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興味を持って頂きありがとうございます。
魔法実技試験が終わり短い休憩の後、すぐに剣術実技試験が開始となった。
魔法実技試験同様、実技場での試験が行われ試験官はゲランとは別のSランク冒険者が担当する事になっていた。
「あー、早速だが自己紹介だ。知っている者も多いだろうが冒険者ギルドSランク冒険者のガビルだ。今回は剣術の試験官として派遣された。よろしくな!」
実技場の中央に立ち、俺たち新入生に向かって自己紹介を始めた。
俺たちは学院から支給された革製の鎧を見に纏い、ガビルは同じ型ではあるが色違いのものを身に付けている。
左の腰には木剣。
そんな出立ちのガビルの声は少し離れた所に立っていても下腹部が揺らされるような感覚がある程、大きく、そして低い声だ。
「さぁ、それでは早速だがデメテア!」
「は、はいっ!」
「付与魔法使いだったか。さて、剣術はどんなもんかな?試験開始だ!」
今回も入学試験で貴族学部最下位だったデメテアから始まった。
ガビルは開始を宣言するとデメテアとの距離を一気に詰めて肉薄した。
「きゃっ!」
デメテアは小さく悲鳴を上げたのだが、身体は悲鳴とは真逆の動きをしておりガビルを正面から迎え撃っていた。
彼女は木剣に対して不破壊、魔法攻撃付与や攻撃反射付与などを瞬時に行い、自身の身体にも様々な付与魔法を試合開始と共に行っており、ガビルの攻撃に即応できたのだ。
「閃撃!」
ガビルの剣技がデメテアを襲う。
本来、試験であれば試験官が受けに回っても良さそうなのだが、ゲランからエレン騎士団の事を聞いていた事もあり奇襲によりこの試験での主導権を得ようとしたのだ。
しかし、彼女の見た目からはそれ程の剣豪とは思えなかったのか、少し手加減した事も手伝って彼女はその剣を受け流し、その反動を用いて反撃した。
「剣もかなりやり込んでいるのか……?だがっ!」
ガビルは驚きつつもこの1合で奇襲は功を成さないと理解し、正面から剣を合わせる事にした。
そして彼女の剣撃を下から打ち払おうとしたのだが、ガビルより一回り以上は小さいデメテアの剣を払う事ができず、彼は大きく剣を避ける事となった。
「なぜだ、彼女の剣は異常に重いぞ……付与魔法の効果か?いや、そんな筈は!」
ガビルも今まで多くの付与魔法使いと戦ってきている。
多くの場合は剣士に対して別の付与魔法使いが付与を行うのだが、それでもここまで剣撃が鋭く、そして重くなると言うことはなかった。
しかし、目の前のデメテルの剣はまるで格上の剣士と戦っているかの様な鋭さや重さを感じるのだ。
(まさか……俺よりも上の剣術使いなのか?)
ガビルはそう思いながら技量が測れる連撃に切り替えた。
それと言うのも少し冷静になり彼女の剣を観察していると、どこかチグハグな事に気が付いたからだ。
剣技は自分よりも上である可能性を秘めているのだが、見た目に隙があり過ぎる。
これは彼女に経験が伴っていないのではないからだと考えての切り替えだった。
「いや、もう、なんてイジワルなの!」
デメテアはそう言いながらガビルの剣を受けている。
しかしデメテアの隙を突く様に剣を振っていると言うのに、彼女はその剣を見事に受け切っていた。
いや、ただ受けているだけではなく時折反撃すらしている。
一見押している様に見えるのはガビルなのだが、実際は場を支配しているのは完全にデメテアだ。
「閃撃っ!」
閃撃を放つには多少なりとも溜めが必要だ。
デメテアはガビルの連撃を受けていると言うのに、閃撃を放つに必要な溜めができていた。
「ぐわっ!」
彼女の閃撃は連撃の隙を突いてガビルの脇腹に入り、彼はそのまま横に吹き飛ばされる。
当然、デメテアはその隙を逃さず追打ちを放つ。
今度はデメテアによる連撃となり、ガビルは防戦一方となり最後はデメテアの木剣がガビルの首筋を捉えた。
「くっ……参った……」
ガビルは片膝を突き、剣を地面に突き刺ししばらく微動だにしなかった。
そんなガビルを新入生は遠巻きに見つめるしかできなかったが、彼は1つ深呼吸をし、
「凄いな。エレン騎士団で一番末席がデメテアだと言うのに確実に俺の上をいく実力がある。デメテアならSSランクと言われても納得だっ!」
そう言い放つと、ティモンの名を呼び実技試験の継続を宣言した。
だが、ティモンは3合も持たずに膝を突く。
1合目でティモンの剣は打ち上げられて2合目で首筋に剣を向けられて終了。
これはまだマシな方で、他の生徒は立ちすくんで動けなくなったりお漏らしをする生徒も少なくなかった。
「取り敢えず、エレン騎士団は全員Aクラス、残りは……全員Bクラスで良いか。わざわざCクラスを作る必要性がない!それと最後に、リュウタっ!俺と試合だっ!」
「構いませんが、先生は疲れていませんか?」
「これ位は疲れとは言わん!剣を持てっ!」
俺は言われた通り木剣を握りガビルの前に立つ。
エレンの呼び掛けにより生徒たちは実技場の端まで避難をする。
「先生。いつでも構いません」
俺はオーソドックスに中段に剣を構えた。
ガビルもまた中段。
ガビルは魔力をゆっくりと練っていき身体強化をしていく。
その魔力量は魔術師としてもSランクのゲランに匹敵する程だ。
全身隅々まで魔力が循環し魔気が彼の身体から漏れ出して蜃気楼の如く彼の背景を揺らめかせ始めた。
先程までは純粋に剣術のみで試験をしていたが、今はその上位職位である魔法剣士として俺の前に立っている。
多少なりとも俺も本気を出さないと失礼に思い、僅かに俺は調息をし気合いを込めようとしたのだが……ガビルはそのまま気絶をして実技場の中央で倒れてしまった。
調息により僅かながらに漏れた神気に当てられ気を失った様で、俺は急いでガビルに駆け寄りどうにか地面に倒れ込む前に支えた。
「……お、俺はどうなっていた!?」
「すみません、俺の殺気にあてられた様で……」
神気と言うと説明が大変になるので殺気という事にした。
ガビルは「殺気ぐらいで気を失うとは俺もまだまだだ……」とか呟き、
「さすがカジ家の公太子なだけある。リュウイチ殿にも勝る存在感だ」
「いえ、まだまだ父上には敵いません。本日はご指導ありがとうございました」
「いや、俺の方が指導してもらった。ありがとう」
俺とガビルはしっかりと手を合わせた。
「明日以降の剣術Aクラスの授業はこのガビルが責任持って行う事を明言する!」
そう宣言すると「魔術Aクラスはゲランが担当するそうだ」と小声で俺に伝えてきた。
これは俺たちにとって嬉し事。
デメテアの剣術レベルは9。
それに対してガビルは8だった。
それにも関わらず善戦できたのは経験の差があるからだ。
この経験を補う事ができるのであれば、俺たちにとってこれからの3年間はとても有意義なものになるだろう。
「宜しくお願いします。先生」
俺はそう言うとガビルはにっと笑顔を浮かべて、右手を上げて実技場を後にするのだった。
お読み下さり誠にありがとうございます。
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これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。




