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015

興味を持って頂きありがとうございます。


昨日に続き少し長めです。




ペルセリスでは数日滞在し、その後、スサと言う街を経由してエクバタナへと向かう予定にしていた。

今の馬車なら20日もかからずにエクバタナに着くだろうし、食材なども俺の虚空庫にたっぷりと入っているのだから特段この街で補給する必要もない。

ないのだが、やはり女の子は買い物が好きという事もあり、街で色々買い物をする事にしたのだ。

エレンにはお小遣いとして金貨5枚、マヨルカにも同額を渡しており軍資金が豊富という事もあって1日は買い物するために費やされた。


買い物を持ち歩くのも大変だろうし、その都度俺が預かるのも気が引けるだろうから彼女らには歩くのに邪魔にならない程度の大きさのウエストポーチを作って渡しておいた。

これは時間停止型のアイテムボックスが内蔵しており、20畳程の広さの部屋くらいの大きさがあった。

これには使用者指定と不破壊、自動帰還などを付与(エンチャント)しているので、盗まれても安心できる仕様になっていたりする。


「リュウタ!このワンピース、私に似合うかしら?」

「リュウタさん、これは私に……どうでしょうか?」


エレンは直接的に、マヨルカは奥ゆかしく俺に相談してくる。

俺もいろんなデザインの服をもっと上等な素材で作れるのだが、お店で買うというのが女性にとって幸せを感じるのだろう。

洋服だけでない。

下着も俺に見せながら買って行くのだ。

流石にそれは俺も恥ずかしくなって顔も赤くなり、あそこもちょっと反応してしまう。

そんな俺を見て2人は嬉しそうにはしゃいだりもした。


「ふーっ。今日は楽しかったな」

「本当に!こんなに楽しい1日は生まれて初めてです!」

「リュウタ様。私も一緒に楽しませて頂き……」

「マヨルカさん。そんな他人行儀にならずに。これからもエレン、そして俺の事もよろしくな」

「はいっ!」


買い物を終えた俺たちはカジ邸に戻り、リビングでお茶を楽しんでいた。

ずっと馬車での旅だった事もあり1日くらいは自由な日があっても良いだろうと思っての事だったが思った以上にエレンたちに好評だった。


「明日は何か依頼を受けようと思うんだけど、どうかな?」

「そうね。折角登録したんだし」

「私はお嬢様に合わせます」


マヨルカのエレン第1主義とでも言う態度はブレないな、と思いながら、


「ペルセリスを出発する日を考えると日帰りになるけど貢献はしておいて損はないからね」

「それなら討伐にしたいわ!」

「そうだね。魔獣被害は少なくないみたいだし」

「私も……討伐を。その合間に採取もしてみたいと思うのですが……」


珍しくマヨルカから要望が出てきたのでその理由を聞いてみた。


「ペルセリス周辺にはこの周辺特有種の多肉植物が自生しているのです。青緑色をしており名前はそのままペルセリスと言います」

「そのペルセリスは珍しいとか?」

「はい。希少種でもあるのですが、そのペルセリスから採れる白い樹液から毒消しのハイポーションができるんです」


ペルセリスは俺の虚空庫にも入っており、マヨルカの言う通りに毒消しのハイポーションの原料にもなるし、少し手を加えるとペルセリスの葉肉は貴族が好むゼリー状のデザートを作る事もできた。

