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◇背中を合わせて(シュミレ視点)

 SSクラス・ボスモンスター《エグゼキュートゴーレム》は、その時まだアタシの行動に気づいていなかった……。


 テッドがぎょっとした瞳でこちらを見る。


 アタシはゴーレムを視界に収め、《比例能力補正》の対象に設定した。


 数か月ぶりの、血が()き立つような感覚がして……身体能力が強烈(きょうれつ)に補正される。(あか)いオーラにつつまれた彗星(すいせい)のようにアタシは突っ込み、大地をける。


「アアアアアアアアッッッッ!!」


 ――ズバァッ!


 上段からの一閃が、背中から生えた奴の副腕(ふくわん)の一本を斬り飛ばし、そこでゴーレムはやっとアタシの存在に気づいた。


 テッドがニヤリと笑う。


「戻って来たか……! 久々に見ると……また随分(ずいぶん)おっかねぇ姿じゃねぇのォ、我が弟子よ!」

「うるさい! 元だっつってんでしょ!」


 テッドが気のそれたゴーレムの足を斬りさき、体勢をくずす。

 だがその程度でこいつの動きは止まらない。


 継続してダメージを与えなければすぐに再生を終えて元通りに動き出す……。

 

(――攻める!)


 髪を引きちぎるような高速の横薙(よこな)ぎが振られ、アタシはかわしざまに一刀……まるで鏡写しのように、反対方向に移動したテッドが同じ様に一撃を加える。


 ゴーレムに関節の固定は無い。

 胴体や関節を回転させて繰り出す連撃が、削岩機(さくがんき)のようにせまる。


 アタシは()ねる……縦横無尽(じゅうおうむじん)に。


 かわして、斬って、かわして、斬って……!

 終わりが決まった音楽を奏でるように、パターンに乗った攻撃を繰り返す。


 二度見た相手の行動パターンを把握(はあく)していないようじゃ、こんな生き死にのかかった仕事、やってられない。


 アタシはふと口が緩んだ。


 好きなのかも知れない……剣が。

 好きなのかも知れない……戦いが。

 敵とダンスを踊る、この時間が……背中に迫る死に追いつかれまいと走る、この瞬間が。


 そして、今、後ろにはあいつの姿がある。

 アタシを必要だと言ってくれたあいつの風が……そばで、守ってくれてる!


「――シッ!」


 ――バシュッ!


 ゴーレムの二本目の腕を飛ばす。いや、負けじとテッドも魔剣でもう一本を吹き飛ばし、三本目。

 腕は残り一本、まだ再生はしていない。


「チッ……後からしゃしゃり出て来やがってェ! まァいい、(かえ)ってきた祝いにトドメはくれてやらァ……終わらせろォ!」


 テッドがゴーレムの注意を引こうと真正面から突っ込む。

 アタシは反対側、ゴーレムの真裏の壁を蹴り、再び宙に飛び上がる。


「ゼァ! 《塵散鮫(ちりさざめ)》!」


 残った一本の腕は前に叩きつけられた後、低く躱したテッドの下からの大薙ぎで、噛み砕くようにぶった切られる。これで、背中側はもう無防備…………!?


「――ッ!」


 ゴーレムの頭がぐるりと回り、口が開く。

 魔力の砲弾がこちらを照準して輝く……こんな、切り札をっ!?


「――そのまま行きなさいッ! 《聖光剣の(ライトソード・)監獄(ジェール)》!」


 ガゴォン!


 詠唱と共にゴーレムの口を光の剣でできた檻がふさぎ、完璧なタイミングで爆発を押しとどめる……借りとくわよ、メリュエル。

 

 そして、アタシのやることは、もうひとつだけだった……。 

 ただ力の限りに真っ直ぐ、振り下ろす。


「《血霞真月(けっかしんげつ)》……!」


 ――サンッ!


 アタシの体は紅いオーラを(まと)い伸長した長剣と一体になり、その場で縦に円を描いた。

 

 軽い斬撃の音を残して着地し、(さや)に剣を収める。


「……ォ……ォォ……」


 ――ピシッ……。


 体を動かそうとしたゴーレムの頭の上端から亀裂(きれつ)が始まり、真っ二つにその体を分けてゆく……。


 そしてそれらは傾きながらゆっくりと、灰となって崩れ落ちていった……もう再生はしないだろう――。


「ふぅ……」

「……終わりましたね。記憶が、戻ったのですか?」


 久々の運動でふらついたアタシを、後ろからメリュエルがささえた。


「残念なことにね……あのまま、何も思い出さずにいられたら、その方が良かったのかも知れないけど」

「あんだけ楽しそうに戦っといて、良く言うぜェ、シュミレよぉ!」


 後ろから歩いて来た男にアタシは舌打ちする。


「気安く呼んでんじゃないわよ。もうアンタとは、何の関係も無い……」


 国から命令を受けたのは確かだけど、こいつは元々、アタシを殺そうとやって来たんだ。


 アタシはテッドを(にら)みつけ……剣をにぎる。この場で殺し合うことになるかも知れないとそう思ったから。


 すると奴は意外にも、鼻を鳴らし両手をあげた。


「ハァ、そ~イキリ立つんじゃねぇよ。ケケ、もうおめぇと()る気はねぇ。欲求不満もそこそこ解消できたし、それにもう、オメーは俺より強くなっちまったみてぇだからなァ。ま、オメェが俺を斬りてぇなら、好きにするといいさ」

「……アタシにはもう、そんなことより、大事なことがあるから」


 眼の端に、ひどい炎と風が巻き上がったのが見えた。

 状況はわからないけど、相手が魔物だろうが魔人だろうが、何だってかまわない。


 あいつのところにアタシは走って行く……。

・面白い!

・続きが読みたい!

・早く更新して欲しい!


と思って頂けましたら下で、☆から☆☆☆☆☆まで、素直なお気持ちでかまいませんので応援をしていただけるとありがたいです!


後、ブックマークの方もお願いできればなおうれしいです。


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