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つどう仲間たち

「本当に《ラグラドール火山迷宮》に挑むつもりなのか?」

「危険だぞ」「ライアスの……二の舞になるつもりか」


 今僕達は虹の塔で、フォルワーグさん達を目の前にして話している。


 空を飛ぶ魔道具の開発に成功した功績(こうせき)で、リタと僕は銀等勲章を得ることに成功し、国から例のダンジョンに挑戦する許可を得た……今日はそのことを伝えに来たのだ。


 心を鬼にして厳しいことをいう両脇の老人をにらみ、リタははっきりと否定する。


「なりません……フィルシュが私達を守ってくれますし、私も、全力で彼らを守りますから」

「むぅ……」


 リタはうなる目の前の巨大な老人をぐっと強い瞳で見返す。


 フォルワーグさんはかなり思い悩んでいるようだった。彼がライアスさんとリタを孤児院から引き取って魔法士に育て上げたのだ。いわば二人は彼にとって孫のような存在であることは間違いない……だからリタは、彼にやけに気安く接していたんだ。


 そしてその老師の口から出たのは、やはり引き留める言葉。

 

「わしは……ライアスを行かせたことを後悔しておる。魔法スキルの発展の為とはいえ、若い才能ある命を無駄に散らしてしまったんじゃ。リタまでそんなことになれば、わしはあやつに()びる言葉も見つからんではないか……」


「いいえ……兄の命は無駄では有りません! 兄は確かに道なかばで()ってしまったけれど、多くの研究を残し、世の人々達が生きやすい世の中を作ることに力を()くしました。私も兄と同じように、精一杯のことをやりとげたいんです。そして、兄の努力を実現しないまま終わらせたくはない」


 リタは深々と小さな頭を下げ、フォルワーグさんに懇願(こんがん)する。


「お願いします、大じじ様。この道を進むことが、兄と私の夢を(つな)げる唯一の手段なんです。どうか……認めて下さい」


 閉じられていたフォルワーグさんの目がゆっくりと開かれる。

 そして、彼は沈黙を破った。


「わかった……ならば」


 ぐっと拳をにぎり、彼は椅子から立ち上がる。


「わしも同行しよう。なに、老いたりとは言え、この鍛えられた魔法の腕は誰にも劣るつもりは無い!」

「お言葉ですが……ぼけたんですか。少し前フィルシュに完敗してましたけど」


 ズ――ン。


 リタの言葉に表情を一瞬暗くさせたフォルワーグさんだったがすぐに立ち直ると、杖を頭上に掲げる。


「トルム、ホルム、しばらく宮廷魔法士の統括(とうかつ)はお主達に任せる……若い頃を思い出して血が(たぎ)ってきよったわい」

「御意」「御意」

「……大じじ様も、若い頃は冒険者として活躍してたらしいの……でももうお年だから。年寄りの冷や水にならなきゃいいけど……」

「そ、そうだね」


 耳元で中々意地悪なことをいうリタの言葉に苦笑しながら、僕はそれでも頼もしい味方が出来たことを心から嬉しく思った。


 長く魔法の研鑽(けんさん)を積んだこの老魔法士の参戦は、僕達にとって大きな助けとなるだろう。



 ところ変わって、第三騎士団の兵舎。


「何だと……そんな危険な所にフィルシュを黙って送れるか……! 私は反対だっ!」


 黙っていると後に尾を引くだろうから、アルティリエさんにも相談することにしたが、案の定といった反応。

 リタは済まなそうに頭を下げた。


「悪いけど……もう決めたことだから。大丈夫、命に代えてもフィルシュ達は無事に返す」

「そんな口約束……信用できるものか。そして何より……」


 アルティリエさんはぐっと両手を伸ばしてリタを抱きしめ、怒ったような困ったような顔をする。


 リタはびっくりしてアルティリエさんの顔を見上げた。


「私は……お前も心配してるんだよ。ったく……こんな小さいくせに、やることはいつも滅茶苦茶なんだからな。問題を起こしたのを後から聞かされるこっちの身にもなってみろ……ああ胃が痛くなって来る」

「子供扱いは止めて欲しい……」


 くすぐったそうに嫌がるリタの頭を愛おしそうに()でる彼女は、まるで本当に彼女のお姉さんみたいに見える。


 そして彼女は顔に黒い笑みを浮かばせた。


「……私も行くからな。くくく、今回ばかりはフォルワーグ老の要請を受けたという事で、絶対に休暇申請を通してやる。なに、それでケチを付ける位なら、団長の位など返上して、カールにでも押し付けてやるさ。だから……私だけ仲間外れにするのは許さん、いいな!?」


 そんな啖呵(たんか)を切ったアルティリエさんを見て、リタは目をぱちぱちさせた後破顔して抱き着き、胸に顔を埋めた。


「アル……本当にありがとう。大好き」

「んにゃ!? な、なんだ……急に甘えて来て。仕方のない奴だな……いつもその位素直にしていれば……可愛いのにな。ふん……万事私に任せておけ」


 アルティリエさんは顔を真っ赤にしながらそんなリタの髪を()いた。

 きっと彼女達の間には、僕らの知らない間に育まれた強い絆があるんだろう。


 こうして支えてくれる人達がいて、本当に良かった。


 これで、心置きなく挑戦することが出来る。リタの夢を(はば)む国内最高峰(さいこうほう)のダンジョンへ。

・面白い!

・続きが読みたい!

・早く更新して欲しい!


と思って頂けましたら下で、☆から☆☆☆☆☆まで、素直なお気持ちでかまいませんので応援をしていただけるとありがたいです!


後、ブックマークの方もお願いできればなおうれしいです。


作者のモチベーションにつながりますので、なにとぞご協力よろしくお願いいたします。

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