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048 ヒデキ3

興味を持って頂きありがとうございます。




〈ヒデキ視点〉


あー、クソ。

騎士学部は爵位持ちがゴロゴロいるじゃねぇか!

150人いる同期のうち、男爵以上の爵位持ちのガキどもが85人もいやがる。

しかも俺の様な騎士爵持ちも少なくない。

本当なら騎士爵の地位でクラスの奴らを束ねてやろうかと思ったが……

まぁギルドのDランク持ちはそうはいないだろうが、ここでも社会的に下である事を意識させられるのは向っ腹が立つぜ。

そんな事もあって俺たちは騎士学部の中でも後ろの席に座らされている。

しかも後ろは農学部だと!?

クソッ!くそっ!糞っ!!

いかに俺のポジションが底辺に近いか思い知らされる……


「悪いが椅子を蹴らないでもらえるか?」


俺の前に座っている男が振り返り命令してきた。

それでなくても苛立っていると言うのに俺様に向かって命令とは随分と偉そうな奴だ。


「木偶の棒が一人前に人の言葉を発するんじゃねぇ」

「なに……?お前、騎士爵……最底辺じゃないか」


襟に付いているバッジからこいつは子爵家……だが男爵以上で貴族家当主は騎士学部にはいないと聞いている。

確かに騎士爵は爵位持ちの中では最底辺だが、お前は当主ではないだろ!

こいつは俺の怒りに油を注ぎやがった!!!


