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興味を持って頂きありがとうございます。




筆記試験が終わり、休憩時間を挟み魔法実技試験が始まった。

場所は大講堂から実技場へと移動した。

実技場はコロッセオの様な形をしていて頑丈そうな石造りとなっていた。

天井はなく、強力な結界が掛けられているとの事で多少強力な魔法を使っても会場が破壊されたり怪我をする事がないのだそうだ。


「さあ、魔法実技と剣技試験だ。人数が多いからどんどんいくぞ!」


この会場も主任試験官1人と副試験官5人体制の様だ。

主任試験官は自己紹介もせず、いきなり試験開始を宣言した。

俺たちは5つの列を作らされ、1人ずつ30メートルほど先にある標的に自分の得意な魔法を掛ける事になった。

魔法は攻撃魔法だけでなく支援魔法でも構わない様で、標的に魔法が掛かる事で魔法力が数値化されると言う仕組みになっている。

攻撃魔法により標的が壊れる事は滅多にないとの事で、受験生は気兼ねなく魔法を撃ってくれとの事だった。


「よし、1番から5番、標的に向かって魔法を放て!」


1番は皇女だと言うのに、その彼女に向かって命令口調と言うのは悪くない。

その中には当然、公太子である俺も含まれており試験を受ける者を平等に扱おうと言う思いがしっかりと伝わってくる。


「……(いにしえ)の盟約に基づき原初の炎を以って敵を撃ち払え!火球(ファイヤーボール)!」


真っ先に詠唱を口にし魔法を放ったのは皇女ラミルだ。

従者として選ばれたのであろう受験生はラミルの放つ魔法を見て小さく拍手を送っている。

鑑定では火魔法レベル2。

それなりに修練を積んできた事が分かるレベルだ。

しかも魔力をきちんと練って魔法の質も高めているのでそこら辺のレベル3……いわゆる中級魔法並みの威力があった。

火球が真っ直ぐ標的へと飛んでいき、次の瞬間、標的が炎に包まれた。


「よし165点!次っ!」

「はいっ!」


ラミルの従者もまた同じ詠唱を紡ぎ魔法を放つ。

わずかにラミルに劣る火球が標的に当たり標的が炎に包まれた。


「160点!」


俺は一応ポーズだけ取り人差し指を標的に向けて青白い光線を放った。

刹那、標的は蒸発し標的の後ろの石壁を焼いた。


「はっ?標的を破壊しただけでなく結界も……?信じられんが……400点だ!次っ!」


すると他の受験生から主任試験官に対して疑問点が投げかけられた。


「すみません!魔法実技の満点は200点だった筈では?」

「そうだ。通常なら200点満点だが、標的を破壊し結界まで貫いたものを200点にしたら1番は80点くらいになるが、お前はそれでも良いのか?」

「困ります……」

「それならばグダグダ文句を言うな!4番!」


エレンが水と風魔法を複合させたものを無詠唱で標的に放つ。

当然、標的の中心に穴が開き壁を穿った。


「標的の中心とは、魔法制御も精緻にできるのか……400点!次だ!」


次いでノルンが魔法を紡いだ。

無詠唱から放たれたものは青白い点。

それは標的に向かい触れた瞬間、標的は蒸発しそのまま結界を貫いた。

俺は多少は手を抜いたのだがノルンはいつもの感覚で魔法を放ったようだった。


「なっ……400点だっ!つ、次だ!」


マヨルカが皇女の立っていた場所に立つと、そのまま右手を上げて振り下ろした。


ドンッ


地響きがしたと思ったら標的が蒸発し実技場の床に穴が空いていた。


「はぁっ?床が……破壊された!?よ、400点!」

「えっ、7番タミレ、良いですか?」


タミレは初歩の石礫(ストーンバレット)を発動し、それを放つ。

当然無詠唱なのだが、その石礫は小指の先程の大きさに過ぎなかった。

石礫の魔法は基本、大きさと威力は相関関係にあるとされており、一般に小指ほどの大きさの場合、少しの痛みを与える程度のものだ。

だが、その磯礫は標的を貫き、結界を破り、壁を穿った。


「ただの石礫がどうやって……」

「威力は大きさではなく質量に依存するからですよ」


タミレはそう呟くと俺の側に戻ってきた。

そうなのだ。

