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興味を持って頂きありがとうございます。




「月が綺麗だね」

「ええ、本当に」

「本当に綺麗じゃ」

「海に月が映えて……幻想的です」

「あぅ〜〈きれいですぅ〜〉」


マヨルカはいつになく詩人になっているように思うが、ちょうど月が水平線の彼方から姿を現してきた様で月の光に照らされた海面上に月の道が現れていた。

砂浜に腰を掛けて打ち寄せる小波の音を聞きながら、右側にエレン、左にノルンそしてエレンの隣にマヨルカが座り、エレンとノルンは俺の肩に頭を乗せて、マヨルカとはエレンのお尻越しに手を繋いで座っている。

この世界の伝説では、月の道を通って地上と神界とが繋がり神様が地上に遊びに来るのだそうだが、確かに両親ズが向こうから俺に手を振っているんじゃないかと思い、思わず手を小さく振った。

俺の膝の上で丸まっているマーナがそれを不思議そうに見ていたが、何かを察したのか急に海面に向かい吠え出した。

スキルを使って夜目と千里眼を使うと海面に何かに掴まった人が漂流しているのが分かった。


「人が漂流している!マーナ、救助してきてくれ!」

「アンっ!」


マーナは1つ吠えると身体が体長3メートルほど大きくなり、海の中へと向かった。

エレンとマヨルカは人が漂流しているよりもマーナが大きくなった事に驚きはしつつ、


「イ、イリオも大きくなるし……」

「そうですよ、マーナちゃんも大きくなって不思議はないです、よね?」


と、俺に向かって疑問をぶつけるのだが今は人命救助が優先だ。

砂浜を魔法で均してそこにシートを敷き、照明用魔道具を設置して灯りを確保した。

タオルと綺麗な水、ポーション類を準備し終わった頃、マーナの背中に人が担がれて海から出てきた。

室内着らしいズボンを履いた軽装で小柄な体型だった事もあり見た感じまだ成人前だろうか。

ショートカットという事もあり男児だと思うが俺は直ちにマーナごと洗浄魔法と乾燥魔法を使い濡れた身体を乾かす。


「マーナ、ここに寝かせてくれ!」


シートの上にその人を寝かせる。

脈を確認すると辛うじて脈を打っていたが、身体が冷えそして海水を飲んでいるからだろうか呼吸が不規則だ。

そこでその人の上半身を起こし背中側に膝立ちになって両手を鳩尾の前で組み一気にその人のウエストを絞る。

するとその人の口からゴボっと大量の水が噴き出される。

だが、気管にまだ溜まっている感じだ。


「もう1回!」


すると再び海水を吐き出すとようやく呼吸が安定したのだが……弱すぎる。


「くっ……これだとポーションを飲ませられない……」


俺はポーションを口に含み、その人の口を自分の唇で覆いポーションを送り込んだ。

ゴクン……

確かに嚥下したのを確認し、俺は唇を離す。

心拍、呼吸共に安定したのを確認し、その人の嘔吐物を再び洗浄魔法で清める。


「マヨルカ!悪いけどテンモクハウスのお風呂の準備をしてくれ!」

「はい!」

「エレンはセバスティオヌに連絡を、ノルンはアンドゴラスに言って他に漂流者がいないか捜索の準備を!」

「分かったわ!」「任されたのじゃ!」


俺はその間にその人を再びマーナに乗せ、移動している間に人物鑑定を行った。


「……王女?」


線の細い男性だとばかり思っていたのだが、女性だったようだ。


氏名 タミレ・レマイオス

種族 人族

【種族レベル 3】

年齢 14歳

職業 商人 【レマイオス王国王女】

所属国 レマイオス王国

所属ギルド 商業ギルド Sランク

スキル  剣術3、予測4、土魔法2

称号 レマイオス王国の希望


ん?

「レマイオス王国の希望?」

彼女の称号欄に書かれているものだが、なんの意味なのだろうか?

