018
興味を持って頂きありがとうございます。
俺は作業台に移り今度は防具造りを始めた。
折角美女が婚約者になってくれたのだから、革鎧なんか無粋なものではなくドレスアーマーを創って着せてみたくなったのだ。
「ちょっと大変だが、ノルンの鱗を粉末にして……」
神鋼で創ったすり鉢とすりこぎで鱗を粉末にしていく。
天手力男命の親父を上回る膂力をフルに使い鱗を滑らかな粉末にしていくのだが、これがなかなかキツい。
ゴリゴリゴリ……
用途を考えると肌理の細かなパウダー状にまで滑らかにしていく。
それが終えると、今度は神糸にこのパウダー染み込ませていく作業だ。
世界樹の葉を食べたシルクワームが吐き出す神糸を摘むんで織り上げたものが神布。
そこで神糸の中にノルンの鱗を同化させていけば面白い糸ができるんじゃないかと考えたのだ。
出来上がった鱗粉の中に神糸を入れて神力を流し込んで同化させていく。
神界のシルクワームと人間界の帝王級飛龍を比較すると、普通の生物との比較なら神界の生物というだけで格上と捉えるのだが、比較対象が最上位神獣である。
そうなると話しは違ってきてノルンの方が数段上の存在になる。
そんなノルンの鱗粉を神糸に同化させたのだからより上位の素材へと変化していった。
名称 神鱗糸
詳細 世界樹の葉を食べたシルクワームから吐き出された神糸に神獣の鱗粉を同化させたもの。
最上級の滑らかな肌触りと柔らかさ、吸湿性などを持ちながら神鋼以上の強度を持つ布を創る事ができる。
→ 神鱗布 >>> 神布
んー、思った物より上質なものが出来上がった様だ。
これを一旦虚空庫に収納すれば在庫量は常に一定に保たれるのでこの虚空庫内で無縫製のドレスアーマーを創れば原材料がなくなる心配はなくなる。
衣服は通常、幾つかのパーツを縫製により縫い合わせて作られる。
ところが無縫製で作製すると継ぎ目が一切ないのでより上等な着心地を得ることができるのだ。
「先ずは試しに俺のシャツを創ってみようか……」
俺の身体の詳細を鑑定しミクロン単位でのオーダーメイドシャツを創る。
襟周りから胸周り、胴回り、腕周りだけではなく体型としての流線型も全て再現したシャツだ。
体力や魔力など各種ステータスアップ、各回復力アップ、自動治癒、調温、調湿、耐衝撃、耐魔法、形状記憶、防汚、消臭、自動修復やサイズ自動調整、運動時に動きを邪魔しないように関節部に伸縮性など考え付く機能を付与し、ボタンの位置だけでなくどこにプリーツを配置するかなども決めて、貴族男子が日常着るシャツを創りあげた。
「うん。これなら……非常に創りが細やかだし悪くない。実際の着心地はどうかな……」
シャツといってもこれはTシャツではなくいわゆるドレスシャツだ。
いくら多少伸び縮みできるといっても、ボタンが付いているだけで前開きという構造がないのだから……
「着……着れない……」
折角ここまで創って着れないというのは大失敗なのだが、これが俺の職人魂に火をつけた。
「確か、猫型ロボットの漫画に自動で着替えるドレッサーがあったよな……それを参考に……」
最初はドレッサータイプを考えたが、着替える際にいちいちそんな物を虚空庫から取り出すのは面倒だ。
だったら直接、虚空庫にワードローブ機能を付け加え、そこから直接着替えられる様にすることにしたのだ。
「収納した服一覧を見やすい分類できる様にして……次いでに着替えた状態をイメージしやすい機能も欲しいよな……今着ている服は自動収納してそのまま洗浄できるように……あっ、自動アイロン機能も欲しいな」
試行錯誤しながら機能の調節をして、早速試す事にした。
「えっと……収納した服を選択して、着替え!」
すると着ていた室内着が収納され俺が創ったドレスシャツに着替える事ができていた。
「おっ成功だ。うん。このシャツの着心地も悪くない」
俺は腕を回したり身体を動かしたりして動きやすさを確認した。
もう一度室内着に着替え再び服を作ろうかと思ったら、3人が目を輝かせながら近づいて来た。
「リュウタ。今のって何?」
「妾も主人様の様に魔法で着替えてみたいのじゃ!」
「それよりも着られているシャツ、何とも言えない輝きを放っているのですが……」
「今のかい?今のは新しい防具を造ろうとしていたんだけど、ついでに自動着替えって魔法を開発したんだよ」
「「「自動着替え!?」」」
何せこの時代の女性、特に貴族の女性はコルセットで身体を縛り上げたりと着替えするだけでも一苦労する。
それを自動でできるとなれば飛び付かない筈がない。
「そ、そうだよ。女性陣のはこれからドレスアーマーを創ってからだけどね」
このドレスアーマーと言う言葉にも食い付いたが、もう暫く掛かると説明すると3人は取り敢えずお風呂に行ってくると鍛治室から出て行った。
「これで作製に集中できるぞ」
俺はそう独言、ドレスアーマーのデザインを考え始めた。
エレンは170センチ、マヨルカは165センチと背が高めなので、ウエストラインを綺麗に魅せるマーメイドラインにする事は早めに決まったのだが問題はノルンだ。
何故100メートルもあった帝王種の飛龍が人化すると145センチになるんだ!
