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興味を持って頂きありがとうございます。




馬車を改良したおかげで快適に旅を続けていた。

魔獣の気配はあるのだが馬車が速くなったせいか襲われる事なく今に至っている。

そして警戒している魔獣の集団はもう少し先にある様でまだのんびりできそうだった。

その道中、目的地であるペルセリスが近づいてきた頃、アンドゴラスから鍛治の依頼があった。


「リュウタ殿。依頼を受けて頂くことはできないだろうか?」

「依頼ですか?今は依頼ではなく同行という形で受けていますが……別件でしょうか?」

「ああ。実は、聖剣を打って欲しいんだが……いくらでできるだろうか。初めに値段を聞くのはマナー違反だとは思うのだが……」


今、この世界には聖剣が10振りに魔剣が3振り。

そんな希少な剣を打てるかではなく打って欲しいと言われたのは素直に嬉しかった。


「そうですね。本来なら光金貨2〜3枚ってところですが、特定の制約付きでなら金貨1枚で良いですよ」

「金貨1枚!?それは是非……いや、その制約というのはなんだ?」

「そんな大した事ないんですけどね、この剣の所有者はバクトゥーリア王国にあり使用者をアンドゴラスさんと言うなら」

「それは問題ない!」

「もし、アンドゴラスさんがバクトゥーリア王国籍から離れたりしたら使えなくなりますよ?」

「俺は、王国にそして王家に忠誠を誓っているから問題ない!」

「分かりました。それではエレン殿下とセバスティオヌさんに相談をした上でどうするか決めましょう」


そこでアンドゴラスを含めた4者で相談し、アンドゴラスには優1等の雷属性と光属性を持たせた聖剣を、残りの5人には良1等の属性剣を打つ事にし、費用は全部で金貨2枚を受ける事にした。

ただ、一つだけ問題があった。

それは今まで刀しか打ってこなかったのだが、彼らが使うのは刀ではなく西洋剣。

剣についてはブリギッドのお袋から寵愛は受けているが、直接指導を受けていた訳ではないのですぐさま聖剣を打てるとは言い難いのだ。

しかも、アンドゴラスは刃の長さが180センチの両刃で重さも4キロと言う大型のグレートソードで残りの5人は長さが100センチの両刃で重さは2キロほどのブロードソード。

正直、初めて打つ剣が2種類もありそれがより慎重にさせる。


「各人の身体の使い方の癖などを調べた上で打っていきたいと思います。素材は普通の鉄鋼で良いですか?それとも何かお持ちなら特殊素材でもできますが」

「できれば硬さに優れたアダマンタイトと魔力を通しやすいミスリル銀を使って欲しいのだが……どうだろうか?」

「それなら在庫があるのでイケますが、鋼鉄製でないなら全部で金貨10枚かな?」


並2等のアダマンタイト剣1振りが金貨5枚が相場らしいので大幅にディスカウントして伝えてみた。


「6本で金貨10枚!?本当に良いのか?後から値上げとかやめてくれよ」

「大丈夫ですよ。ただ、この値段は今回だけだけどね」


こんな会話を交わし、騎士たちの身体を鑑定して理想的な剣の重心などを割り出して造る事にした。

夜、食事を終えて自分の移動用家屋「テンモクハウス」の中に設置してある鍛治場内の炉に火を入れ一気に3000度まで上げた。

アダマンタイトを溶かすに必要な温度だからだ。

西洋剣の造り方に関する知識は天目の親父からの知識ではなくブリギッドのお袋からの寵愛により頭の中にある。

後はその知識をスキル化してレベル上げをするだけだ。

西洋剣は大きく分類すると型を造りそこに素材を溶かして流し込む鋳造という方法や鋼を熱して叩き伸ばす鍛造があり、これらを組み合わせて造り上げていく。

しかし、剣の強度を考えるなら技術的には数段上の折り返し鍛錬を行った方が良い。

そこで俺は折り返し鍛錬を行いながら西洋剣を造る事にしたのだ。

剣の芯を粘り気のある魔力を通しやすいミスリル銀にしてその皮鉄を硬さに優るアダマンタイトにする。

火造りをし、長さや幅、厚みなどを整え焼き入れを行ない仕上げていく。

そして研ぎを行い完成だ。

ブロードソードとしての大きさなどは……問題ない。

そして重要な質は……良2等。

初めての剣としては悪くないが、アンドゴラスに約束した剣の質には至っていなかった。

西洋剣製作スキルは当然ながらゲットしており、ブリギッド様からの寵愛により経験値が取得しやすくなっているのでレベルも一気に5まで上がっていた。

これを99まで上げるのだ。

ちなみに通常スキルレベルは2の乗数の上がり方に近い。

レベル1に必要な経験値を2Xとしたらレベル2は4X、レベル3は8X、レベル4は16Xでレベル99は63穣3825予3001垓1411京4700兆7483億5160万2688Xとなっている。

