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興味を持って頂きありがとうございます。




食事も終え、食後の紅茶を愉しんでいたのだが今朝創った指輪の事を思い出した。


「エレン、今日が誕生日だと言う事でプレゼントを用意したんだ」

「プレゼント?ここまでしてもらって更にプレゼントだなんて……」

「まぁ、気に入らなければ返してくれて良いから」


そう言うと俺は虚空庫から1つのケースを取り出しそれをエレンに手渡した。

皆の視線が集まる中、エレンがそのケースを開けると指輪が一つ入っており、朝日を浴びて眩い輝きを見せている。

2カラットほどの神玉石の指輪を最も効率よく神術を発揮しやすくするブリリアントカットを施しているからだ。


「綺麗……」

「他の国ではどんな意味があるか知らないけど、俺のいる所では成人を迎える女性に贈る場合は石によって意味が違うんだ」

「この石は……初めて見るんだけど」

「これは神玉石と言って、意味は“永遠”だったかな……」

「神玉石……永遠……嬉しい……!」

「良かったですな!殿下!」

「お嬢様、幸せになってくださいね!!」


ん?何だか俺、やっちゃいけない事をしたのかな?


「えっと……」

「リュウタ様、この大陸では国は違えど成人の誕生日に永遠を誓うのは婚約を申し出たのと同じですよ」

「あっ……」


やっちまったようだ。

だけど、別にエレンが嫌いな訳じゃないから婚約が成立しても悪くないかな。

確かこの世界では妻は4人まで娶る事ができるみたいだし。


「いや、もちろんそれで構わないよ。エレンが良ければだけど」

「はい。リュウタ様のお申し出、お受け致します」

「あん〜!」〈おめでとうー!〉

「おめでとうございます!お嬢様!」

「「「「「おめでとうございます!!」」」」」


誰よりも早くマーナが俺とエレンの婚約を祝ってくれた。

ありがとうと念話で伝えると〈けんぞくですからー〉と少し誇らしげに尻尾をピンと伸ばしている。

俺としては一国の王女様と婚約なんて、ホント良いのかな?そんな事を思いながら指輪の説明をした。


「一応、指輪の使い方も説明するね」

「使い方?あっ、この指輪、何かの術式が組み込まれている……?」

「これは神鋼の台座に神玉石を埋め込んでいて癒しの魔術に似たようなものを組み込んでいるんだ」

「魔術に似たようなもの?」

「正確には神術って言うんだけどね。で、この石を癒したい人に向けて「癒しを」と唱えれば癒しの神術が発動するようになっているんだ。これは使用者限定でエレンだけが使えるようになっているから」


これを聞いているセバスティオヌは口をパクパクさせながら手が震えていた。

まぁ、セバスティオヌのこんな状態は今まで何度か見てきているので持病か何かなんだろう。

もう1つ効果があるんだけど、それはあまり必要ないよね?多分。


「まあ、あまり使わない状況であるのが1番なんだけど何かの保険だと思ってね。取り敢えず、周囲の神力を常に吸収しているので大規模な癒しさえしなければ何度も使えるし、神力を使い切っても暫く置いておけばまた使える様にもなるよ」

