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014

興味を持って頂きありがとうございます。


少し長めですがお付き合いください。




あれから数日後、俺たちはペルセリスに到着した。

領都正門からサカスターナ領方面へ向かう馬車は皆無であり、出て行く馬車は全てエクバタナ方面へと向かっていた。

そして領都に入るには正門で検査を受けなければならないのだが、エクバタナ方面から来ている馬車でそれなりの待ち馬車が連なっていた。

門には一般通用口と貴族通用口とに分かれており、俺たちは貴族通用口へと向かうとそこに4人の門兵が検分しにやってきた。

アンドゴラスたち騎士は馬から降りて門兵の前に整列し彼らに応対するために兜を外した。


「こんにちは。ようこそペルセリスへ。皆さんの身分証を確認させてください」


恐らく4人の中で1番位階が上なのだろう。

身なりも統一されたハーフプレートを身につけ良く訓練された所作だ。

馬車はバクトゥーリア王国の王族仕様に俺が創り変えただけあり高位貴族が乗っているに相応しいものに見えるからだろうか、彼の応対は好感の持てるものだった。


「こんにちは。私たちはグレイオス皇帝の勅命によりバクトゥーリア王国から参りました者です」


そう言うとアンドゴラスはセレーコス帝国から送られてきた勅命書を門兵に渡した。

すると先程までの丁寧な言動が一変し粗野なものへと変わった。


「あー、辺境国の。それじゃあ、馬車を徹底して調べさせて貰うわ」


門兵はそう言うと馬車へ近付こうとした。

門兵が王族の馬車に無闇に近づくのは外交問題に発展しかねないものではあるがそんな事はお構いなしに騎士たちを押し除けて近づこうとした。

セバスティオヌはため息を吐いて馬車から降りようとしたが俺はそれを押し留めて、


「すみません、帝国側が無礼ですよね。ちょっと行ってきますよ」


と告げて馬車から降りた。


「あっ?この馬車はこんな若造が乗っているのか?生意気だな」


門兵はそう言いながら腰の剣に手をかけ抜こうとした。

そこで俺は自分の身分証を提示し、


「それはカジ公爵家に対する武威行為として捉えて良いんだね?」

「えっ……カジ公爵、家?」

「そこの門兵。悪いがコイツを拘束せよ。抗するなら斬って構わぬ」


門兵たちは何が起こったのか全く理解できないようで呆けた顔をしていたので、俺は権威スキルを発動させながら宣言した。


「カジ公爵家公太子であり侯爵家当主でもあるリュウタ・カジに対する武威行為によりこの門兵を捕らえ帝国法に基づき処罰し報告せよ」

「「「はっ!」」」

「えっ、そんな、処罰?」


門兵は部下だった者たちに捕らえられ連行されていった。

セレーコス帝国は人族優位主義という事もありエルフの国であるバクトゥーリア王国を下に見る傾向が強い。

そう言った背景もあり連行された門兵はあのような態度を取ったのだろうが、たまたま俺が乗り合わせていた事もあり彼は捕まる事になったのだ。

帝国法の定めによれば高位貴族に対する無礼は死刑。

俺は筆頭公爵家の公太子しかも鍛治師ギルドのSランクという事もあり侯爵位を授爵している。

そんな人物に対して剣に手をかけたのだから仮に彼が騎士爵であろうが、下級貴族家の3男や4男だろうが死刑確定だろう。

そういった事もあって別の門兵たちがやって来て跪き、


「此度は大変申し訳ありませんでした。カジ家御一行は問題なくペルセリスに入都して頂けます」

「ありがとう。それでは私たちは公爵邸に数日滞在してから帝都に向かうので何かあったら連絡はそこへしてくれ」

「畏まりました」


この一連の出来事を見てアンドゴラスは俺に近寄り、


「えー、これからはやっぱり公爵家の……」

「いやいや、今更でしょ。今まで通りに接してくれた方がいいよ」

「そうかな?ははは……それならその言葉に甘えようかな?」


アンドゴラスはそう言うと俺の背中をバシっと叩き、馬に跨った。

そして門兵たちが公爵邸まで先導してくれる事になりそのまま公爵家のペルセリス別邸へと向かった。

本当は真っ直ぐ冒険者ギルドへ向かいたかったのだが、成り行き上別邸に立ち寄ってから向かう事にしたのだ。


「リュウタってやっぱり公太子なんだね」

「そうだけど、そう見えない?」

「うん。だって偉そうじゃないし」

「権力を振るうには責任が生じるからね。それに偉そうにしていて良いことはないしね」


そんな会話をセバスティオヌは黙って聴きながらウンウン頷いていた。

一行は別邸の広さと豪華さに驚きつつ、いや、俺も初めて見たので内心は当然驚きながら各自の部屋で着替えをしてエレン、マヨルカと3人で冒険者ギルドへ向かう事にした。

ドレスや侍女服で冒険者ギルドに向かうと何かと問題が起こりそうだった事もあり、地龍から取れた皮と鱗で革鎧を造りそれに着替えている。

肩当てや胸当て、肘、膝などは鱗を使い、それ以外は地龍の皮と神布を使って仕上げたので非常に軽くそして動きやすいのだがアダマンタイトのフルプレートアーマーよりも防御力が高い。

