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興味を持って頂きありがとうございます。




学院の入学試験まで女性陣は試験勉強をした。

記憶力を爆上げする魔法などを使う事で試験範囲のテキスト類は全て理解し暗記する事ができた。

勉強だけでは息も詰まるので、息抜きに冒険者ギルドの依頼を受けたり、タミレは溜まっていたミグロホリクムの仕事をしていた。

俺は錬金や鍛治を行い、創りかけの楽器を完成させたり、またファンザの店で見たクリスタルガラスではなくソーダガラスによる板ガラスを量産していた。

厚さを変えたトリプルガラスの窓を創り、アルゴンガスを封入した高断熱ガラスを作りエクバタナのカジ邸の窓を総入れ替えも行ってみた。

他に寮で使うだろう食器類や寝具、家具、リネン類など、ファンザが創った家具を参考に草木を意匠に取り入れたデザインのものをそれぞれの人に合わせて創っていく。

そんな生活を送っているうちに学院の入学試験の日がやってきた。

受験生が多い事もあり、今日は貴族科の試験日であり、リビングで今日の試験についてリュウイチが俺たちに話しをしてくれていた。


「リュウタ。グレイオスが試験の時にちょっかいを出してくるようだ」

「確か、上位貴族は試験は形式だけだったのでは……?」


俺たちが受ける貴族科は男爵以上の子女が受けるのだが、帝家や公爵家、侯爵家の子女は基本、試験を受けるだけで合格する。

だが、試験の点数は合格発表時に公表して主席や次席を大々的に発表していた。

それにより試験で合格点を取らなければいけない伯爵家より下位の合格者の平均よりも点数が上でなければいけないと言う暗黙の了解があった。

過去には点数の取れない上位貴族の子女が入学を辞退すると言う“事件”も起きているのだ。


「ちょっかいと言うのは……具体的に言うと問題すり替えだな。他には答案用紙に細工するなどだ」

「あー、それは少し厄介ですね」

「一応、ニカラウス・ラーンジュを6人いる貴族科の副試験官の1人として潜り込ませたが……少なくとも主任試験官と副試験官2人はグレイオスの息が掛かっている者たちだ」


ニカラウス・ラーンジュというのは以前、リュウイチに渡していたホムンクルスであり、当日、学生として貴族科を受験するエピファノス侯爵家のアンティオコスもまたホムンクルスだ。

他にも虫型などを配置して皇帝グレイオスの企みを暴く事になっている。


「向こうも必死ですね……」

「グレイオスも面子を潰されているからな。手の込んだ意趣返しといった感じだな」

「これが帝国の皇帝だなんて……戦争をする際もあまり考えないで始めそうで……」


エレンが俺とリュウイチの会話を聞いてボソッと感想を漏らす。


「実際に皇帝への求心力を高めるために彼奴は戦争をしたがるんだよ……」

「父上も苦労しているんですね」

「あぁ……大きな赤ちゃんのお守りをしている感じだ」


リュウイチの言葉に皆が苦笑する。

特にマイコが笑いを堪えるのに必死だ。


「まぁ。今日はこちら側も最新の注意を払うから、特にリュウタは気をつけるんだぞ」

「分かってるよ」

「エレンさん、ノルンさん、マヨルカさん、タミレさんも気をつけるんだぞ」

「はい。カジ家の名を使わせて貰うのですから上位で合格できるように頑張ります!」

「人族の試験で負けるのは癪じゃからな」

「皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!」

「レマイオスの為にも上位合格を目指します」


俺たちは上位合格を互いに誓い、セレーコス学院へと馬車で向かうのだった。


今回、貴族科の受験生は160人ほど。

このうち合格が確定している侯爵家以上の子女は俺たち5人とアンティオコスを含めて10人だ。

貴族科は30名定員なので実質20人という定員を150人、7.5倍と言う狭き門をくぐり抜ける必要があるのだから合格する者は基本優秀なのだ。

そんな合格者の平均点以上となると当然ながら高得点が要求される。


「私たちは結局どれくらい点数を取れば良いの?」

「貴族科の試験は数理学、人族語、古代ローマニア語、帝国歴史、カーリス教学、魔法理論の座学6科目と魔法実技、剣術の実技2科目の計8科目で、座学は1科目100点で例年だと6科目の平均点が320点くらい。実技が2科目で1科目200点で平均が2科目で240点の560点前後になるかな」

