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ダークエルフは忠誠心が振り切れている

 それからというもの……。


 朝……。


「おはよう、身支度を(ととの)えてくるよ」

「お供いたします」


 昼……。


「そろそろ、お腹が空いてきたね。ギルドの食堂に食べに……」

「用意しております」


 晩……。


「ふ~、今日も疲れた。お風呂に入ってこようっと」

「お背中をお流しいたします」

「それはダメです!」


 ――リゼが止めてくれる。


 そして夜……。


「そろそろ寝るね、お休み……」

「お供いたします」

「それもダメです!」


 ――ありがとう、リゼ、僕の味方は君だけだ……。


 彼女に心の中で感謝を告げながら、僕は自室の扉を開く。


 あれから、一週間ほどが経過して……。言い聞かせてはいるんだけれど……ヨルは(がん)として僕のそばから離れようとしない。さすがにどこへ行くにもこの調子ではちょっと疲れる……。


 大体、僕なんかをわざわざ狙ってくる奴なんて……いるわけないのに。


「副マスは大変だなぁ……」「モテモテですぅ、ニクイヤツですぅ」


 いや、君達いつから入ってたの?

 もういいや……。


 ベットに寝転がったままツンツン背中を突いてくるポポとレポに場所を半分開けてもらいつつ、僕は横たわる。


 扉の外でどたばたと何かやり合う声が聞こえてくる中、快眠の為に僕は《サウンドアシスト》を逆に作用させて音を遮断(しゃだん)し、そしてまぶたを閉じる……。


 そんな毎日がここ最近続いていた。


 ――その翌日。


「どうかな? うまくやれてる?」

「はい。一族は狩猟(しゅりょう)を得意とする者も多いですし、機織(はたお)りや農作業もできますので、何とかやっていけそうです」


 今、目の前にほほえんでいるのはアサだ。


 町長が用意してくれた屋敷(やしき)に今僕らは彼らと住んでおり、総勢二十人程のダークエルフ達も新しい仕事を探しはじめているようだった。


 今、その一室で僕はアサの報告を聞いているところである。


「そういえば、君達の衣装(いしょう)は少し独特(どくとく)だよね。言葉づかいも、特にヨルなんかはみょうに(かた)くるしいというか、なんというか……」


「私達はダークエルフの中でも末端(まったん)に位置する者なのですが……かつて、集落をある勇者に救われたことがありまして……その方がこういった文化を好んでらしたため、教えを受け継ぎ、それらを自らの生活に取り入れたのだと聞いています……」


 なるほど……。ヨルが腰に下げている、あのカタナとかいう切れ味鋭い細い片刃剣や、キモノとかいう民族衣装もその人から伝えられた貴重なものなんだな。


「僕らから見たら中々新鮮(しんせん)でおもしろいよ。余裕が出来たら他の人に(すす)めてみるのもいいんじゃないかな? 商売になんかにできるかも。あ……ちょっと失礼だったかな?」

「いえいえ……ヨルは少し反対するかもしれませんが、生活の(かて)を得るためならば、先祖様もお許し下さるでしょう、検討(けんとう)してみます」


 そういってニッコリわらうアサはどことなくお姫様みたいな雰囲気(ふんいき)がある。


 紅茶を飲むしぐさなども優雅(ゆうが)で気品に満ちていて、彼女なら大勢の人の支持を得ることもたやすいだろうと思わせるなにかがある。


 現に今、彼らのまとめ役となっているのは彼女だから、もしかしたら……リゼのお爺さんのように一族の長のような家系とかだったのかもね。


「……でも、本当は私達もヨルの様に主様(あるじさま)のお役に立ちたいと思っておりますので、ぜひ私達の力が必要であれば、何なりとお申しつけくださいね? ダークエルフの民は、受けた恩義(おんぎ)を一生忘れませんから」

「そんなに思いつめなくてもいいのに……こんなただの若造(わかぞう)だよ?」


 彼女は、重たい言葉を謙遜(けんそん)でかわそうとする僕に、てらいのない笑みを浮かべてこたえる。


「そういう(かざ)らないところが良いのです……。悲しいことが起こり、我々は多くのものをうばわれましたが、神様はあなた様との出会いをもたらして下さいました。これから盛り立てていける主人を得たことが私たちにとっても、大きな心の支えとなっているのです」

「主人だなんて……仲間として一緒に頑張っていこうってだけだからさ、そんなに気おわないで……」

「主様……」


 アサがうっとりとした目を僕に向けた……何かまずいことを言ってしまったかな?


 彼女は椅子を立ち上がると、すすっと僕のそばに寄ってきて、肩に顔を近づけささやく。


「その、眠れぬ夜など有りましたら、お言いつけ下さいね? 母から教えられたお疲れをほぐす方法なども心得ておりますので」

「いやいやそんな……使用人じゃないんだから、そんなことを無理にしなくてもいいんだよ」

「そうではなくて、私がなにか主様にして差し上げたいのです。いけませんか……?」


 彼女は体の前で組んだ手をもじもじと動かしながら、うつむけた顔から視線だけをこちらに向ける。


 そういう風にお願いされるとなぁ。でもリゼは怒る……絶対怒る。


「――失礼つかまつる。主様、クラウゼン殿からお話があると……。む、アサ……邪魔したか?」

「ヨ、ヨル! い、いえ、何でもないのです……」


 そこに前触れもなく現れたのはヨルで……体を近づけていたアサは先程と同じようにスススと下がってゆく。正直、助かった気分だ。


 気持ちはうれしかったけど……今はちょっと忙しいから、落ちついたらまた(あらた)めてっていうところかな。


 急な用事っぽいし、早く行かないと。


「わかった、すぐ行くよ。それじゃアサ、気持ちだけいただいておくよ。またね」

「は、はいっ、お気を付けて!」


 クラウゼンさんからの呼び出しか……なんだろう?

 静かになって両手の人差し指を突いているアサを残し、僕達は彼の待つギルドへと足を運ぶ……。


 どうせ今日もギルドには顔を出すつもりだったからいいんだけど、今までこういうことが無かったから少し気がかりだ……大した用件でないと良いんだけど。

・面白い!

・続きが読みたい!

・早く更新して欲しい!


と思って頂けましたら下で、☆から☆☆☆☆☆まで、素直なお気持ちでかまいませんので応援をしていただけるとありがたいです!


後、ブックマークの方もお願いできればなおうれしいです。


作者のモチベーションにつながりますので、なにとぞご協力よろしくお願いいたします。

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