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興味を持って頂きありがとうございます。




帝国バビリュニア領領都スサ。

帝都エクバタナの南、350キロ離れた位置にある街であり、帝国第2位の人口を誇る。

農業にも力を入れており、スサを囲む城壁は農地をも囲っている事もあり長大だ。

その割にはスサへの門は東西南北しかない事もあり、入都まで随分と長い列を成していた。


「それでは貴族門に向かいます」


御者台からマイクを通して車内に連絡が入った。

馬車は長蛇と化していた馬車の列の横を走って行く。

列が整然としているのは衛士たちが馬車の誘導を行なっているからであり、その衛士が馬車の団旗に気付いて貴族門に誘導してくれているのだ。

馬車の側面の扉にはエレン騎士団の団旗とバクトゥーリア王国の国旗が並んで描かれていた。

バクトゥーリアの国旗だけだと人族優位主義国なだけあり、ペルセリスで受けたような理不尽な差別を受けかねない。

それに対して、団旗の持つ力は絶大だ。

帝国最強のSランクパーティーの団旗はギルドを通して各支部に伝えられており、当然の事ながらそれは領主や衛士たちにも連絡が行く。

帝国侯爵位と言う貴族の中でも上位貴族として遇すべき相手なのだから、いくら帝国が亜人と呼ぶ国の騎士団であっても粗相は許されないのだ。

複雑な思いで団旗を見つめる衛士たちを尻目に馬車は貴族門へと進み、問題なく入都できた。


「凄いわ……他国の馬車は普通ここまでスムーズに入都できないもの」


タミレはスサに来たことがあったのだろう。

きっとスムーズに入都できた理由も機密事項だと考えているのかその事に付いて問う事はなかった。

馬車は貴族街の中でもとりわけ大きな邸宅の前に停車した。

敷地は高い石壁で覆われており、正門もまた重厚な格子模様の大きく両開きになる鋼鉄製の門扉があった。

正門には2人の衛士が立っているのだが、領都の衛士よりも立派な装備である事が一目で分かる。


「何これ……貴族も貴族、大貴族じゃない!」


タミレはその荘厳な佇まいの門扉に驚く。

基本、貴族邸は門扉が家格を表すので、リュウタの家がどの程度の位階なのかその門扉を見て判断したのだ。


「お帰りなさいませ、リュウタ様」


団旗を見て判断したのだろう、衛兵が走り寄ってきた。

俺は馬車のドアを開けて、


「お疲れ様。留守の邸宅を護ってくれてありがとう」

「滅相もございません。それでは御者の方に説明させていただきますのでどうぞそのまま馬車の中でお待ちください」

「ああ、宜しく頼む」


そんなやり取りを見てタミレは、


「リュウタの家名は……これ位は機密事項じゃないでしょ?」

「ほら、門扉に紋章があるから分かるんじゃないか?」


俺は敢えて質問に対して質問で返した。

門扉には槌と剣がクロスしており中央にはテンモク神が描かれている紋章が描かれていた。


「槌……?ドワーフ……カジ家?」

「そう。良く分かったね。俺はリュウタ・カジ。カジ家公太子であり、個人としても帝国侯爵位を叙爵しているよ」

「カジ家……はぁ、何となく理解できたわ」

「そうかい?それなら話は早いね。当然家の中も」

「機密事項ね……面倒だけど安心だわ」

「そう言って貰えると嬉しいよ」


馬車は正門をくぐり、数分馬車で進んだ玄関前に到着した。

この邸宅は帝都により近いと言う事もあってペルセリスの邸宅より大きく敷地も広い。

俺たちは執事長とメイドたちに出迎えられそのまま応接室に通された。

アンドゴラスたち騎士とマヨルカ以外の侍女そして御者たちは使用人用の控室に通されているので、応接室には俺、エレン、ノルン、マヨルカ、セバスティオヌ、タミレとその侍女テアがいる。


