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003

興味を持って頂きありがとうございます。




「お主の修行は次の段階に移ろう!」

「やった!それではようやく槌を振えるんですね?」

「バカモン!槌を振るうのは1000年は早い!」


今まで放置してくれていた天目師匠から理不尽なゲンコツを食らってしまった。

俺は両手で頭を押さえて痛みを堪えていた。

そして師匠の言う1000年は単なる言葉のあやかと思ったのだが、実際には1000年どころの話ではなく槌を手にするまでに5万年以上……すなわち5000万年分もの修行を積み重ねる事になった。


「それでは何をすれば……」

「鍛治のためには目利きが必要じゃ。粗悪な材料で良い物が作れるか?」

「それは……難しそうですね」

「そうじゃろ。そこでお主は鑑定というものができるように修練するんじゃ!」

「はいっ!」

「そこで此奴を紹介する!」


何だか既視感(デジャヴ)を覚えるやり取りだが、気が付くと天目師匠の横にヒゲモジャで腰が少し曲がった男性が立っていた。


「今日から素材鑑定をお前に伝授する石土琵古神(いわつちびこのかみ)じゃ」

「わしゃあ石土琵古神(いわつちびこのかみ)……琵古師匠とでも言ってくれぇ」

「はいっ!……て、何をすれば良いんでしょうか?」

「先ずはこれを良く観察するんじゃぁ。隈なく観察してこれがどんなものか理解できるようになるのじゃぁ」


そう言うと琵古師匠は1つの球体を俺に渡した。

天目師匠はと言うといつの間にか居なくなっていた。


「天目師匠……また放置っすか……」

「余計な事は考えなくて良いんじゃよぉ」


琵古師匠の力の抜けるような喋り方に脱力しながら渡された球体を見てみた。

鈍い白銀色に輝くそれは表面に小さな傷一つなく滑らかな手触りをした金属と思われるものだ。


「いいかぁ、目に力を集めてその力を物体に向けるようにするんじゃぁ。そして1日の半分はこの書物を全て暗記する時間にするのじゃぞおぉぉ」


そう言うと辞典のように分厚い書籍を100冊ほど俺の前に積み重ねた。


「これはあらゆる素材についてその構造から特性などを網羅したものじゃぁ。一流の鍛治師はこれをしっかりと覚えておく必要があるらしいぃ」

「……天目師匠も全て覚えているんでしょうか?」

「……わしゃ覚えておるがのぉ、天目はどうかのぉ」

「(じー)……天目師匠は?」

「(汗)……どうかのぉ」


琵古師匠は何故だか視線を外したのだが俺は言われた通り観察と暗記をする事にした。

多分、あの天目師匠は覚えていないんじゃないか、と思うのだが俺は取り敢えず与えられた事をするのみ。

半日は謎の物体をひたすら観察。


じーーーーーーーーーー


毎日毎日観察しているが何が変わるでもなく半年が過ぎていく

しかし、半年を過ぎた頃に何となくだが滑らかな筈の表面に細かな凹凸が見えるような気がしてきた。


「琵古師匠っ!物体の表面に何だか凹凸がみえるような感じがします!」

「ウソっ!?……そ、そうか。それは素晴らしいぃのぉぉ」

「もしかしていま「ウソ」とか言いました?」

「そんな事は言っておらん?もっとしっかりと見ていくとよりいろんな事が分かってくるぞぉぉ」

「そこは何で「?」になるんですか!」

「……で、暗記は進んでおるかのぉ」

「(何だか露骨に話を変えられたような……)はい、ようやく1冊目を終えようと言う所です!」

「何っ?もう1冊目が終わる!?……まぁまぁだなぁ」

「……頑張ります」


もしかして琵古師匠もこの本を全部覚えていないような疑惑が芽生えてきたが、取り敢えずノルマをこなしていこう。

球体は5年目になると中の構造だけでなく分子構造まで把握できるようになった。

書籍も今では年に10冊と言うペースで覚えられるようになり、現在ようやく20冊目を覚え終わる所だった。

そしていつもの様に球体を見つめていると、


物質名 ミスリル合金

概 要 鉄鋼70%にミスリル銀28%、亜鉛2%を混ぜた合金


と言うのが球体の横に浮かび上がって来た。

もう少しじっと見ていると


詳 細 鉄鋼とミスリル銀を合わせる際に、亜鉛を加える事でより親和性が上がり硬度と粘度が上がる。また魔力を通しやすくなりこの合金で剣を作る事で属性剣を作る事ができるようになる。