「560点と言うのは意外と低そうに感じるのじゃが」

「確か昨年の最高点が638点だったから受験生にはそれ程大きな学力差はないみたいなんだけどね」

「638点……セレーコス学院のテストはレマイオスの学院とは違って点を取らせない試験と言うのは本当なんですね」

「そうだね。大陸随一の学院だという変なプライドがあるからそうなるんだよな。実際にセレーコス学院の最上級学年でも習わないような問題が出るからね」


マヨルカは元々侍女だった事もあり、俺と出会うまでは学院に進学すると言う選択肢のない生活だった。

それ故に実技は問題ないだろうが、座学については4人の中で最も学力が低い。

彼女は試験までの期間、集中して勉強に打ち込んだお陰で最近では模擬試験でも高得点を取れる様になったのだが俺たちの会話を聞いて顔色から血の気がひいた様に青白くなっていた。


「……私、自信ないです」

「マヨルカ、大丈夫だよ。テキスト類は全て暗記しただろ?そこまでしているのって俺らくらいだから」


実際に試験範囲のテキストは膨大な量で、そう言った事もあって小さい頃から家庭教師を付けて勉強している子どもたちが集まっているにも関わらず平均点は低いのだ。

そんなテキストを丸暗記しているマヨルカが平均点割れする筈がない。


「そうかな……そうだよね!」

「そうよ、マヨルカ!みんなで受かろうね!」

「そうじゃ。受かろうな!」

「リュウタと楽しい学院生活を送るんだからね!」


マヨルカもすっかり自信を取り戻し、試験に臨む事ができた。

俺たちは馬車を降りて、試験会場となる大講堂へと向かう。

160人が一斉に試験を受けられるとなると通常の教室では狭いからだ。

大講堂には3人掛け用の椅子と机が横に5つ並べられており、それが後ろに後ろに行くにつれて高くなるように20段置かれていた。

試験を受ける生徒はその机の端に座る事になっており、1番は右端の座席、10番は左端となっているので最大200人まで試験を受けられる様になっていた。

これだけ広いのだから試験官が7人いるのも頷けるだろう。

俺は大講堂に十数体の昆虫型ホムンクルスを事前に放っているが、これに教員としてニカラウスが加わりグレイオスによる嫌がらせを排除させる事になっている。

昆虫型とニカラウスは感覚共有をさせている事もあり主任試験官と残りの副試験官が何かをしてもすぐに分かるだろう。


「あっ、席はみんな近いみたい」

「受験番号が5人並んでいるからね」


俺の受験番号は3番で、エレンが4番、ノルン、マヨルカ、タミレがそれぞれ5番、6番、7番となっていた。

1番は第2皇女であるラミルであり、2番も女性でラミルの従者として選ばれたであろう受験生だ。

ちなみに8番はアンティオコスで9番と10番は他の侯爵家の子女のようだ。

集まった生徒は自分の番号が貼られた座席に着座し試験が始まるまで静かにしていた。

何故だか俺の座った机には何やら記号が書かれていたり何かが貼り付けてあったので俺たちが使う机に洗浄と復元の神術を使い綺麗な机にした。

恐らくカンニングをしたと言う証拠として使う為だろう。

周囲の机なども同様の処置をしていたら7人の男たちが大講堂に入って来て講堂前方にある教壇に立った。

そして中央に立つ男が、


「私がこの講堂の主任試験官であるアレグリオ・ジャクリオ教授だ」


アレグリオが魔道具を使い広い大講堂でも声が煩く響く程の音量で自己紹介を始めた。

そこにニカラウスから念話で〈9番の受験生は彼の息子です。皆様の後ろに座る受験生はグレイオスの息がかかるものたちです〉と情報が入ってきた。


「不正は許さん!カンニングが発覚したら即退場で不合格になるからなっ!それでは問題用紙を配る。時間が来るまで伏せておく様に!」


そう言うと副試験官が問題用紙を配り始めた。

ニカラウスが1番右端のラミル皇女の列の受験生に問題用紙を配り始めた。

それと同時に、1つ目の机と2つ目の机の間を担当する副試験官、皇女の侍女と俺の列の受験生に問題用紙を配り始める。

同じように残り4人の副試験官が問題用紙を配り始めたのだが俺とエレンとノルンの列はグレイオスの息のかかった人物だ。