ただ、デザートに関しては一般的にあまり知られていない様だ。


「良く知ってるなぁ。他にもデザートができるって知ってた?」

「デザートですか!?食べるのが少し怖いのですが……」

「でも、私は食べてみたい気がする……」


エレンは食欲には勝てない様だ。


「よし!それなら討伐と採取をしてみようか。ただ、ペルセリスは自分達用の採取という事にしよう」

「デザート!デザート!」

「お嬢様……結婚前にリュウタ様に愛想を尽かされますよ」


マヨルカの少し呆れた視線にエレンは肩を窄める。

そんな可愛らしい仕草に癒されながら、1日を終えるのだった。


翌朝、カジ邸のシェフが腕によりをかけて作った朝食に舌鼓を打ち、地龍の革鎧に身を包んで従魔を引き連れペルセリス支部へと向かった。

討伐依頼は常設としてオーク肉を求めるものが多数貼られていた。

やはり食材としても有用と言う事もあって多くの料理屋がオークの依頼を出しているのだ。


「結構依頼があるんだなぁ」

「そうね。オークが1番多く、ホーンラビットやコカトリス、ボア系……どれも食材ね」

「反対にゴブリンやコボルトは純粋に脅威だけの討伐だからか……その上報酬も安いから不人気みたい」


オークなどは討伐による報奨金だけでなく、肉や睾丸など利用できる部位が多い。

それに対してゴブリンやコボルトは討伐の報奨金だけなので割が合わないのだ。


「よし。これだけ常設依頼が多いのだからこれって決めないで次々と狩っていこうか」

「ん〜。どんな料理が食べられるのかしら。楽しみだわ!」

「どんどんリュウタ様に胃袋を掴まれている……」


俺は苦笑しながら、ペルセリス郊外へと向かった。

門から少し離れてから飛竜たちを元の大きさに戻ってもらい、飛竜に騎乗して目的地へと向かう事にした。

場所はペルセリスの南西にある“豊穣な大地“と言われているペルシウス高原。

その先にはペルシウス高原から流れる川が注ぎ込むエリュタゥラー海があり、珊瑚礁が広がる海原は多様な魚介類の宝庫としても知られていた。

ペルシウス高原は人里から少し離れている事もあり、その豊かな実りが多様な魔獣を育んでいった。

適当な広さのある草原に降り立ち、俺たちはここを拠点にして魔獣を狩って行く事にした。

草を刈って地面を均し、そして俺専用の家である「テンモクハウス」を設置して結界を張り魔獣が近寄れない様にする。


「さあ、以前もやった誘引を使ってオークを中心に高レベルのモンスターを引き寄せるよ」

「でもここでそれをしたら魔獣が集まりすぎない?」

「結界を張っているから大丈夫だよ」


マヨルカは無言で準備体操をしており側から見てもやる気満々だ。

俺は誘引を発動し、オーク種を中心にDレベル以上の魔獣を誘引していく。


「おっ、早速オークがやってきたぞ」


今のエレンやマヨルカなら素手でもオークを斃せるんではないだろうかと思うが、話し合ってマヨルカの雷魔法で動きを止めてエレンが斬り込むと言う事になっている。


「結構多くないですか?」

「ああ。多分近くの集落からやってきたんだろうな。マヨルカ頼む」

「はい、頼まれました!雷雨(サンダーレイン)!」


マヨルカの雷魔法のレベルであれば本当は無詠唱どころか魔法の発動を願うだけで良いのだが、やっぱり雷がいきなり落ちるのは精神的によろしくないので発動のみ唱えてもらっている。