「私が住んでいる王城より快適よ」

「それは私も同意するわ」


玄関からこの応接室までの通路を進む間、タミレは始終ため息を吐いていた。

何せエルダードワーフの技術の粋が凝縮されている邸宅だ。

温度、湿度、照度、臭度、空気循環……全てにおいて快適な環境なのだ。

それだけではない。

置かれている調度品は華美ではないが一流の物で揃えられており、絨毯一つとっても歩いていてその良さが分かる。

それ故にタミレの言葉にエレンが肯定する。

レマイオス王国の王城、バクトゥーリア王国の王城は共に快適度がカジ家別邸に劣ると言うのだ。


「王城は基本、住居性能よりも見た目重視だからね」

「それはそうなんだけど……」


俺の言葉をエレンは肯定するものの納得してのものではない。

ただ、俺にとってはそんな評価はどうでも良く、2〜3日滞在したらいよいよ帝都エクバタナへと向かう。

そのエクバタナでどう動くかに付いてじっくり話しておきたいのだ。

何せ馬車での移動中だと食事の準備などしなければいけない事が多く、また、創っておきたかったものが幾つかありそれもあって話し合いが中途半端だったのだ。

一つは念話の強力版を。

マーナと試してはいたのだが、念話だと十数キロが限度。

ギルド支部間のような長距離通信を可能にするにはある程度、機材を大きくする必要があったのだがこれは魔力を使っているから。

それなら神玉石を使えば距離を飛躍的に伸ばせるんじゃないかと考えそれを試していた。

もう一つはせっかくいろいろ創れるようになったんだから、ドローンみたいなのを作ろうかな。

神玉石の小さいのがたっぷりあるからそれを使って、映像や音声を飛ばせるように……。

簡易鑑定や自衛機能なんかも欲しいよな……。

大きさや稼働範囲なんかも考えながら試行錯誤をして鳥型から昆虫型、小動物型など様々な種類を虚空庫内で創っていく。

……と言う完全に自分の都合によって話し合いが今になった次第だ。


「もう一度確認するが護衛はエクバタナのレマイオス王国大使館までで良いな?」

「そうなんだけど……学院に入学までとかは無理ですか?」

「大使館なら自国の騎士たちがいるんじゃないのか?」

「その自国の兵に命を狙われたので……」

「そうなると期間も長いしいくら王族でも報酬を支払うのが大変だぞ?」


俺たちはSランクパーティー。

依頼は原則冒険者ギルドを通して受けるのだが、費用設定はギルドの提示する金額に準拠している。

ある程度の費用設定の裁量はこちらにもあるが、下手に下げると下位ランクの報酬額にマイナスの影響を与えてしまうから限度というものがある。


「友人価格は……」

「誰の友人なの?」


タミレの言葉にエレンが反応する。

油断も隙もないんだから、とでも言いたげな視線をタミレに向けるがタミレもまた自分の生存を賭けた話し合いでもあるので真剣だ。

少しでも良い条件で契約したいと考えているのだろう。


「あなた方としては大使館まで無事に私を届ければ依頼達成ですもんね!でも、ある程度安全が保障されている学院入学までの間が別な意味一番危険なの!」


タミレの言葉は完全に砕けたものになっていた。

今までの強かな彼女の言動を見ているので、取り繕ってではなく素の自分を見せる事で情に訴えようとしているんだろうと感じてしまう。


「それは……」

「のう、タミレ殿下。妾たちはお主とは友人でもなければ善意で依頼を受けた訳でもないのじゃ。線引きされた範囲で依頼された仕事をこなす(・・・)。ただそれだけなんじゃよ。正直言うとそれ以降、お主がどうなろうと妾たちには関係ないんじゃ。依頼達成後、殿下が怪我しようが、最悪死のうがの」


言い淀んだエレンの代わりにノルンが言葉を継いだ。

んー、さすが神獣!

俺たちが言いにくい事をズバッと言ってくれたよ。

後でたくさん可愛がってあげないと!


「……はぁ、そこまでスッパリ言われるとどうしようもないですね」

「代案として使い魔をお売りする事はできますよ」

「「「「「「使い魔?」」」」」」


何故か俺の言葉に全員が反応した。


「そ、使い魔。護衛などもできるタイプ。念話で指示もできるし故障なら有償で修理もできるよ」

「「「「「欲しい!」」」」」

「アンッ!」


真っ先に手を挙げたのはセバスティオヌ。

マーナも俺の膝の上で右前足をしっかりと伸ばして「自分もっ!」と主張している。

エレンならまだしもセバスティオヌはいつもはクールで素敵なロマンスグレーの紳士然としているのに……エルフは皆残念な子が多いのか?