俺は問題用紙を受け取ると即座に鑑定を行い、問題用紙自体には何も手を加えられていない事を確認する。

全員に問題用紙が配られたのか、アレグリオが試験開始を告げた。

受験生が一斉に問題用紙を返すと、副試験官の1人から試験開始を止める声が聞こえた。

ニカラウスだ。

ニカラウスが急いで俺とエレンの所に走り寄ってきて問題用紙を読み始めた。


「教授!2人の問題用紙が他の生徒のと違います!」

「……至急、予備の問題用紙と交換しなさい」


アレグリオは小さく舌打ちをして予備の問題用紙を俺とエレンの所に持って来た。

そして、


「1問目の問題は数理学で文章題となっています。人族語の問題になっている人は他にいますか?」


と大きな声で言うと、予想通りにノルン、マヨルカそしてタミレも手を挙げた。

俺たちを狙い撃ちにしてテストの点数を下げようとしたのだろう。

ノルンたちの問題用紙も正しいものに取り替え、試験が再開した。

問題自体はテキストに沿って出されているが4割ほどは重箱の隅を突っつくような問題だったが俺たちはテキストなど一通り丸暗記をしているので簡単に解き進められる。

数理学を半ば解き進めていたら、ニカラウスが走って来て俺の後ろの生徒の横に立った。


「13番受験生。その右手に持つ紙を丸めた物を出しなさい!」

「えっ……これは……」

「いいから出しなさい!」


13番受験生は渋々手にしていた紙をニカラウスに渡した。

それを広げて見ているとアレグリオが壇上から降りてニカラウスの読んでいる紙を取り上げようとした。


「教授。これには問題の解答が書かれておりますので明確な不正を行った証拠です」

「ニカラウス君だったかな。良いからそれを渡しなさい」

「いえ。不正を発見した試験官がそれを適切に管理して試験委員会で提出する事になっていますので私が管理させて頂きます。それと……」


ニカラウスは言葉を止めると、14番、15番、16番、17番からも次々と丸めた紙を没収した。


「教授、彼らも不正をしていたようです。5人の退場を宣告してください」

「ぐっ……13番から17番退場しなさい」

「待ってください!俺は教授に言われた通りにしていただけではないですか!」

「言われた通り、とはどういった事ですか?」


13番受験生の言葉を受けてニカラウスの横に戻り質問をした。


「俺は3番……リュウタ・カジ様が不正を行った様に見せるためにその紙を前の机に向かって投げる様に教授から依頼されたんだ!それなのに退場になるのは納得できないです!」

「俺もだ!」

「私もよ」

「僕もだ」

「私も同じです」

「……教授、この5人は証人として保護を申請します。今、試験委員会に通知しましたので教授は今回の大規模不正行為の首謀者として拘束させて頂きます。拘束(バインド)

「何をする!教授の俺に楯突くと学院に居られなくなるぞ!」

「えー、試験で不正を働いた教員は学院を懲戒解雇になり帝国の教育機関では2度と働けなくなるんですが」


何かしらの通知方法があったのだろう。

ものの数分で試験委員会の委員たちがやって来てアレグリオ及び13番から17番の学生を連れて行った。

そして、その際にニカラウスを主任試験官代理に指名し、試験続行を指示した。

ニカラウスは副試験官を全員集めて、簡単に身体検査をすると2人の副試験官から先ほどの受験生と同様の物が見つかり、彼らも拘束して退室となった。


「主任試験官代理のニカラウスです。お騒がせ致しました。試験再開です。試験終了は半刻ほど延長いたします。今後も不正行為が見つかりましたら退室ですので気をつけてください」


副試験官が3人しかいないのだが、ニカラウスが有能だった事もありその後は特に不正は行われなかった。

実際は昆虫型ホムンクルスを駆使することにより監視を強化していた事で不正をしようとする学生の横に移動し不正をさせなかったに過ぎないのだが。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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