いざ火山迷宮へ!
《ラグラドール火山迷宮》は、王都より二日程南下した場所にそびえ立つラグラドール山の中腹にある。
監視用の軍の駐屯地が麓より少し上がったところにあるので、馬車でそこまで送ってもらった。
メンバーは、僕、リタ、リゼリィ、ポポレポの二人、アルティリエさん、フォルワーグさんの七人。そこそこ大きなパーティになってしまった。
「大丈夫か、フィルシュ? これだけ人数が多いと支援魔法が負担になるのではないか?」
《急加速》で行軍速度を速めている僕を、アルティリエさんが気づかってくれる。
「全然大丈夫です。前のパーティの時は数日かけっぱなしのこともザラだったので」
「数日じゃと!? 並の魔法士じゃったら数時間も持たすのが精々じゃというのに……つくづく規格外じゃのう」
「いやいや……これしか取り柄が無くて」
フォルワーグさんが驚きの目で僕を見た後、ため息をつく。
実は僕、あんまり他の魔法スキルの使い手は良く知らないんだ。
元パーティの火魔法士リオは大魔法で一気に片を付けるタイプだったから、僕とは全然スキルのサイクルも違ったし……。だから感覚が良く分からない。
「大じじ様の言ってることが正しい。私だって魔力消費の少ないスキルを使っても一日もつかどうか……魔力の容量だけでは無く、回復能力も優れているのかも知れない。そういうスキルでもないのに本当に不思議」
「フィルシュの支援魔法は本当すげーんだ。なー妹」
「Sクラスだろうがなんだろうがどんと来いって感じでしたよぅ」
「ふふ……皆あなたがいるから、安心していられるんですよ」
「……頼りにしてもらえてるなら、嬉しいよ」
リゼリィの微笑みに元気をもらいながら、僕達は朗らかな雰囲気で山道を進んでゆく。
早朝から半日ほど歩き、《ラーヴァタートル》、《ストーンキューブ》等のBランクモンスターと遭遇したが、ほとんど相手にならない位一瞬で片付けてゆき、やがてダンジョンの入り口に到達する。
多分合計数百体位倒したんじゃないだろうか……魔石を集める方が時間がかかったかも。
入り口を守っていた数人の兵士達が、こちらを見て敬礼した。麓の兵士から報告を受けていたのだろう。
「お疲れ様です……! 連絡は受けておりますので、お気をつけてお通り下さい! ……しかし、皆さん魔物達には襲われなかったのですか?」
対して汚れていない僕らの服装に違和感を感じたのか、兵士の一人が興味深そうに問いかけた。
アルティリエさんが自慢そうに胸をそらす。
「ふふふ、とくに問題はなかったぞ。ここにいるのはこう見えて、腕に自信のある者ばかり。魔物達も相当数片付けたから、しばらくはこの辺りも安全なはずだぞ。ほら、これが証拠の魔石だ……」
「なな、なんとっ……お見それいたしました。感謝いたしますぞ、さすがこのダンジョンに挑戦されようという勇者達。天幕も用意してありますので、よろしければぜひお使いください!」
あわてふためいた兵士達に丁重に対応され、僕らはテントの中でしばし小休止をさせてもらう。
「フゥ、さすがに老体にはちとこたえるわい。とはいえまだまだ元気じゃがな」
「なんならここで大じじ様だけ休んでいてもいい」
「そう仲間外れにせんでくれい……」
リタはどうやら通常運航のようで、大じじ様はがくりとうなだれる。
「ええと、ちょっとだけ確認しておこうか。リタ、ダンジョンの概要をお願い」
「うん。《ラグラドール火山迷宮は》以前侵入したパーティーの情報を参考にすると、内部の所々に溶岩が染みでていて、ものすごい暑さらしい。熱耐性は必須だけど……」
ちらりとリタがフォルワーグさんを見て、彼は鼻を高くする。
「ワシの出番じゃな。ユニークスキル《四象変化》のおかげで、地水火風の魔法ならどれでも扱えるからの! 《アクア・ウォール》で体温の上昇は十分に防げるはずじゃ」
「す、すごいスキルですね……さすが国一番の魔法使い」
「今やその座も、誰かさんにうばわれそうじゃがの?」
「大じじ様?」
「わかっておるて……優秀な若者が育つのは我らの本懐でもある……。でもやっぱりうらやましぃんじゃ~」
僕の賞賛を彼は素直には受けとらず、うらめしそうにこちらを見つめるが、やはりリタに睨まれ、悔しそうに目をそらした……孫がわりに逆らえないお茶目なおじいさんである。
「あれ……僕てっきり、フォルワーグさんは《召喚魔法》スキルの使い手だと思っていたんですが」
「いい所に気がついたの。じゃが、召喚魔法は厳密にはスキルではなく、魔物からドロップした魔石と一部のアイテムを媒体に、魔力を持って復元する技術とでもいうものなのじゃ。もちろん、召喚する魔物に応じた強さの魔力を込めねばならんから、発動者より格下の魔物は扱えんし、使い捨てで長くはもたんしな……興味があればまた教えよう」
へぇ、全然知らなかった……ちょっと気になるけど今は後回しだな。
ちょっと機嫌をなおしたフォルワーグさんに感謝を告げ、元の議題へ戻る。
何はともあれ、これで大分攻略の難易度が下がるのはありがたい。
水分補給などの準備は十分にして来たけれど、魔法で水を生成できる人がいれば安心感が大分変わって来る。
「……後は内部地形だけど……奥までたどり着けた人は当然ながらいなくて……後半の探索に時間が」
「多分、それは僕の魔法で解消できると思うよ」
「えっ?」
手をあげた僕に、説明を止めたリタはきょとんとする。
「《リファレンスエリア》って言う魔法が使えるんだ。空気中に存在する魔力の流れを利用して大まかな構造物や敵の位置をなんかを知ることが出来る。今までの経験もあるし、大体どういうルートが適切か、案内できると思う」
「……フィルシュ! 本当にあなたは神様みたい……」
「そんな大げさな! ほ、ほら、話し合いを続けないと!」
リタが僕の手をがっしりとつかんで頬ずりしたので、女性陣と、老師の「わしは褒めてくれないのかのぅ?」というような厳しい視線にさらされ……あわてる僕は先をうながした。
どうやらリタは《銀十字団》の元メンバーから詳細を聞き出していたらしく、彼らが足を踏み入れた場所までは分岐点はほぼないとのことなので……そこまでを一日で進んで、それ以降は様子をみつつ攻略を進めていく流れになりそうだ。
ダンジョン内で確認された魔物などの特徴を確認したりしつつ、入念な準備を行うと、あっという間にその日は時間が過ぎてしまい……結局僕らは一夜をそこで明かすことになった。
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