「凄っ!これって本に書かれていた内容をベースになっているじゃないか。と言う事は中まで見通せる眼力と本を暗記する事によって鑑定ができるようになるって事か!」


俺は目に見える成果があった事で本を暗記する速度も上がり4年後には100冊全ての暗記を終えた。

もちろん、球体に関しては内部のより詳細な構造も分かるようになり、実際は4層構造である事も分かった。


「琵古師匠っ!無事に暗記を終えました〜っ!」

「終わった!?……やっと終わったのかぁ。それじゃあ最終試験をするかのぉ」


琵古師匠の顔から何やら脂汗が滲んでいるように見え「焦り」と言う言葉が見えていたりする。

そして師匠は「これは分からんじゃろぉ」と小さく呟いたが、俺にははっきりと聞こえていた。

目の前には5つの塊が置かれ、それを鑑定せよと言ってきた。


「琵古師匠、1つ目は神鋼。神界でしか採掘されない金属。神力の通りが良く強度、粘度は鉱物の中でも最強度であるが重量は鉄鋼の1/10」

「せ、正解じゃぁ……次」

「2つ目は神魔鋼。これも神界でしか採掘されない液状金属。神力の通りが良く液状だけど切断するには相当の神力を加えないと難しいもの。用途は多岐に渡る」

「むぐ……」


3つ目は見た目は透明でクリスタルに近い輝きを持つものだが、内包するモノが全く違う。


「3つ目いっても良いですか?3つ目は神玉石。これも神界でしか採掘されないもので宝玉の1つ。透明度が高く神力を貯蔵する事ができ、神力の下位互換である魔力や電気の絶縁体。神界でも希少価値が高く宝玉の中でも最高ランク」


「ぐぅ……次、次じゃぁ」


ふふふ。3つ目で引っ掛けようとしたのに正答を出されて本気で悔しがっている。

そして4つ目は光沢のある……布だ。


「4つ目、これは神布。神界樹の葉を食べるシルクワームから採れる糸から作った布。布の重さを感じさせないだけでなく、神力を通す事で神鋼に次ぐ強度を誇る」

「正解じゃぁ……だが……さ、最後は、絶対に答えられないだろう、て……」


さて、5つ目。

コップの中に何やら液体が入っている。

コップ自体は……神玉石で出来ているって無駄に贅沢だな、おいっ!


「琵古師匠、これは神玉石で出来ているコップの中に超神水が入っています。神界の水は全て神水で、その中でも神峰の麓にある特定の領域で採取される地下水を超神水と言います。神峰に降り注いだ雨が……」

「もう良い……よぉ〜できた!さすが我が弟子じゃぁ(ちっ)。お主を我が第一の弟子そして愛息とし寵愛を与えよぅ。人間界に向かう際には色々手土産も用意しておくからのぉ」


「ちっ」て言ったよ、「ちっ」て……

それだけ当てられたのが悔しかったようだが琵古師匠がそう言うと俺の身体が仄かに光る。


「これでお主の知識と鑑定力は常に損なわれる事はなくなったぞぉ。他に様々な書物を贈ろう。天目に預けておくでなぁ」

「琵古師匠、ありがとうございます!」

「お主も2つ目の試練を突破できたようじゃの」

「天目師匠!?」


師弟の感動すべきシーンなのに、いつの間にか天目師匠が俺の前に立って俺と琵古師匠との会話に割り込んできた。


「鑑定ができるようになったならある程度の神力も備わったじゃろうて。次は神力と神術の習得じゃあ!」

「えっっと、神術?」

「そう、神術じゃ。そしてお主に神術を教えるのは月読命(つくよみのみこと)様じゃ!」


俺は鍛治師を希望していたのにどんどん道が逸れているような気が……

しかも、この神術習得に500年も掛かってしまった。

これにより神力が扱えるようになり最上級レベルの虚空庫というスキルも手に入れる事になった。

この虚空庫は全てのモノを収納する事が可能で、俺がモノと認識すれば生き物も収納できるという優れものだ。

しかも時間操作や虚空庫内操作、物体コピーなども可能。

一旦収納すれば、使用して減ったとしても翌日には元の数量に回復しているチートすぎるものだ。

月読師匠からも寵愛と様々な神具をもらい、次に剣術の神、体術の神、弓術、棒術、槍術、盾術……と様々な神々から武術を習得し寵愛と俺専用の武具を受ける。

神力が扱えるようになった事が関係するのか1柱の神から学ぶ期間が徐々に短くなっていった。

鍛治師たる者、その道のエキスパートでなければ良いものが作れないとかなんとか言われ、武術だけでなく料理や木工、建築、農耕、造船、彫金や創薬、調剤、錬金術など次々と修練を受ける事になった。

そして洋の東西の垣根を越えて8000を超える師匠から寵愛や多くの卒業記念品?を貰い、漸く念願の槌を手にする事になった。


「資格マニアって言われてはいたけど……8000というのも我ながら凄いな」


そんな事を呟いしているがまだ本命のスキルを得ていない。

俺の虚空庫内は多くの師匠からのお祝い品として様々な素材、原材料、食材、食糧、調味料、道具、建材などなどが大量に納められ、しかも琵古師匠から多種多様の鍛治素材を大量に貰ったのだからこれで満足しても良いのだろうが……俺は天目師匠に直談判する事にした。


「天目師匠、次こそは、次こそは鍛治を!」

「そうじゃな。もうそろそろ教えても良かろう」

「えっ?良いんですか?」


何せ、今までこのやり取りを8000回以上繰り返してきたのだから、鍛治に進めると言われれば耳を疑うのも仕方がない事だろう。

俺は思わず頬をつねった。


「痛い……」

「何、お主は鍛治をしたくないのか?」

「いえ!是非ご教授お願いします!」

「よし。それではお手本を見せてやろうしっかりとその目蓋に焼き付けるのじゃ!」


天目師匠はそう言うと炉に手を翳し、火力を高めた。

そして槌を手にして一振りの刀を打ち始めた。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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