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興味を持って頂きありがとうございます。




翌朝、スサ別邸の中庭には飛空船が置かれていた。

全長52メートルもの巨大な物体がいきなり現れただけで驚きだというのに、この物体の中に人が入ろうというのだ。

この世界には飛空船と言うものは存在していない。

飛空船がどう言ったものなのか何となく察しがついているエレンたちですら驚きの表情を浮かべている。

エレンたちでそうなのだから、別邸で働く者たちの中には「魔獣が中庭に〜!」と言って腰を抜かす者も複数いた程の存在感があった。


「何これ……」

「昨日までは何も置かれていなかった筈じゃが」

「先程、庭師の方が魔獣が〜って言ってましたよね」

「これって……飛行船?でも……」

「流石、タミレは博識だね。ただ、これには飛行船の様なガス袋がないだろ?これは飛空船と言うんだよ」


ずんぐりとした胴体に短めの主翼、そして後部には尾翼が取り付けられている。

前面は神玉石を加工したガラスが貼られ、その奥には操縦席があった。

胴体中央部の外壁が切り取られた様に開口し、その外壁がそのままタラップとなり地面に接していた。


「さぁ、侍女の皆さん、騎士の皆さんも乗り込んで奥に進んでください」


飛空船の中は、操縦室、エレン、ノルン、マヨルカ、タミレそして俺が主に座る10人定員の主賓室、そして侍女や騎士たちが座る控え室に別れている。

何より主賓室には完成したばかりの楽器が並べられており、ちょっとしたコンサートホールの様になっている。

当然、トイレもそれぞれ男女別に用意してある。

侍女や騎士たちは各々の手荷物を持ち控え室に向かっていく。

それは別邸で働く者たちの目にはあたかも巨大な魔獣の胃袋に入っていく様に見えており「あぁ……」とか言いながら気絶する者も出始めた。

侍女や騎士たちは今まで俺と行動してきていたからこそ恐る恐るではあるが飛空船に乗り込んでくれたのだ。


「俺たちも乗り込もうか」

「え、えぇ……」

「うー龍種のお腹に飲み込まれる様な気分じゃ」

「緊張、します……」

「タラップは収納できるんだ……細部までしっかりと造り込んでいて……」


タミレだけは他の3人とは少し違った見方をしている様だ。


「それじゃあ、別邸の管理を引き続きお願いします」

「は、はい!お任せください!」


俺は別邸の人たちに別れを告げて飛空船の中に入り込むとタラップが上がっていき完全に外壁の一部と化した。

エレンたちは主賓室のソファーに着座し、俺は前方の操縦席に向かい操縦桿を握る。

多くの計器が作動し、飛空船に問題がない事を意味する緑色に点灯する。


「計器、オールグリーン!」


俺は声に出して計器を一つ一つ確認し、飛空船に取り付けられている映像カメラのスイッチを入れる。

各室の前面には200インチほどのスクリーンがあり、右半分は操縦席から見える風景を、左半分は飛空船の底から見える風景を映し出していた。


『それでは飛空船が飛び立ちます』


艇内にアナウンスを流す。

飛行機とは異なり艇内は浮遊感や加速感など全く感じない様になっているのでシートベルトの着用は必要ない。

まぁ、一応は救命胴衣やシートベルト、救命ボートなどは完備しているんだけどね。


『エクバタナに到着予定はおよそ一時間半後。エクバタナのカジ家別邸中庭に着陸予定です』


前方左半分のスクリーンには飛空船が急上昇している様子が映っており、その関係で急上昇しているのが良く分かる。

タミレは置いてあるピアノに興味を惹かれながらも久しぶりの空の旅に対する興味の方が勝った様だ。


「街がどんどん小さくなっていく……」

「これは妾が龍の時よりも早い上昇じゃな……」

「もう人が見えなくなっています」

「これって高度は数千メートル?いや、もっと上……?」


主賓室は操縦室の後方にあり、声が聞こえるようになっているので俺もそのまま会話に入る。

もちろん俺の声は主賓室にのみ聞こえるようにしてある。


『最終的には高度1万メートルまで上昇して時速300キロほどでエクバタナに向かうんだよ』

「時速300キロって……随分と遅くない?」


この世界だと早馬でさえ時速50キロ程度でしかも条件が限られていた。

しかしタミレは飛行機の知識があるのだろう。

ジェット旅客機だと時速800キロを超え、ターボプロップ機でさえ時速500キロを上回る。

それ故に時速300キロを遅いと評価したのだ。


『最高時速はマッハ10だけど、正直必要ない速さだよね。この世界なら時速300キロでも異常な速さになるよ』

「マッハ10……」

「マッハって?」

『とっても速いって意味の単位だよ』

「そうなんだ」


タミレの驚きに反応してエレンが質問してきたが「とっても速い」と言う事は理解できた様だ。


「さあ、目標高度に達したから300キロで移動開始だ!」


俺は独言ながら気合を入れて魔導ジェットエンジンを始動させた。

1分もしないうちに時速300キロに達しているのだが、現在、この高度は雲一つない快晴なのであまり速度が上がった感じがしない。

地上を映し出している映像も高度1万メートルまで上がるとゆっくり移動している様にしか感じない上に飛空船内は加速感がないのだから余計に速度を感じないだろう。

