーライスを食べたと言う者が複数人いるのは分かっていた。
それが貴族の子弟だけと言うのが気になっていたが……問題は価格にあったようだ。
「銀貨15枚?そんなの無理だろっ!」
ヒデキたちは授業が終わるとすぐに冒険者ギルドに向かい様々な依頼を受ける。
Dランクと言う事で以前よりは報酬も増えてはいるのだが、学院寮は月に金貨1枚、それも1人で1枚必要になる。
5人だと当然金貨5枚必要になるのだが、これは全て自分で工面しなければいけないのだ。
シミタリア領にいた頃だと1日に銀貨1枚も収入があれば良い方だったが、今では20枚近い収入がある。
それでも休みなく働いて精々銀貨600枚=金貨6枚だ。
寮費を差し引いた金貨1枚で装備の修理や新しい装備の購入をするのだから銀貨1枚でも無駄遣いができない。
地理的に香辛料の入手がどれだけ困難なのかヒデキたちは知る由もないのだが、カレーライスが1杯で銀貨15枚と言う価格設定に普段から肌で感じる階級差別があると考えたのだ。
「クソっ!こんな所でも階級かよっ!」
そんな苛立ちを隠せないヒデキを見ているリョウジたち4人は現実をある程度受け入れている事もあり、ため息を吐き、
「大隊長にでもなれば食えるようになるだろ、な?」
「俺たちの年齢で小隊長になるのでさえ早い方なんだぞ」
「上を見たらキリがないでしょ?ねっ?」
「そうよ。私たちは騎士学部ではトップクラスなんだし」
ヒデキに対して何ら意味を持たない言葉である事は重々承知はしているが、この社会の不条理を飲み込むために自分に対しても口にしていた。
騎士はあくまでも騎士。
貴族との社会的、経済的地位の差は遺憾し難いものがあるのはどうしても否めない。
そんな仲間たちの想いを感じ取ったのだろうか、ヒデキもようやく落ち着きを取り戻す。
「……悪かった。落ち着いたよ」
「まぁ、カレーなんざ今食おうが将来食おうが変わらないからな!」
「確かにそうだな」
「そうよ。リョウジやシンヤの言う通りよ」
「さぁ、早く食事を終えて授業に向かわないと遅れるわ!」
サナエに急かされ量だけあれば良いような騎士学部のランチを胃に流し込み、5人は次の授業へと急ぐのだった。
その日の夜。
1人の男が黒装束を身に纏い、頭に布を巻き付け目だけが見えるようにして夜闇に紛れるように街の中を疾走していた。
兵士としてそれなりに鍛錬しているであろうその足取りは静寂が支配している街中であってもその静寂を破る事なく疾走できていた。
そして、その男は1軒の店の前に立っていた。
〈ファンザ・カレー〉
今、帝都で一番話題を集め、何より金が集まる店の1つと言える店である。
店は閉まってはいるが中で何やら作業をしているのだろう、仄かな灯りが闇世に浮かんでいる。
男は店のドアに手を掛けると鍵開けのスキルとかではなく単純な膂力で強引に開くのだが強引さに繊細さも加わり然程大きな音を立てる事はなかった。
それでも店内ではその音から誰かが侵入してきたのを察知し、服装から料理人と思しき男が店内の灯りを点けた。
「誰だ?」
料理人は店内で黙って立っている男に気が付き声を掛ける。
すると、男は一気に料理人との距離を詰めて腹部に短刀を突き入れ、そしてグリっと半回転捻る。
料理人は刺された刺激で上半身が一気に緊張して肺の中の空気が口から吐き出される。
「かはっ」
男は短刀を引き抜き店員を床に転がし灯りの灯っている店内の奥へと進む。
そこは厨房であり、カレーの仕込みをしているところだった。
料理人であろう2人の男は
「何かあったか?さっさと明日の分を仕込まないと……っ!?」
「なんだお前っ……!」
店の奥には2人の店員が仕込み作業を行なっていた様だが、男は声を出させないよう2人の首を斬り落とす。
店員たちは首から血を吹き出しながら床に倒れ込み血溜まりを作っていく。
男は仕込みが完了していたカレーが入った鍋と米の入った袋、そして棚にあったカレー粉をマジックバックの中に入れ、そして何日かで稼いだ売り上げだろう、金庫にあった金貨1000枚と銀貨7000枚も奪い店を出た。
店に押入ってから出るまで僅か5分。
超人気店が襲撃され3人の店員が殺された強盗事件として世間を大いに騒がせた。
実は同じ日、帝都内でも最大の魔道具店にも強盗が押し入り、数十点もの魔道具や大量のポーション類、多数の特殊スクロール、魔剣などの特殊武具類が奪われていた。
魔道具店では誰も殺されなかった事から、両方の事件に繋がりを感じた者は居なかったが、マジックバックはこの魔道具店で盗まれたものだ。
犯人には取り敢えず懸賞金が掛かってはいるのだが、目撃者も居らず、迷宮入りする事になる。
そして人の噂も七十五日、3か月を過ぎる頃には誰もその事件を口にする事は無くなるのだった。
〈ヒデキ視点〉
ふははははっ!
これで俺様は暫く金に困る事はないだろうっ!
そして……予想通りだ。
あの魔道具店には神話級の魔法スクロールがあった。
神から得た祝福は重犯罪を犯すと失われると聞いていたが……当然だが火魔法は使えなくなったな。
だが、そんな祝福なぞ比較にもならない、特殊スクロールを使えば始めから上級の火魔法、水魔法、雷魔法、治癒魔法、空間魔法、身体強化、魅了魔法、付与魔法が獲得できる筈だ。
先ずは火魔法……ははは、今までの火魔法は子供のお遊びみたいだな。
魔力の消費も少ないにも関わらず威力は数倍にもなっている。
何より詠唱が必要ないとは……最高だ!
1時間ほど掛けてスクロールを全て使用し得られる魔法は全て獲得した。
それと同時に自己鑑定、身体ステータス10倍、経験値5倍、必要経験値1/5などのスキルを獲得した結果、俺の魔法は各レベル5、剣術はレベル7になった。
これによって神殿に行かなくても自分のレベルが分かる様になったのはこれからの成長に役に立つだろうっ!!
そして覚えた空間魔法内にマジックバックを収納。
これで俺が強盗を働いても盗んだ物を誰も見つけることはできないだろう。
リュウジたちには今回の事は秘密にするが、彼らの武器類には不破壊や攻撃力アップなどの付与をしてやり、俺様の手下に仕立て上げていくか。
そう言えばそろそろ学院でのダンジョン実習だったな。
その前に中級ダンジョンに行きレベルアップと一緒にスキルを使う練習でもしようか……。
結果、俺はダンジョン実習前に冒険者ギルドBランク、そして魔法レベルは6になっていた。
お読み下さり誠にありがとうございます。
今回の話はいかがでしたでしょうか?
宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。
これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。




