表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラ色のウサギさん  作者: 立菓
2/10

ボンヤリとした記憶に

 ここから回想になります!

 いつだったかは、はっきりと覚えていないけど、私は小さい頃に、何度かテレビで、こんな話を放送していた記憶がある。


 ヨーロッパのどこかの国の男の子が、家の近くの森で、しょっちゅう御伽話おとぎばなしに出てくる小人みたいな妖精を見た、と言っていた。

 それだけではなく、その国のあるおばあさんも、子どもの時に、湖の近くで妖精を見たんだって。

 それから、他のテレビ番組でも、日本人のある女の子が、仏間で座敷童子ざしきわらしを見たらしい。


 その頃の私は、「へえー、そんなことが本当にあるんだ」と思いながら、そんなテレビ番組を見ていた記憶がある。

 しかし、私のお父さんはよく、「んなこと、ある訳ねーだろっ」と言い放ち、その次には、妖精や座敷童子についてのテレビ番組を、リモコンですぐに野球中継に替えてしまうのだった。


 それから、私とお父さんはリモコンの取り合い。

 見兼ねたお母さんが間に入って、私たちのくだらない争いを止めようとしていたな~。



 そして、ある日。

 隣町に住む、うたゑばーちゃんの家に行った時、お父さんが馬鹿にしてた、妖精や座敷童子についてのテレビ番組のことを、ばーちゃんに話した。


「ハハハッ。それは、なかなかおもしろい話じゃな」


 うたゑばーちゃんは、湯呑ゆのみに入った温かい緑茶をすすりながら、そう言った。


「まあ、『子ども』というのは、心がとっても純粋じゃからなぁ。そんなことがあっても、ちっともおかしくはないよ。『子ども』ってな、大人には見えないものが見えたりするもんかもしれんなぁ」


 湯呑ゆのみ卓袱台ちゃぶだいに置いて、ばーちゃんは窓の外に目をやった。


「で、ばーちゃんはな、昔からずうーっとあるもんには、『神様』やら『精霊』やらが住み着いておる、と聞いたことがあるぞ。

 ……ほれ、ツルんたーの地区の公園の近くに、大きなサクラの木があるじゃろ。あの木はな、ばーちゃんが生まれる前から、あるらしいよ。だからよ、もしかすると、そのサクラの木に『神様』か『精霊』が、おるかもしれんなぁ〜」


 ばーちゃんがそうやって話してくれた時は、私は本当にワクワクしていたものだった。


「ねえ、ばーちゃん」


 私は目をキラキラと輝かせながら、ばーちゃんに近寄った。


「いつか……。いつか、私もその『神様』や『精霊さん』に、会えるかなぁ」


「ああ、もちろんっ! いつになるかは本当に分からんがね。それと、奴らはかなり気まぐれらしいぞ。そうやったら、ツルがいい子だったらの話になるかもだけどよぉ。とりあえず、いつかはいつかだねぇ。ハッハッハッハ~」


「ええ~。何それぇー」


 そんな、うたゑばーちゃんとの会話は、とても印象深くて、今でも忘れられない。

 それに、その頃の私は、随分ずいぶんと生真面目に『神様』や『精霊』の存在を信じていた。

 全部で10話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