「と、取り敢えずタミレ殿下はどんな使い魔がご要望で?鳥型から猫や……」

「鳥!鳥がいいわ!できればインコみたいな可愛いもの!!」

「タミレ殿下は鳥型、インコ……」


そういえば道中、作っていた試作品があったな、と思い出しその試作品を基に羽などディテールに拘ったオナガという野鳥に似た人工生命体を創り出す。

人間で言うところのホムンクルスのように一見、普通のインコのようなのだが、性能は常時結界を展開、目から出るレーザー光線や会話機能、通信機能に録音や録画機能、高速飛行、隠密などと破格であり、知能はこの世界の高度教育を受けた20歳程度の知能を有している。

ボディには1カラットほどの神玉石を2つ使っているので神力切れを起こす事もまずないだろう。


「こんな感じで良いか?」


体長50センチほどだが尾羽が25センチほどもある。

頭が瑠璃色で体色は白、羽先や尾羽はスカイブルーと言う感じだ。


「可愛い!」


虚空庫から取り出したオナガが俺の腕に乗り、「ピュー、ピューイ」と鳴いて尾羽を上下に振っている。


「取り敢えず、これを試しに使ってみてくれ。会話は普通に話すと周囲が怖がるから念話で行うようになっているよ」

「えへへ。とっても可愛い!」

「そうかい?で、費用の方は白金貨2枚かな?」

「白、金貨……2枚?」


日本円で2億円だ。

王族でもそう簡単に支払える金額ではない。


「分かりました!エクバタナまで試しに使って気になるところは修正をお願いします!」

「本当に支払えるの?」

「問題ないですよ。私、これでもそれなりに資産持っているんですよ」


そう言うと懐から金貨袋を取り出しそこから白金貨2枚を取り応接テーブルの上に置く。


「それだけの使い魔なら白金貨50枚くらい言われると思いましたがかなり安くて超お買い得でした!」


タミレはニッコリと微笑む。

詳細鑑定はいろいろ分かり過ぎるため行うのは控えていたのだが彼女を改めて視てみると、



氏名 タミレ・レマイオス【坂上 詩織】

種族 人族

【種族レベル 3】

年齢 14歳

職業 商人

所属国 レマイオス王国

称号 レマイオス王国王女、総合商社ミグロホリクム会頭

スキル 剣術3、予測4、土魔法2

その他:

総合商社ミグロホリクムについて

本社 エクバタナ

支社 各国の首都及び領都

従業員 8500人

売上高 白金貨2500枚


日本からの転生者。日本では坂上詩織と呼ばれていた。

坂上財閥の長女で私立白薔薇学園幼稚部から大学まで過ごす。

趣味はピアノ、剣道、乗馬。

財閥の中核企業である総合商社坂上物産に勤務し女性として初めて執行役員に就任。

交通事故により死亡。

転生後、5歳の時から元の知識を活かして商才を発揮しミグロホリクムを設立。

ミグロホリクムは大きいと言う意味の“ミグロ”に日本語の“取り組む”を組み合わせた造語。

現在、大陸最大の商社。

……



一国の王女にして最大商社の会頭ってどんだけチートだよ。

下手したら皇帝よりも発言力高いんじゃないか?

しかも王女なのに職業が商人だったり、予測なんて超レアなスキル持っているし、俺と同じ日本からの転生者だし……。


「……そうだったんですね。タミレさん、あなたはミグ……」

「あわわわ……それは内緒です〜!それより何で知ってるんですか?」


そう言えばこの世界には鑑定というスキルは一般的ではなかったっけ。

何故だか自分がミグロホリクムの会頭である事はテアにも話してないそれこそ機密事項らしい。


「まぁ、取り敢えず、この子に名前を付けてください」

「はい!それは決めてます。セリスにしようかと」

「セリス?それって紙って意味だよね」

「本当はセリドデイクティスにしようかと思ったんだけど長くて……」


セリドデイティクスは栞の事だ。

シオリ繋がりでセリスかぁ……やはりタミレは地頭が良いんだろうな。


「それではこの子の名前はセリス。そしてタミレとの魔力を繋げて……はい、これで使い魔となったよ」

「ありがとう!よろしくねセリス!」


セリスはタミレの肩に留まり自分の顔を彼女の顔に擦り付ける。

これだけ見たらタミレに懐いた小鳥にしか見えないが、帝国の一個師団が攻めて来ても楽に退ける事ができる能力を秘めている。


「セリスは冒険者ギルドに行って従魔登録をして貰うのを忘れるなよ」

「分かったわ……取り敢えず、冒険者ギルドのスサ支部には付き合ってくれるんでしょ?」

「……エクバタナまでは、だからな」

「ふふ、ありがとう」


今日はゆっくり寛いでギルドには明日向かう事にした。

当然、エレン、ノルン、マヨルカそれにマーナも使い魔を欲しがったので創る事になったのは言うまでもない。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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