「使い捨てじゃなく……?」

「そんな勿体ない事はしないよ。神玉石はそう採れるものじゃないからね」


本当は虚空庫の中にたっぷり入っているのだがこの世界では物語の中にしか出てこない位、非常に希少性が高いものらしい。

ただ、後でバレるより先に正直に伝えておいた方が良いだろうと思って隠さずに伝えたのだ。

エレンは指輪を左手の薬指にはめ、両手を胸に当て目を瞑る。


「私、エレン・バクトゥリアはリュウタ・カジの婚約の申し出を受け婚約者となる事を誓います」


そう宣言すると両手を広げて天を仰ぎ見た。

すると彼女から何かしらの光が放たれ一直線にバクトゥリア王国の方へと向かった。


「リュウタ様、私たち王家に伝わる種族魔法により両親にリュウタ様からの婚約の申し出を受け入れた事を伝えました」

「そう。俺の方は多分もう伝わっているみたいだからエクバタナに到着したらちょっとだけ付きあってね」

「はい!」


遠距離通信として種族魔術は大雑把な事ならば短時間で伝える事ができる。

もう少し細かな事を伝えるならペルセリスにある在帝国バクトゥーリア王国大使館か冒険者ギルド支部にある魔導通信を使えば問題ないだろう。

婚約報告なら種族魔法で十分と言う事でエレンも俺もこちらを使ったのだ。

実際には当人同士だけで婚約は成立するのだが、正式にはお互いの親の承認が必要だ。

しかし種族魔法で伝達をし、一定期間の間に反対がなされなければそのまま承認されたものとなり正式に婚約が成立する。

騎士たちや侍女たちも俺たちの婚約を祝福してくれて、このまま護衛から婚約者と立場は変わりはしたがエクバタナまで共に向かう事になった。



〈セバスティオヌ視点〉


帝国には4大公爵家というものがあります。

その中でも圧倒的な権勢を誇るのが序列第1位のカジ家。

リュウタ様はカジ家の公太子であられるようです。

実際にリュウタ様の身分証を依頼という名目で確認させて頂いておりますので間違いないでしょう。

そんなリュウタ様に依頼というのも恐縮至極ではあるのですが、今のエレン様にとっては必要な事でもあります。

エレン様が成人の日を迎えるにも関わらずエクバタナへ向かわなければいけないのは、帝国の皇帝グレイオスへの側妃候補として入内(じゅだい)せよとの御達しが来ていたからでございます。

私どもバクトゥリア王国は独立国ではございますが、帝国に比べれば弱小国。

エレン様は美姫と広く知られておりました故、こう言った話しがあるとは思っておりましたがまさか成人前に来るとは思っておりませんでした。

エレン様が側妃を回避するには既に婚約が決まっている事が必須。

しかもそれなりに位の高い人でなければなりません。

そんな中、リュウタ様がエレン様に婚約を申し出てくれたのでございます!


リュウタ様が婚約の申し出の際に用意してくださったのは神玉石の指輪。

神玉石はエクバタナにあるカーリス教大神殿アンティウスにのみ奉納されていると言われております。

それ程希少なものをカジ家公太子が婚約の申し出の際にエレン様に贈られておりますので、今回の婚約は婚姻はほぼ確定と見なされ側妃候補という皇帝の強権を回避するには十分過ぎる事なのです。

当然、エクバタナに到着したら色々問題は起きるでしょうし、最悪、バクトゥリア王国と帝国の関係は悪化するかも知れませんが、カジ家との関係が強化されるのであれば些事でございましょう。


あぁ、側妃などにならないで済むなんて本当にリュウタ様には感謝しかありません!



〈カジ家当主リュウイチ・カジ視点〉


私どもエルダードワーフにとってテンモク神は身近で、絶大な力を持つ主神だ。

そのテンモク神からの神託で、我がカジ家は今まで娘しか授からなかったが息子を得る事ができた。

リュウタ様と言う名のテンモク神の愛し子がこの世界に顕現され、公太子として迎え入れたのが15年ほど前。

そして先日、成人を迎えたのと同時に覚醒されたようだが早速いろいろ動かれているようだ。


この帝国に君臨する皇帝グレイオスは無類の女好きでしかも飽きっぽい。

正妃の他に側妃が20人、他に愛妾など数十人にも及ぶと言うのに強引にバクトゥリア王国の第2王女を側妃に迎えようとなさる。

それを力技で阻止したのだからリュウタ様の行動力は素晴らしい!

今後はカジ家としてバクトゥリア王国を支援支持をしても良いかも……

いや!こんな国から独立しちゃうのもありかも!


取り敢えず、リュウタ様がエクバタナに到着するまでに皇帝もいろいろチョッカイ出すだろうから、カジ家として、いえ、1人の父親として息子を支援しに行くとしましょう……



〈皇帝グレイオス視点〉


まもなくエレンたんが帝都にやってくるぅ〜〜ぐふふ。

ハイエルフは美女が多い事で知られているけど特にエレンたんは美姫らしいから会うのが楽しみなのじゃ〜〜!

朕の後宮に強制的に入内させる事ができたから、後は側妃に輿入れさせて……ぐふふ〜

この際だから愛妾たちを整理しちゃってエレンたんの宮を造るのもありかもじゃな〜〜


何?

エレンたんがカジ家の息子と婚約じゃと?

あり得ん!

婚約は成人になってから行うもの。

だからこそ成人を迎える前にエクバタナに来させようとしたのじゃ。

バクトラを出た際にはエレンたんの周囲にはカジ家の息子どころか独身男性はいなかった筈じゃ〜〜


ならばっ!

エクバタナに到着する前にその息子を亡き者にすれば……ぐふふ。

暗殺部隊を向けるんじゃ。

もちろん、カジ家に察知されぬようにな……


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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