マヨルカは魔術師となるので神界樹の中でも最も古い樹の枝から創り上げた魔杖を持たせ、俺とエレンは腰に剣をぶら下げた。

そして、別邸を管理していた侍従長に日程を説明し、エレン達をしっかりともてなす様に指示を出してから3人で冒険者ギルドまで馬車で向かうのだった。


街の造りは大体どこも同じだ。

中央には領主の城があり、その周辺には有力貴族の館が置かれている貴族街がある。

貴族街の周辺は東西南北に区割りされ、東から順に商業区、工芸区、行政区そして宗教区となっていた。

その更に周辺に住居街が広がり南北が富裕層、東西の中央寄りが平均的な層で外層がいわゆる貧困層やスラム街となっている。

カジ家別邸は領主の城により近い所にあり、そこからギルドのある行政区は徒歩だと1時間ほど。

冒険者ギルドはその行政区の中でも住居街に近い所にあるので更に30分は掛かってしまう。

馬車だと車道がしっかりと舗装されているのでギルドまでは普通の馬車でも30分ほどで到着するだろう。

自分たちの登録だけでなく従魔の登録もするために、俺はマーナとパンセ、エレンはイリオそしてマヨルカはアステを連れて馬車に乗り込んだ。

今回の馬車はカジ家の馬車。

領都内の移動という事もあり箱型ではなく半蓋で街の風景も十分に楽しめる形のものだ。

ただ、エレンたちが乗っていた馬車よりはマシだけどやはり揺れるしシートも硬い。

それなので後で創り変えておこうと思いながら御者に行先を告げて短い時間ながら領都観光を楽しむ事にした。

石畳で歩道と車道が分離されており、街路灯も設置されており人は多いものの馬車はスムーズに進むことができる。

建物はほぼ2階建てと言う事もあり、上からの圧迫感を覚える事なく街風景を堪能できた。

何より、中世時代のヨーロッパは街中は糞尿臭いと何かの本で読んだ記憶があったがペルセリスはそんな臭いは一切しなかった。

そうこうしているうちに冒険者ギルドに到着した。

冒険者ギルドはここでは珍しい4階建てであり、建物も重厚なゴシック建築だ。

馬車はギルドの駐車場へ回ってもらい、俺たちは従魔を連れて建物の中へと入っていった。


「意外と空いているのね」

「混むのは朝と夕方らしいからね」


エレンの問いに対して一般的な答えを返した。

もちろん、辺境とされるサカスターナ領ほどではないが帝国にしてみれば田舎街。

冒険者が少ないのかも知れない。


「登録はあの窓口の様です」

「その様だね」


マヨルカが目敏くギルドの登録受付を見つけてくれたので3人でそちらに向かった。

そこには20代と思しき女性が制服を着てカウンターの奥に座っており、俺たちを見て椅子から立ち上がってカウンターまでキビキビとした動作でやってきた。


「ようこそ、ペルセリス支部へ。登録で宜しいですか?」

「はい。お願いできますか」

「ふふふ。もちろんですよ。それではこちらの用紙に必要事項を記入して身分証を提出してください」


ギルドに登録される際にはギルドの専用証が発行されるのではなく、出生届けがされた際に発行される身分証に追加記載される様になっている。

俺の身分証は現在、


氏名 リュウタ カジ

種族 エルダードワーフ

年齢 15歳

職業 鍛治師

所属国 カジーノ公国(セレーコス帝国)