俺は自動操縦に切り替えて、操縦室の後ろにある主賓室に移った。


「どうだい、乗り心地は?」

「リビングで寛いでいるのとそう変わらないわ」

「この焼き菓子は最高に美味なのじゃ」

「気が付いたらテーブルの上にお菓子やお茶があってびっくりしました!」

「この飛空船、本当に1万メートル上空を飛んでいるのですか?耳詰まりもしないし……」


流石タミレは飛行機の記憶があるだけあって着眼点が違う。


「そりゃあ、船内は飛空船とは別次元に存在しているからね」

「べ、別次元?」

「そう。別次元。だから飛空船が墜落したとしても俺たちはかすり傷一つ負わないんだよ」

「はあ……深く考えちゃダメね」

「そうよ。リュウタと一緒にいるなら深く考えちゃダメ」

「そうじゃ。深く考えるとストレスになるぞ?」

「そうですよ。あるがままに受け入れるのが1番です!」


タミレは深くため息を吐き、テーブルの上のお茶をグイっと飲み干した。

今、ここにいる侍女はマヨルカの部下の1人とタミレに付き添っているテアの2人だ。

テアはタミレがお茶を飲み干すのを見て再びティーカップを紅茶で満たす。

それを見たタミレはもう一度一気に飲み干して、ふーっともう一度ため息を吐いた。


「リュウタ、これ以外にも何か造っていたりするの?」

「これ以外に創ったもの?たくさんあり過ぎて……取り敢えず大陸間通信網はもう少しで完成するかな」

「大陸間通信網……」

「ホムンクルスたちを配備してね。情報や物流を瞬時に行える様にするんだよ」

「通信は分かるけど、物流をどうやって瞬時に?」

「それは皆にも渡している虚空庫を使うんだよ」

「虚空庫を?」

「ああ、虚空庫間でモノのやり取りができるんだよ。例え1000キロ離れていてもね」

「物流の革命だわ……」


俺とタミレの話はエレンたちには難しすぎる様で取り敢えず頷いている様だった。

そして彼女らは置いてある楽器に興味が移り、特にタミレはピアノを弾きだした。

15年ぶりのピアノという事もあって所々ミスタッチはあるものの彼女が転生前に良く弾いていた曲を吸う曲弾きながら涙を流す。


「ふふ。ピアノをまた弾ける様になるなんて思ってもみなかったわ……」


タミレが何故泣いているのかエレン、ノルン、マヨルカが窺い知る事はできないのだが、彼女が悲しんで泣いているのではない事を察して静かにピアノの音色に耳を傾けていた。

そうこうしているうちにポイントに到着した様だ。


『目的地ポイントに到着致しました』


飛空船のシステムがエクバタナ到着を知らせてくれた。


「それじゃあ、操縦室に戻るよ」


システムの案内を聞いて俺は席を立ち、操縦室にある操縦席に座り高度1万メートルから降下を始める。

画像からはエクバタナのカジ家別邸がどんどん大きくなっていくのが見え、中庭には数人の人影が見えた。

そして、地上へとゆっくりと到着させた。


『エクバタナに到着しました。下船準備をお願いします』


船内にアナウンスを流し、飛空船の側壁中央部が再びタラップへと変化していく。

先に侍女や騎士たちが降り、タミレ、マヨルカ、ノルンそしてエレンと俺が降りていく。


「ただいま」

「お帰り。リュウタ……」


俺は初めて会う自分の母親であるマイコ・カジと抱き合いそして軽く頬にキスをした。

15年前、俺はマイコから生まれ育ててもらったと言う記憶があるが実際は初めて会ったので少し照れがあった。

そして180センチはあろう1人の男性が俺の前に立った。


「父上、到着致しました」

「1年ぶりか……立派になったものだ」


この世界の父親であるリュウイチ・カジと強くハグを行うとリュウイチは俺の背中を両手でバンバンと2回叩いた。


「この女性たちがリュウタの婚約者たちか」

「はい。俺の横に立っているのがエレン・バクトゥリア、次に帝王種の飛龍であるノルン・カジ、マヨルカ、最後にタミレ・レマイオスです」


リュウイチは一人ひとりの名前を呟きつつ、先程の破顔した様な笑顔から別人の様に真剣な表情となる。


「私はリュウタの父親のリュウイチ・カジ、そして我が妻のマイコ・カジだ」


声の質も少し硬い感じだが威圧する様なものではなかった。

そんなリュウイチを見てエレンたちも居住まいを正し、


「初めまして。エレン・バクトゥリアです」

「妾はノルンじゃ」

「初めまして。マヨルカと申します」

「お初にお目に掛かります。タミレと申します」


彼女たちは長年一緒に暮らしていたかの様に挨拶をする。

4人に諍いなどがない事が分かったのかリュウイチは再び破顔した。


「リュウタも良い女性たちと縁を結べたな。そして……こちらがあの駄帝に目を付けられた女性か……安心しなさい。必ずカジ家が護って見せるよ」

「父上、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


エレンだけでなくノルン、マヨルカそしてタミレも頭を下げる。

そして自己紹介を終えるとリュウイチに先導されて応接室へと向かうのだった。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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