そう突っ込みながらノルンのドレスラインを考えながら紙にデザインを描いていく。
「う〜ん……やはりノルンにはフレアミニが可愛いよなぁ」
そう呟きながら無縫製で創っていく。
胸当てや肘サポート、膝サポートなどはドレスのデザインの一部に取り込んでいく。
次いでにドレスアーマーに似合う靴だ。
本当ならヒールのある靴を履かせたいけど、それでは森や洞窟などに入る事は無理だろう。
そこで靴底には滑り止めなどが施されているロングブーツを創った。
他にも頭部を保護するためにのティアラ型バシネットやグローブなども創っていく。
「他にも下着や肌着、普段着やドレス……それに宝飾関係も必要か……」
当然、これらはある程度決めたら虚空庫内で自動生産だ。
そして何より優先して創るべきものは……マヨルカとノルンの指輪。
まだ2人から何も言われていないのだが、エレンに渡した神鋼の台座に神玉石を填めた指輪を2人にも渡すべきだろう。
この指輪にも神瘉ともう一つ、そしてワードローブ機能付きの虚空庫(中)を付与し、そして自動生産していった衣服類などは自動的に俺の虚空庫からそれぞれの虚空庫(中)に転送できる様にもした。
「これで大体大丈夫そうか?よし3人を呼んでこようか」
カジ邸には俺専用の私室もあり、そこに集まってもらう事にした。
中には応接セットもありそこのソファーにエレン、ノルン、マヨルカの3人は腰掛けた。
彼女らの目は期待に満ちており、俺がこれから渡す物に相当な期待を抱いている事が理解できた。
「エレン、申し訳ないが指輪に新しい術式を付与するから1回外してもらっても良いかな?」
「それは構わないけど……」
エレンは左手薬指から指輪を抜き俺に渡してくれた。
俺はその指輪にワードローブ機能付きの虚空庫(中)を付与し、エレンに戻した。
それからノルンとマヨルカにもそれぞれに指輪を渡す。
「エレンの指輪には俺が使える虚空庫と言う、この世界でいう収納魔法を新たに付与したよ。もちろん、ノルン、マヨルカの指輪にもね」
彼女らの虚空庫には様々な衣類や宝飾類の他にそれぞれの主武器やサブウエポン、食料、水、ポーション類、それと金貨200枚ほど入れてある。
エレンたちの指に1人ずつ指輪をはめていくと、エレンはその左手を右手で覆い嬉しそうに俯く。
ノルンとマヨルカは左手を上げて指輪を眺め、マヨルカは両目から涙が一筋流れ出した。
俺はそっとマヨルカにハンカチを手渡し、虚空庫の説明を始めた。
「頭の中で虚空庫オープンと言えば中に何が入っているか確認できる様になっているよ」
「えっ……このワードローブって……凄い」
「おっ、もう中を確認したんだね。着てみたい服があったらそれを意識して……着替えと念じてくれ」
すると、3人はドレスアーマーではなく真っ先にウェデングドレスと名前を付けてあるドレスに着替えた。
これはセット展開しており、ティアラ、ネックレス、イヤリング、グローブ、ドレス、ガードルもしくはコルセット、ガーダーストッキングやヒールのある靴などを同時に着替えられる様になっている。
「えっ?何?これ……」
「凄いのじゃ。瞬時に着替えられたのじゃ〜!」
「それより、このドレスどうやって脱ぐんでしょうか?」
「幾つかの衣装はセット展開になっているんだが、その前に着心地はどうだい?」
「このドレス、とっても着心地が良いいわ」
「身体も動かしやすいのじゃ」
「このコルセット、全く苦しくないのにボディラインの補正が半端じゃないわ!」
「それは良かった。実はそのワードローブに収納されている衣類は全て無縫製で出来ているからワードローブ機能を使わないと脱げない様になっているんだよ」
「無縫製?そんな事ができるの?このドレスだって数種類の生地が使われている筈だけど……ないわ!確かに縫い目がない!」
「本当じゃ。これは凄いのじゃ」
「もしかして……着脱……あっ、脱げた……キャ!」
マヨルカは衣類を脱ぐ際に用いる呪文を使い衣装全てを虚空庫に収納したのだが、当然、生まれたままの姿を俺の前で披露してしまった。
「マヨルカ!急いで着替えか着用を……」
「はいっ!」
マヨルカは室内着を選択してそれを着用した。
ただ室内着はセット展開はしないので当然その下は……。
「下着を選択してそれを着用して……服を着たままでも大丈夫だから」
「はい……」
マヨルカは耳まで真っ赤に染めて俯き加減でソファーに座り込む。
「リュウタ様に見られた……」
「いや、急だったからそんなに、見て……ないよ?」
「恥ずかしい!」
マヨルカは両手で顔を覆い顔を下に向ける。
そんなマヨルカの肩ににエレンは手を置いて慰めるがノルンは裸を見られて何が恥ずかしいのか分かっていない様子だ。
「……まぁ、衣装にはいろんな機能を付与しているからそれはおいおい説明するよ」
俺がそう言うと3人は俺に抱きついてきた。
「ありがとうリュウタ!」
「嬉しいのじゃ!」
「リュウタ様、ありがとうございます!」
複数の美女に抱きつかれた事は元世界や神界も含めて初めてと言う事もあって俺は抱きつかれるまま棒立ちになってしまった。
明日からは帝都の手前にあるスサと言う街に向かう。
その間はのんびりしていようかな?
お読み下さり誠にありがとうございます。
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これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。