所属ギルド 鍛治師ギルド S級

称号 カジ公爵家公太子、龍討伐者ドラゴン・サブジゲイター


と記載されているので、問題がなければこの所属ギルド欄に


冒険者ギルド  ◯級


と追加される事になる。

俺たちは書類に記入して身分証を提出し、呼ばれるまで隅にある椅子に座って待っている様にと言われたのでそこで待つ事にした。

すると、奥の方から先ほど受付をしてくれた女性と50代だろうかがっしりとした体躯の男性がこちらへ向かって小走りで走ってきた。


「カジ様……大変失礼致しました。こ、こちらで受付させて頂きますのでご移動をお願いしても宜しいでしょうか?」


女性は当初とは大きく雰囲気が変わり、過度の緊張状態なのだろう少し青褪めた顔色をしており指先も少し震えていた。

男性の方もまた普段はあまりしないであろう気をつけの姿勢をして上半身はフラついている。

俺もすっかり忘れていたけど、一応カジ公爵家家の公太子でしかもS級鍛治師。

ギルドにもよるけど、鍛治師ギルドや冒険者ギルドのS級は侯爵位を授爵する事になっているのだからそれ相当の応対が必要と判断したのだろう。


「登録が滞りなくできれば問題ないのでここで大丈夫ですよ」

「いえ。実は……他の、特に鍛治師ギルドでS級の方が冒険者ギルドに登録される際には特例がございまして……ここでは説明しにくいので申し訳ありません!」


男性が深々と腰を90度に折る勢いで頭を下げてきた。

受付をしていた女性もそれに合わせて同様に頭を下げる。

俺たちは顔を見合わせて、


「エレン、マヨルカさん、申し訳ないけど良いかな?」

「大丈夫ですよ。ペルセリスに到着したのも予定よりかなり早いですし」

「お嬢様が良ければ私もそれに従います」

「2人ともありがとうな。それではどちらに行けば良いでしょう?」

「それではこちらへ……」


そう言うと、俺たちはギルドの4階にある特別室に連れて行かれる事になった。

部屋は特別室となっているだけあり、重厚な感じのソファーやコーヒーテーブルと言った応接セットが置かれており、俺たちはそのソファーに腰掛けたが、出されたお茶とお茶菓子には誰も手を付けようとしなかった。

ここに呼ばれる事に警戒をしていたからだ。


「で、説明しにくいって何があるんでしょうか?」

「初めてお目にかかります。お、私は冒険者ギルドペルセリス支部ギルドマスターのセルゲイと申します……」


ギルドマスターと言えば社会的地位は相当高く、しかも元一流の冒険者の筈だ。

それにも関わらず何だか落ち着きがなくしかも歯切れの悪い物言いをしている。


「……カジ様は、あの、公爵家の……ですよね?しかも鍛治師ギルドのS級……しかも龍討伐者でいらっしゃる……そうなるとですね、こちらとしましてもF級からと言う事にはならず最低でもA級、いえ本来なら少数での龍討伐者であればS級付与なのですが……当然お連れ様も……」

「それで、何か問題があるんですか?」

「はい。実はお連れ様が亜人なのが……いえ、隣国の王族なのは分かるのですが……カジ様だけS級と言う訳には……」

「あー、人族至上主義と言うヤツですか。2人、従魔がいるんですよ。飛竜ですけどそれでもA級で良いですか?」

「えっ?従魔?飛竜の?」

「はい。それも古竜種の」

「古竜種……」


帝国の騎竜隊に所属するだけでA級相当の待遇となっている。

それが格上の古竜種の従魔だ。

それを聞いてセルゲイは目を泳がせていた。


「恐らく、彼女ら1人で騎竜隊と渡り合える力を持っていますが、それでもA級?」

「……いえ……S級にさせて頂きます」

「それとこの3人でパーティーを組みます。リーダーはエレン、パーティー名はエレン騎士団(ナイツ)で」

「えっ?私がリーダー?」

「そう。帝国国内最高戦力のパーティーのリーダーはエレンが就く事に意味があるんだよ。もちろん、俺も支えるから」

「……リュウタが支えてくれるなら」


セルゲイは俺の意向が亜人の地位を上げるというものである事を理解し大きく溜め息を吐き、


「分かりました……エレン騎士団、エレン、様をリーダー……いえ、団長として登録し、メンバーはマヨルカ様とリュウタ様で宜しいでしょうか?」

「はい。当然、エレンとマヨルカさんは……」

「もちろん個人でもパーティーとしてもS級登録でさせて頂きます……」

「それと従魔登録ですね。飛竜3頭とホワイトフェンリル1頭を」

「フェンリルも……!もちろん、問題ありません!」

「ありがとうございます。これが団旗(パーティーシンボル)ですので併せて登録をお願いします。それでは最後に買い取りをお願いします」


構成員全員がSランクでパーティーとしてもSランク。

冒険者ギルド最高ランクのパーティーなのだから団旗がないのは少し寂しいものがある。

そこでバクトゥーリア王国の国旗に龍と騎士団である事を意味する剣をクロスさせた意匠を組み合わせた団旗を虚空庫内で即席で創ったのだ。

即席の割にデザイン性が高く手前味噌ではあるが悪くない。

だがセルゲイは団旗の事よりも買い取りが気になっているようで、


「……買い取りは龍種も、でしょうか?」

「それは当然ですね。ただ、3体のうち1体だけですが。後はその他ですね」


セルゲイは「その他がコワイ」と呟きながら、まとめて買い取りをするための解体場へ俺たちを連れて行き、そこで今まで狩った魔獣の一部を出した。

ゴブリンやコボルト、アントなどは討伐証明部位だけだが、ゴブリンだけでも300体分もあるのだ。


「地龍1体にグランドワーム、グランドボワ、サーベルタイガーにオークキングやオーガキング……リュウタ様、ギルドが破産してしまいます……」


涙目になりながら訴えてくるので、仕方がないからごく一部を白金貨5枚、金貨50枚と銀貨50枚に換金し残りは冒険者ギルドに自動的に作成される各自の口座に分割払いで入金してもらう事にしたのだった。

お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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