レベル8でさえ256Xなのだからこの世界の人たちがレベル8で頭打ちになるのも道理だ。

俺は両手で頬を軽く叩いて激を入れて2本目に取り掛かる……


「ふう、刀スキルが99あるから西洋剣も比較的楽にレベルが上がったなぁ」


太陽が草原の彼方から昇り始めた頃、俺は20本ほどのミスリルーアダマンタイト合金製ブロードソードを打ち終わっていた。

研ぎは後回しにしてはいたがほぼ完成状態であり、鑑定によると12本が良1等だ。

属性は一般的に付与されている火属性であり、硬化、自動修復、魔力回復(小)、所有者指定などを付与してある。


「取り敢えず、後は聖剣か……食事までの時間に試作を……」


俺は再び槌を手にする。

天目師匠から賜った槌は俺の手と完全に馴染んでミリ単位、いやミクロン単位で微調節ができるのではないかと思えるほどだ。

鍛冶場には澄んだ叩打音が響きそして1本の剣が完成した。


「グレートソードとしての重さ……長さ……幅……問題ないな」


各要素を測定し、納品可能かどうかを検品した。

そして質は優1等。

問題は無さそうだが……光属性が甘かった。


「聖剣としての役割は魔族の魔剣と対峙しても負けない事だ。これでは光属性が弱すぎる」


俺は独言て、取り敢えず鍛治は虚空庫の中で時間加速をしながら創る事にし、皆の朝食作りに取り掛かる事にした。

やはり腹を空かせている人たちがいると言う点と、光属性が弱い理由もレベルが低いからであろうと検討がついたからだ。

目処がついた、とまではいかないがチートなレベル上げを行う事である程度の見通しはついたので美味いものを食べたくなった。

そういえば今日はエレンが成人を迎える誕生日とか言っていたな……ならば少し贅沢にいこうか。

何せ馬車の旅だ。

無言でいるのも何だし、世間話などしている際に間もなく成人となる誕生日を迎えると言う話になったのだ。

ただ、王女と言う立場にいるにも関わらず誕生日、しかも成人を迎えると言う大切な日に移動をしていると言うのは何だか違和感を覚える。


それはさておき、俺が考えたバースデーメニューは、

・フレッシュオレンジジュース

・クロワッサン

・黒トリュフ入りのスクランブルエッグ

・ほうれん草のキッシュと軽くスモークしたサーモンのステーキ

・ラム肉のステーキに根菜のソテーを添えて

・マンゴーヨーグルト

そして、ケーキ!

プレゼントは……神鋼を台座に小さな神玉石をはめた指輪に癒しの神術を掛けて、と。


移動中と言うだけでなく、流通網が未発達なこの世界では生鮮食品、特に果物は超が付く高級品になってしまうような世界なので、それをたっぷりと使ったフレッシュジュースはこれ以上ないくらい贅沢な一品だろう。

そしてクロワッサン。

パンといえばバケットみたいなパンか長期保存ができるクソ固い黒パンというのがこの世界では常識だ。

バターが染みるほどたっぷりと使い焼き上げたパンは存在していないのだ。

そして卵料理。

これは田舎に住んでいる人ならある程度気軽に食べられるが、都市部ではそうそうお目に掛かる事のない食材。

そして魚料理もまた漁村周辺でのみ食べられ、内陸部では先ず店先に並ばないものだ。

何より、大人になる前に屠殺した肉というのは王侯貴族であっても年に1度食べられるかどうか。

今日はそれくらい贅沢な食事を用意したくなったのだ。


「さぁ、一気に作るぞ!」


俺は目の前のキッチンだけでなく虚空庫内でも同時複数調理を始めた。

クロワッサンの生地を作り成形して寝かせる。

そしてオレンジを絞りキッシュを焼き……

サーモンとラム肉は厚切りにして、と。

マンゴーは少し大きめにカットしてヨーグルトに和えた。

料理をテーブルに並べ、ルーナにはラム肉を専用のお皿に山盛りに。


「良い匂い……って、凄いご馳走っ!」


エレンが最初にやってきてテーブルの上に並ぶ料理を見て驚く。

いつもの朝食ですら贅沢と言えるのにこれならバクトラの1流レストランのディナーにも負けない、と呟いている。


「誕生日おめでとう!」

「えっ?あ、ありがとうリュウタ。覚えていてくれたんだ」

「そりゃあ聞いてからそれ程日が経っている訳ではないからね」


俺はエレンを誕生席に座らせた。

他の人たちも数分もしないうちに集まってテーブルの上の食事に驚くが、今日は何の日か皆が知っている訳でそのまま座席に着いた。


「リュウタ様、お祝いの一言を殿下にお願いできますか?」

「俺が、ですか?」

「はい!私もリュウタにお願いしたい!」

「……分かりました。エレン殿下。成人の誕生日おめでとうございます。エレン殿下そしてバクトゥリア王国の上に大いなる祝福がありますように。乾杯!」


そう言うと、朝なのでお酒ではなく搾りたてのオレンジジュースの入ったコップを皆が天に突き上げた。

それを見たエレンは嬉しいという感情を露わにし、そして目から一筋の涙を流す。

俺はその涙の本当に意味を知らず、ただ嬉し涙なのだろうと思ってしまった。


「さぁ、冷めないうちにいただいてください!」


エレンの涙を見た侍女のマヨルカもまたもらい泣きをしたのか涙を浮かべていた。

そんな重い空気を払拭するためにも、俺は明るめの声で食事を促した。


「そうよね。こんな素晴らしい料理はそう滅多に味わえないわ。頂きましょう!」

「本当にリュウタ様の職業が一流の料理人と言われても素直に信じられるような腕前です」

「そんな難しい話しは良いから、旨いものを楽しんで食うのが1番だ!」


アンドゴラスの一声が騎士たちにナイフとフォークを取らせ、それが侍女や御者たちにも伝播し食が進み始めた。

こうしてエレンにとって忘れられない誕生日が始まる事になったのだ。


お読み下さり誠にありがとうございます。

今回の話はいかがでしたでしょうか?

宜しければ感想・ブクマ・評価を頂けると嬉しく思います。


これからも少しでも楽しんで貰えるよう頑張っていきたいと思います。

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