タミレが放った石礫は小指の先ほどの大きさなのだが、質量は実に10トン。

超高密度のマグネターには遠く及ばないもののこの世界に存在しない高密度の石礫の直撃に耐えられるものなどある筈がない。


「……いや、3番から7番は400点!次、8番!」

「はい。流石リュウタ様だ……火球!」


アンティオコスもまた無詠唱。

だが、その火球は標的を焦がす程度だったが、これも実力を隠し威力をレベル6に抑えた結果だ。

それであっても受験生の枠組みには収まっておらず主任試験官を驚愕させるには十分だった。


「何なんだ今年の受験生は!無詠唱で魔法だ!?ーーしかも焦げ付かせるって……200点だ!9番!」


ただ9番以降は普通に詠唱し、威力も想定される範囲内だった様で主任試験官はホッとした面持ちで試験を無事終えた。


一方、筆記試験の解答を行なっている教室では、主任試験官代理となったニカラウスを中心に問題用紙を一つ一つ確認して点数を付ける準備をしていた。

今回は主任試験官と2人の副試験官が不正に加担していた事もあり、ニカラウスが採点を行い、残り2人がダブルチェックをする事にし、それをもう1人の教授が承認するという形を取る事になった。

やはり、一定の職位を持つ者が採点に関わらないと、後日、グレイオスから何か言われかねないからだ。

そこでアンティオコスは1人の教授室へと向かった。


「……という事があり、採点を教授にお願いしたく」

「ああ、分かった。アレグリオは以前から不正に手を染めているという噂が絶えなかったからな」

「ありがとうございます」


今回、ニカラウスが採点を依頼した教授は数理学科のディスマス・パパデウス。

人族としては身長がたかめの170センチほどあるが痩せ型で少し神経質そうな風貌をしている。

彼はカーリス教司祭の家系でありながら、教理と事象が噛み合わないと言うのが持論で、その流れから数理にのめり込んだという変わり者だ。

ニカラウスは学院内の調査を行い、こう言った不正を最も嫌い、尚且つグレイオスの息が掛かりにくい教授としてディスマスを選択したのだ。


採点を行う教室に向かうとそこには2人の副試験官がおり、机の上には解答用紙を回収した後、封をした回収箱が置かれていた。


「ディスマス教授、それでは封印を確認して開封をお願いします」

「封印……確認した。机の周辺に不審なもの……なし。それでは私も採点しようか。上位貴族の分を渡してくれ」

「えっと……ディスマス教授が採点、ですか?」

「そりゃあそうだろう。特に上位貴族に忖度する奴は少なくないからな」

「分かりました。それではお願いします」


ニカラウスはそういうと1番から10番までの解答用紙を渡し、残り3人で50枚ずつ150人の採点を始めた。


「1番は……皇女……382点か。悪くはない点数だが……主席をこれで取るには……2番の方が良いじゃないか!」


ディスマス教授は独り言を言いながら採点をしていく。


「2番、403点。えっ……3番、満点?ニカラウス君、ちょっと確認したいんだが」

「はい、何でしょうか」

「3番……リュウタ・カジ君はカンニングはしていないんだよな?」

「はい。確実にしていませんが点数は何点でしたか?」

「600点の満点だ……当然、この点数だからカンニングをしても取れる筈はないんだが……私の主神グラディウス様からの神託通りだ」


元々、点を取らせない問題という事もあり筆記が多くカンニングをしたとしても満点を取るのはほぼ無理なのだ。

それにも関わらず600点なのだからディスマス教授は数回採点をし直した。


「やはり満点だ。神託通りとは言え信じられん。ん、4番も満点?5番、6番、7番も満点じゃないか!」


ディスマス教授は頭を抱えて、


「合格発表前にこの5人は面談をする。8番は546点!?今年はとんでもない年になりそうだ……」


他の生徒たちは概ね例年通りの得点であり、それが余計に5人を際立たせる事になるのだった。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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