「最底辺?そんな奴より弱そうなオマエは何と言えばいいんだ?クソか?」

「お前、騎士爵の癖に生意気なんだよ!」

「はん。弱い犬ほどよく吠えるな」

「い、犬とはなんだ!」


こいつの様に短絡的な奴ほど御しやすいんだ。

ほら、身体が緊張して動きがロボットの様だぜ。

こいつは怒りに任せて腰に下げている剣を抜こうとしたが、そんなんじゃ碌な抜刀はできんだろうな。

当然ながら俺の方が後から剣を手にしたが、俺の剣先はこいつの喉元を捉えた。


「遅いなぁ〜。そんな腕前でよく騎士学部に入学できたな。親のコネで入れてもらったのか?」


こう言う奴は小馬鹿にしてプライドを刺激するのが一番効果的だ。

ほぅら、奴の顔は茹でタコの様に真っ赤になっていくのが分かる。

だがもう少し揶揄ってやろうかと思っていた所に思わぬ横槍が入った。


「ヒデキ、そんな奴ほっといてさっさとギルドに行くぞ」

「そうだぞ。時間勿体無いだろ」

「そんな奴虐めても経験になんないんだからぁ」

「そうよ早く行こっ!」


転生前からの付き合いある仲間からだ。

ねちっこく揶揄うという俺の性格も分かっての事だろう。

少しため息混じりで俺を止めようとしている。

だが、イジメは俺の楽しみの一つでもある事を知っているからだろう、本気で止めようとしていないのは彼らの雰囲気で分かる。

さて、もう少し虐めてやろうか……


「いい加減に止めたらどうだ?」


そんな俺と奴の間に1人の男が割って入ってきた。

ご丁寧にも俺の剣先を払い除けて、だ。

胸のバッジを見ると伯爵家の人間だと分かる。

騎士学部には伯爵家の人間は居なかった筈だからこいつは貴族学部か。

俺の興味は完全に子爵の息子から伯爵家のそいつに移り、そいつの姿を値踏みするかの様にねちっこい視線を向けてやる。

これをすると大抵の貴族は冷静な判断ができないくらいに怒りの感情を表に出す。

そうなればこっちのもんだ。

流石貴族学部。

仕立ての良い服装だが、そういった動きにくい服装はこういった時には命取りとなる事を知らない様だな。

思わず右の口角が上がった。


「伯爵家のお坊ちゃま。カッコつけようと他人の喧嘩に手を出すのは怪我の元なんだがっ!」


俺は言葉を言い終わるか否かその瞬間に抜剣して斬りかかった。

水平に剣を薙ぎ払う様に斬りつければこの距離だと完全に避ける事は無理だろうし、剣で受けるのも位置的に困難だ。

どうせ今日の剣は刃を潰した模擬戦用のものだが、無傷では済まないだろう。

喧嘩に飛び込んできた場合、少々怪我をさせても不問になる事が多いから俺は容赦なく斬りつけたのだが俺の剣はこいつに届かなかった。

何故なら俺の剣は信じられない事に彼の右手の親指と人差し指で摘まれて止められたからだ。

俺は力を込めて剣を引いたり押したりしたがまるで岩に突き刺さっているかの如くピクリとも動かない。


「そうそう剣を人に向けてはいかんぞ。それに君もまだ剣技は中級程度のようだし」

「はぁ?何で俺が振るった剣を指で摘めるんだ?」

「それは俺との剣術レベルに大きな開きがあるからだね」


これでも俺は魔獣との戦闘に明け暮れている生活を続けてきた。

同年代どころか領軍の中でも強い方だと自負している。

そんな俺が同い年から「レベルに大きな開き」と言われるとは思っても見なかった。

んな筈ねぇだろっ!!

だが、現実問題としてこいつはまだ本気を出していない事が分かる。

何より勝てない勝負を挑むほど俺は愚かではない。


「くっ……分かったよ。おら、帰るぞ!」


リョウジ、シンヤ、アイリ、サナエからは「学院ではトラブル起こすなって言われていただろ?」とか口うるさく言われながら大講堂を出て行ったのだった。



〈ラミル視点〉


「お前、騎士爵の癖に生意気なんだよ!」


入学式を終えて主賓が皆退室したのを確認して私は壇上を降りようとした所、騎士学部の生徒が座っている辺りから大声が響き渡った。

入学式早々に喧嘩とはやはり騎士学部は民度が低い、そう思いながら見ていると想像していた通り口論が始まった。


「はん。弱い犬ほどよく吠えるな」

「い、犬とはなんだ!」


遠くから見ていたのだが剣を持った男はそれなりにの使い手の様で相手の喉元に剣を向けていた。


「血の気は多いですが、それなりの腕前の様ね」

「あの行動は褒められる事ではありませんが、衛士の小隊長を超える程度の実力はあるかも知れません」


この学院で共に学ぶ事になる私の侍従、ティモンが答えた。

彼は私の護衛兼侍従としてセレーコス学院では共に学生生活を送るが、その実力は当然ながら皇女の護衛を任されるだけあり皇軍大隊長並みだ。

そういった事もあり、問題を起こした学生の実力を一目で看破できたのだが、下手に力を持っている様で問題が大きくなる前に皇女としてその場の諍いを仲裁に向かう必要がありそうだった。

そこに貴族学部から1人の男が争う2人の間に割って入ったのだ。


「いい加減に止めたらどうだ?」


凛と通る声、見目麗しい容姿、何より貴族学部なのにそこらの騎士以上に鍛えられているのが分かるその身体に私の目は釘付けになった。


「あの男は……?」

「はい。あの男はメディロニア領のシデトリオ伯爵の長子、キュジケノスですね」

「シデトリオ家と言えば武家として知られる?」

「そうですね。有名なカジ公爵家の存在に霞んではしまいますが、帝国の中でも有数の武力を有します。彼は貴族学部ですが剣術の成績は騎士学部であってもトップクラスで、現伯爵もまた高名な剣術家として知られています」

「キュジケノス様……!」


彼の存在は一瞬で私の心を掴み、胸の前に手を合わせて彼に熱い視線を送る。

そんなキュジケノス様に対して騎士学部の生徒が事もあろうに剣を抜き斬りかかったのだ。


「……っ!」


キュジケノス様も帯剣しているとは言え、先に抜いた者の方が優位なのは言うまでもない。

私は思わず悲鳴を上げかかったのだが、キュジケノス様はその剣を避けるでもなくその剣先を手でうけとめていた。


「殿下……キュジケノスはあの剣を指先で摘んで止めた様です」

「指先で?どうやって……?」

「剣速を超える握力をもって剣を摘んだとしか……自分には到底真似できません」


騎士学部の男は剣を押したり引いたりしているがその剣は岩に突き刺さった剣の様に微動だにしなかった。

男は仲間だろうか彼らに引っ張られる感じに、潔くないというか、往生際が悪いのが側から見ても良く分かる様な態度をとりながら、大講堂を出て行ったのだ。


キュジケノス様はそんな男を見送りながらカジ家の男のところに向かい談笑をしている。


「キュジケノスは……下手したら学院の講師たちよりも強いかも知れません」

「……素敵♡」

「彼を御学友として指名しましょうか」

「……お願いするわ」

「畏まりました」


あぁ。

あまり期待していなかった学院生活が一気に薔薇色になったわ!


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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