魔法発動には幾つかの種類がある。

呪文詠唱や魔法紋に魔力を注ぐ方法、そして”祈り”と言う集団魔法などだ。

一般に、祈り>魔法紋に呪文による魔力注入>呪文詠唱>魔法紋に無詠唱魔力注入>無詠唱

の順で魔法の効果・威力が決まる。

他に触媒や魔法杖(デバイス)を使い効果や威力を底上げする方法があるのだが、高レベルであれば無詠唱であっても魔法紋に呪文詠唱、魔法杖使用などと同等の効果があった。

マヨルカによる雷魔法発動と同時に稲光りが幾条にも発生して青白い眩い光が発せられ、次の瞬間、数十といたオークの群れが瞬時に消滅した。

彼女の発動した雷は通常の雷魔法とは次元が違い威力があり、雷が生じた際の温度が7000度にも達していたからだ。

その関係でオークを構成する身体が電子レベルで分解され肉体が消滅してしまったのだ。


「……」

「……」

「……てへ!」

「てへじゃないよ〜もう少し威力を落として身体を痺れさせる程度で良いから!」

「そうですよ〜私の出番がなくなるじゃないですか!」

「すみません……次から気を付けます……」


マヨルカはペロっと舌を出して頭をすくめる。

まぁ、レベルが高い人あるあるなので仕方がないとするか。

俺はもう一度誘引を発動すると再びオークたちがワラワラとやってきた。

今度はオークだけでなくハイオークやオークジェネラル、なんとオークキングまでやってきた。


「マヨルカ、威力を落として……頼むぞ!」

「はい!やってみます!」


そう言うと再び雷雨を発動させた。

すると、今度はオレンジ色の雷がオークの集団に降り注ぐ。


バリバリバリ……


先程よりも弱目の音と光が周囲を満たし、それと同時に1体のオーク以外は地面に倒れるのだった。


「エレン、キングを剣で倒せるか?」

「できます!」


彼女はレイピアに風魔法を纏わせ、オークキングに斬りかかる。


「やあっ!」


彼女の気合いと同時に斬りかかるとオークたちが手にしているグレートソードの3倍は大きいビックソードで彼女の剣を受けようとした。

遠目から見ると鉄パイプに針金で挑む様にしか見えないのだが、彼女の剣はビックソードごとオークキングの腕を斬り飛ばした。


Guoooooo…!


オークキングはまさか自分の剣が斬られるとは思っていなかったのだろう。

激痛で苦しんでいるだけでなく動揺しているのが遠目から見ても分かる。

そして、地面に倒れている仲間を見捨てて逃走しようとエレンに背を向けた瞬間、彼女のレイピアがオークキングの首を跳ね飛ばした。


「良くやった!」

「本当にこの剣は良く斬れるわ!」

「そりゃあ聖剣だしね」


そう言いながらマヨルカと一緒に倒れているオークたちの心臓を一突きして虚空庫に収納していった。

マヨルカの剣術スキルも上げておきたいしね。


「たくさん斃せましたね!」

「そうだな。エレンもマヨルカも良く頑張ったよ!」

「えへへ」

「お、お嬢様ほどでは……」


俺は2人の頭を思わず撫でた。

するとエレンだけでなくマヨルカまでもが顔を赤らめて嬉しそうにしていた。

そして、ペルセリスだけでなく有用な植物の採取をしたり誘引→殲滅を幾度か繰りし、合間にペルセリスの採取も行う。

魔獣も最初は頭数も多かったのだが、繰り返すうちに次第にやってくる魔獣の数が減っていった。


「ふう、恐らくこの周囲のAとBランクの魔獣はあらかた討伐を終えたな」


この頃になるとエレンの剣術はレベル9、マヨルカの雷魔法もレベル8、剣術はレベル5になっていた。

エレンは既に水魔法・風魔法がレベル9だったのでこれで持っているスキルは全てレベル9に達した事になるが、彼女らはあまりの疲労で這う這うの体で逃げ出そうとしていた。


「もうこれで終えるから安心していいよ」


俺の言葉に思わず2人は泣き出した。

そんな2人の頭を撫でながら、


「2人ともレベルは随分と上がったから後は経験を増やすことを中心にしても良いかもね」

「レベルと経験は違うの?」

「そうだね。やっぱり経験が少ないと何かの時に遅れを取るからね」

「私はリュウタ様の方針に従います……」

「えっ?エレンじゃなくて?」

「……はい。この件については師匠であるリュウタ様に……」


マヨルカの言葉にエレンも頷く。

いつの間にかマヨルカの中で俺は師匠に格上げされていた様だ。


「……分かった。マヨルカは俺を師匠にして良いんだね?」

「はい!宜しくお願いします!!」

「えっと……私も……」

「エレンは俺の婚約者だから……」

「でも、師匠と弟子ってなんか憧れるし」

「分かったよ。それでは、エレンは婚約者であり弟子という事でいいか?」


エレンは満面の笑顔を湛えて頷いた。

俺の足元で丸まって昼寝をしていたマーナは〈ごちそうさまー〉と言って俺とエレンを揶揄う。

そんなマーナの頭を撫でながらペルセリスに戻ろうと準備を始めようとした時に事件が起きたのだった。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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