◆笑うモノ(???視点)
ダンジョンの最奥で……ワタシは違和感に気づき、ニタリと笑ウ。
(おやおや……ここ数年、侵入者などいなかっタここにもまた人が現われまシタカ)
この数年、人の来ないこのダンジョンで力を蓄え孤独な日々を過ごしましたが……ずいぶんとまた、なんとタイミングのヨロシイことダ。
……思えばとほうもナク長い年月を眠らされていたものでシタ……その間人々は偽りの平和を享受し、いっそうこの大地を汚シタ。
しかし、それもあり多くの人間は堕落し、こうして我々にやすやすと封印を解かれるほど弱体化してしまっタ。こんなクズどもに……我らが、倒されるトハ……!
……王はかつて倒れる前におっしゃっタ。
必ず我らを甦らせると。
その暁には、力をたくわえ、やがて各地の封じられし同胞を解放せよと。
脆弱たる人間に、誰が大地の王か知らしめ、根絶せよと。
数を頼むだけの虫ケラどもを駆逐し、滅殺せよと……。
「アア、また……たくさんの人が喰いタイ。腹いっぱいになるまで……」
ワタシは、最後に人を喰ったその時を思いだす……。
少し前、六人かそこらで迷宮に潜り込んで来た愚か者たちがいたのデス。
半分は逃がしましたが、ひさかたぶりだったこともあり、あれは本当に美味しカッタ。
女も良かったですが……中でも一番ウマかったのは紫の髪をした強い魔力を持つ男デシタ。
――強い魔力を感知して来て見れば、紫色の髪の男が必死に洞窟の内部の中間を守る大型の魔物から仲間を守ってイル。
もう二人ほどが地面に倒れ伏し、死んでいるにもかかわらず彼の心は折れていないようダッタ。
『マクドガルド! グレッグとセシリーだけでもここから逃がせ! まだ助かる……!』
『い、一体何が起こったんだ……ライアスさん! お、俺達も戦う……』
『ふざけるな! お前達まで犠牲には出来ない……。《ゲート》! 早く走れ! 俺が防いでいる内に……走ってくれッ!』
(ほう……単独で空間魔法……しかも他の場所と空間を連結させるとは……かなりの魔力の持ち主。しかし空間魔法は移動地点の間の道をつなぐのに恐ろしい程の魔力を消費しますからねぇ……もう持たないでショウ)
生き残りを逃がし、思ったとおり男は、額から汗を吹き出しその場にひざを着きまシタ。ふところからポーションを取り出しあおったが、あの程度では一割も回復すマイ。
男は半壊した巨大魔物から距離を取り、放たれた熱線を防御すると、息を荒げながら言ウ。
『……!? こいつだけじゃないのか! なんなんだ、この禍々しい魔力は!』
『ククク……ピラーに炭屑に返させるのは少々惜しいですネ』
『……貴様……はっ!? なんなんだ一体!?』
みさかいなくこちらも攻撃してくる《インフェルノピラー》の熱線をかるく弾きながらワタシが男に近づくと……顔を上げた男は、ワタシの目を見て気づいたようでシタ……。
『……ま、まさか、伝承にある……災厄の』
『若いのに博識でいらっしゃる……デモ……』
『ごふっ……!』
ズブッ……。
ワタシの舌がのび、男の胸をつらぬク。
『イタダキマァス』
『……リタ……』
すまない……と、男は誰かの名前をつぶやいて事切れた。
ワタシは男の体を舌で宙づりにして、つぶさに観察スル。
他の者との連携が比較的拙かったところを見ると、戦力補強の為に呼ばれた助っ人だったノカ……?
古代、我々を封印した賢者と同じ雰囲気を感じましたネェ……この男だけは魔法で姿を隠していたワタシを察知していたようですカラ。
強力な空間魔法の使い手で、上手く仲間達を逃がされてしまいました……不覚デス。まあ、姿は見られていないので問題は有りまセンガ。
しかし、今代の人々はどうも……大したスキルを扱えない様子では無いデスカ。
死のまぎわに出し惜しみも無いでしょうし、見た所、各々決まった一つのスキルしか使えない様子ダッタ。
やはり……大地に刻み込まれた王の呪詛はすさまジイ。
何代にも渡って、人々の隅々にまで行き渡って行ったようですね……今や、《スキル》も《ユニークスキル》も一種類ずつしか扱えないとは……歯応えのナイ。
ワタシは流れて来る血をすすりながら、男を丸呑みにしてイク……。
(しかし、まだ大多数の仲間は目覚めていない……もうしばらく力をたくわえるとしマスカ……)
そうして他の二人も飲み込み、少しばかり腹を満たしたワタシは、ダンジョンの中でしばし眠りについたのデス。
……――――。
――そんなことがあってそれ以来、ここには誰も近づきませんでシタガ。
微睡んでいたワタシに、アノ方から命令がついに命令が下ったノダ……。
ワタシは空腹を確認するように腹をさする。
「ヒュヒュ……丁度いい朝御飯もやって来ましたし、そろそろ、始めるとしまショウ……♪」
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