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興味を持って頂きありがとうございます。
帝都も基本は他の領都と同じ都市構造を取っている。
というよりも、領都が帝都の都市構造を見本にして造られているのだ。
中央には帝城があり、その周辺には有力貴族の邸宅が置かれている貴族街区がある。
帝城に最も近い東西南北の4区画には公爵邸があり、筆頭公爵家であるカジ家の邸宅は南区画にある。
そして各公爵家を筆頭に派閥があり、カジ派は南区画に集まっている。
貴族街の周辺も東西南北に区割りされ、東から順に商業区、南は工芸区、西に行政区そして北は宗教区となっていた。
その更に周辺に住居街が広がり南北が富裕層、東西の中央寄りが平均的な層で外層がいわゆるスラム街となっている。
セレーコス学院は何故だか宗教区に置かれており、宗教区には大聖堂アンティウスを始め宗教施設が多く置かれていた。
各ギルド本部はどうなっているのかというと、鍛治師ギルドは工芸区、商業ギルドは商業区、そして冒険者ギルドは行政区に置かれていた。
何故冒険者ギルドが行政区に置かれたのかというと、魔獣討伐は少なからずのケースでその国の軍隊と連携を取る事があるからとされているが、実際は魔獣討伐による褒賞金から税金を確実に取るためだったりする。
それなので、冒険者ギルドは国寄りとは決して言えず、それが犯罪者を匿う隠れ蓑として機能する事にもなっていた。
「……と言う事もあって拠点は南区画が第一候補、そして冒険者ギルドが近い西区画が第二候補になるかな」
「でも西区画は治安が悪いんじゃないの?」
「一応、貴族街区だからそこまで治安が悪い訳じゃないんだけど……裏世界に足を突っ込んでいる貴族はやはり西区画に多いんだよね」
「それなら南区画が良さそうじゃな」
「ただ、学院からは帝城を迂回しなければいけないから1番遠いんだよ」
「今回の拠点は購入されるんですか?」
「ん?その方が信用度が上がるからそうしたいけど」
「それなら南区画が良いと思います。学生期間はせいぜい3年間ですが、実際に騎士団として動くのはもっと長いのですから」
「私もその方が良いと思うわ。それに西区画だと商業ギルドが遠くなるのよ」
「そうか。それなら南区画に拠点を置こうか」
拠点選びはリュウイチの勧めもあり、南区画の中央に位置する今は空き家になっている元侯爵邸だった邸宅に移り住む事になった。
ここはリュウイチが俺のために購入していた場所であり、土地の広さは南区画の中でも2番目の広さを誇っているのだ。
ただ、家屋は少し古く建て直す必要があるのだが、建て直す為には届け出が必要になり間取りなども皇帝側に筒抜けになってしまう。
そこで今回は届出の必要のないリフォームを行う事にし、この邸宅を管理していた業者立会いの元、内覧をする事にした。
「ねえ、リュウタ。この家をリフォームしても厳しいんじゃないかな」
「そうじゃな……大きいは大きいのじゃがこれはどう見ても廃屋じゃな」
「なんだか出てきそうで、怖い……」
「夜になるとゾンビやスケルトンが湧いて来そう……」
物件に入ると満足に清掃がされていなかった様で埃が積もっており至る所に蜘蛛の巣が張られていた。
窓も多いとは言えず、昼間だと言うのに家屋の中は薄暗かった。
「まあ、どうせリフォームするから問題ないけどね、父上から管理料を貰っている筈なのに管理が悪いね」
「えー、ここは地下1階、地上2階で建築面積1300平米、延床2700平米という南区画の中では大きい方の建物ですので、どうしても管理が行き届かず……」
「そうなの?まぁ父上にはこの状況を報告するけどね。それでは今日からリフォームするから管理契約は終了と言う事で」
「あっ、はい……その……管理についてお父様に報告は……」
「するよ?だってこの状態は長年放置している状態で管理しているとは到底言えないからね」
ちょっと悪徳業者だったのでお灸は据えとかないとね。
で、建物だけでなく地下埋蔵物なども含めて鑑定をしてみると、邸宅の奥に面白い存在がいた。
妖精の一種であるシルキーだ。
恐らく長いこと誰も住んでいなかったからだろう、魔力が集められなくなり消滅する1歩手前まで衰弱していた。
「ちょっと中をもう少し確認したいから、皆は外で待ってもらえるかい?」
「えっ……やっぱりここに決めるの?」
「ああ。きっと皆も気にいると思うよ」
そう言って俺は邸宅の中へと進んでいった。