彼女が目を覚ましたらそれとなく聞く事にし、今は彼女の回復を優先する事にした。

テンモクハウスの客室にタミレを連れて行きそこに寝かせた。


「マヨルカ、申し訳ないがこの子、女の子みたいだから着替えをお願いできるか?」

「えっ、ショートカットですが女の子、ですか……?」


この世界の女性の髪型は基本セミロング以上。

ショートカットと言う事もあって俺だけでなくマヨルカも男児だと思ったようだ。


「ああ。そうみたいなんだ。俺はもう一度海に戻り海上を調べてみようかと思う」

「分かりました。しっかり面倒を見させて頂きます」


俺はマヨルカに後を任せ急いで海に戻った。

途中ノルンと会ったので一緒に海に行ってもらう事にした。


「モーターボート創っておいて良かったよ……」


俺は虚空庫からモーターボートを取り出し、それにノルンと乗り込む。


「ノルン、悪い、俺は運転に集中したいから、周囲に生存者がいないか捜索して貰えないか?」

「分かったのじゃ……微弱な生命反応なら2キロ先にある」

「ありがとう。細かな方角を教えてくれ」


モーターボートのヘッドライトが点灯し正面を明るく照らした。

漆黒の闇の中を海水を切り裂く推進音が響く。


「主人様、もう少しじゃ。2時の方向に50!」

「ありがとう。よし、照明魔法だ」


俺は照明弾にも似たものを数個その方角に打ち出し速度を緩めた。

すると少し大きめの木片にしがみついたまま気を失っているのか1人の侍女服を着た人を発見した。

ゆっくりと近づき浮遊魔法を用いてボートに救出する。

低体温気味だったので洗浄魔法と乾燥を使い、タオルケットを取り出してそれで包む。


「心拍と呼吸は……安定しているか。どうだ?他に生存者はいるか?」


ノルンは頭を振り、


「いいや。1人だけの様じゃ……」

「そうか……だが、この海面に浮かぶ木片の数からすると……客船か何かが襲撃されその救命ボートが沈められたのか?」

「そうじゃろうな。死んだばかりの魂が見当たらないし」


神獣の帝王とも言えるノルンにはそういったものも見える様だ。

俺は海面に向かい両手を合わせて他に遭難者が居れば助かる様に祈り、再びボートを走らせテンモクハウスへと戻った。

海岸線にはアンドゴラスたちが捜索をしていた様だが、海岸線に辿り着いた人はおらず、結局、タミレと侍女の2人だけを救出した事になる。

テンモクハウスの客室にもう一つベッドを出して、そこに侍女らしき人を寝かせる。

そしてマヨルカの同僚の侍女のうち2人にタミレと侍女らしき2人の様子を見てもらい、俺とエレン、ノルン、マヨルカ、セバスティオヌそしてアンドゴラスはリビングに集まり話し合う事にした。


「沖の方で何やら船が襲撃された様で、あの2人はその生存者だと思う」


俺がそう伝えると皆一様に驚く。

そして、その生存者の1人がレマイオス王国の王女である事を伝えた。


「レマイオス王国、ですか……」


レマイオス王国は帝国の西南に位置し、その国の王都であるテーベはこのエリュタウラー海の対岸に面している国だ。

帝国と同じ人族の国だが大きく帝国と異なるのは、王国は多種共栄を謳い、人族、エルフ族、ドワーフ族そして魔族がそれぞれ評議員を送り出した評議会で国の運営を行なっている事だ。

王族は帝国と同じ勇者の一族で、現国王ダライアスは元々皇帝グレイオスの弟に当たるのだが、結婚によりレマイオス王国の王配となった。

人族絶対主義のグレイオスとは仲が良いとは言えず、両国間には近年緊張が増してきている。

何より、レマイオス王国内ではダライアスが国王になった際に人族優位に舵を取る事を期待していた貴族グループが存在し、彼らが国内でしばし事件を引き起こしているなどの情報をセバスティオヌが教えてくれた。


「人族優位ねぇ……」

「人族はやはり数がいますから……ただエルダードワーフ族の様に絶対的武力を持つ種族は畏怖の念を持たれますが」


確かにペリセリスでは王族であるエレンに対してでさえ門兵は軽く見ていたが、俺に対しては全く別な対応だった。


「種族かぁ……面倒な思想だな」

「はい。それさえなければ余計な争いは減ると思うのですが……」


そんな話しをしていた所、タミレに付けていた侍女たちが2人を伴ってリビングにやってきた。


「お話のところ失礼致します。目を覚まされお礼を述べたいと申しますのでお連れ致しました」


エレン騎士団としてはエレンが団長にあたるので彼女が礼を受ける事にした。

アンドゴラスが席を立ち、タミレをその代わりに腰掛けさせる。


「この度は助けてくださり、誠にありがとうございました。私はタミレと申します」

「侍女のテアと申します」


タミレは自分がレマイオス王国の王女である事を隠そうとしている様で、自己紹介では敢えて自分の社会的地位には触れない様にしたのだろう。

エレンはタミレの自己紹介を受けて自分達についても同様に社会的地位に触れないよう紹介を始めた。


「タミレさん初めまして。私はエレン。ここにいるのは私のチームのメンバーでリュウタ、ノルン、マヨルカ、セバスティオヌそしてアンドゴラスよ」


俺たちは黙って首肯し挨拶をする。


「で、何があったの?」


エレンの直球すぎる質問が投げかけられた。

タミレは隠しきれないと思ったのだろう決心するかの様に一つ深呼吸をして話し始めた。


「実は、エクバタナにある帝立セレーコス学院を受験するために向かっていた所海賊に襲われて……」


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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