埃っぽいので洗浄を行いながら地下の一室へと向かう。
その部屋は掃除道具などを収納している部屋なのはシルキーらしいと思いながら部屋のドアを開けると実体化もままならぬほどに魔力を感じさせないシルキーが壁に背中を預けて床に座り込んでいた。
見た目も幼女に見えるくらい退行している。
「こんにちは。この家の新しい住人になるんだけど、俺の魔力を受け取ってくれるかい?」
「……ありがとうございます……」
俺はシルキーにゆっくりと魔力を流し込んだ。
するとシルキーの輪郭ははっきりとしてきて表情も明るくなってきたのだが、いつの間にか主従関係が結ばれていた。
「ありがとうございました、ご主人様。私に新しい名前を頂けますか?」
「今までの名前はどうするの?」
「実は今までここまで魔力を頂いたことがなくて主従契約を結んだのは初めてなんです」
「そうなんだ。それでは君の名は、マイ。今日からマイと名乗ってくれ」
シルキーは自分の名を呟くと光り輝き、20代前半の女性の姿へと成長した。
「ご主人様。服はご主人様の記憶から再現させて頂きました」
彼女は黒のカラー付きシルクシャツに白のエプロンドレス、そして白のバティスタのキャップを身に付けていた。
これは前世でいつしか見た近世メイド服だ。
「似合うよ。で、これからこの家をリフォームしたいけど良いかな?」
「はい……残念ながら長く邸宅の主人がいなかった事で随分と傷んでしまいましたから。ただ、大広間にある暖炉だけは補修してでも使って欲しいと思います」
「暖炉?どうしてだい?」
「私の本体が暖炉なんです」
「暖炉が本体って……付喪神みたいだね」
「最初のご主人様も同じ事を言ってました。長く大切に使って貰えると私のような妖精が生まれるみたいです」
「そうなんだね。それなら大切に暖炉を補修しないと」
「ありがとうございます」
俺はマイから了解を得て早速リフォームをする事にした。
先ずは土台の“入れ替え”からだ。
神界の砂を使ったコンクリートと神鋼で配筋して創った神砂コンクリートでこの家の基礎よりも強固なものを虚空庫内で創りそれを現在の基礎と入れ替え、防湿コンクリートを敷設する。
地下室も周辺の土壌を硬化・防水・防湿を施してから厚さ40センチの神砂コンクリートで100畳ほどの部屋を2つ、50畳の部屋を4つ、10畳の部屋が20ほど創り、コンクリートの周辺を10センチの厚さの神鋼で覆う。
これで少々神力を使っても感知される事はなくなるだろう。
下水配管は昔の基準なのだろう細いものだったので少し太めのものにし害獣が配管から上がってこないようにして入れ替え。
元の柱は10センチほどの木材でシロアリによる食害が見られたので太さ30センチの神木の柱に入れ替え。
当然シロアリは建物だけでなく敷地内は全て駆除しておく。
外壁も神界で採取した白い石材を柱に合わせて30センチほどの厚さのものに入れ替えて真空断熱材を施行し、窓を大きめにして屋根を葺き替える。
特に玄関ホールには大きなステンドグラスを設置した。
屋内の壁や床も神木に入れ替え、1階の広大な玄関ホールは吹き抜けで床は神石のタイルを敷き詰め、廊下や2階個室などは神糸で織り上げた絨毯を用いた。
家具や設備を総取り替えし、カーテンや絵画、彫刻などを設置する。
そして暖炉。
修復をした上で自動修復や防汚、自動洗浄、硬化などを付与。
するとマイの魔力が上乗せされたようでより美人さんに変貌を遂げ、バストもEカップはあろうかという嬉しい成長をした。
各部屋もエレンたちから聞いていた要望を盛り込み、家屋にも各種付与を行い完成だ。
見た目はあまり変わらないかもだけど、完全に新築と言って差し支えないだろう。
この間、半刻ほどなのでそれ程彼女らを待たせてはいない、かな?
「リフォーム終わったよ」
玄関の外で待っていてくれたエレン、ノルン、マヨルカ、タミレに声を掛ける。
彼女らは俺に気付かないのかポカンと口を半開きにして邸宅を見つめていた。
「エレン?ノルン?マヨルカ?タミレ?どうしたんだ?待たせすぎちゃったかな?」
「家が……」
「別な家になったのじゃ……」
「もしかして家の中も……?」
「家がウネウネ動いていた……」
「ああ、総取っ替えしたからね」
『相変わらず規格外(じゃ)(だわ)(よ)』
賞賛とは縁遠いため息混じりに彼女らは同じ言葉を紡いだのだった。
お読み下さり誠にありがとうございます。
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