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抽出作業と引き抜き?

「ラクア! 帰っておったのか……」


 硝子張りの部屋の扉を開けて入ってきた少女も、ドガンス氏と同じような研究着に身を包んでいる。リタより小さなその少女の栗色の髪は左右へ散っていて、研究にじゃまなのか、後ろの長い髪は三つ編みにしていた。


「ワタシも研究に加えて欲しいっす~!」

「うるさいのぅ……まぁ、ええじゃろ」


 ドガンス氏は作業を中断させたことを()びると僕らに彼女を紹介した。


「この娘は、ラクア・シャルミット。年齢は十三と若いが……工房内で指折りの技術者じゃ。そして《抽出》も会得しとる」

「す、すごいんですね……天才ってやつですか」


 ぎょっとした僕の瞳と彼女のブルーアイがかち合う。

 どこにでもいる快活そうな少女にしか見えない彼女は、ニッと歯を見せて笑った。


「よろしくっすお兄さん! 若いのに雰囲気ありますね!」

「あ、ありがとう……そんなこと言われた事無いけどね……」

「なかなか見る目ある……。強敵」


 僕にも知らず知らずのうちに風格が? って、そんな訳無いか……。

 差し出された彼女の小さな手を握る僕は、リタのぼそっと言った言葉を聞き流してドガンス氏にたずねた。


「ええと、このまま続けますか?」

「そうじゃな……せっかくの機会じゃ。ワシももう年じゃし……ラクアにやらせてやってくれんか? ワシにはまだおよばんが、この娘もゆくゆくはこの工房を背負って立つようになるじゃろう。出来るだけ経験を積ませてやりたいんじゃ」

「僕の方は構いませんけど……」

「きゃーっ、やった! こんな機会滅多にないっすよ、ワタシ興奮しちゃう!!」


 彼女もドガンス氏に似て全身で喜びを表現するタイプのようだ。

 ぴょんぴょん飛び跳ねた後、僕の背中にがしっと飛びつく。


「わわっ……!」

「抽出には身体を接触する必要があるのでっ! このままやっちまいましょう!」

「むっ……」


 リタがジトっとした視線を投げかけて来るが、これはお仕事だから仕方ないんです、許して。


「ラクア、お前には《スピードアップ》のスキルから《神経伝達》、《マナブリーズ》から《魔力抽出》をそれぞれ取り出して貰う。ほれ、魔石を渡すぞ。」

「りょうかいっす! ってかほんとに《魔力抽出》でたんすねっ!? すごいすごい!」


 ドガンス氏の説明で最高潮にテンションが上がり、ルンルン気分で背中に抱き着いているラクアに断わりを入れると僕は魔法スキルを発動した。


「それじゃ、行くよ……《スピードアップ》!」

「……ワタシも行きますよ! 《抽出&合成》っ!」


 ドガンス氏の時と同じように取り出した光の玉を魔石に封じ込む。

 今度は光を放たない無色の結晶になる。


「あれ……」

「要素の属性が無いから、色が無くなっちゃうんす。ふ~……」


 言葉にならない僕の疑問にラクアがニッコリ説明してくれる。頭の回転速いなぁ、この子。


 さすがにかなり魔力を消費したのか、ちょっと疲れた息を吐き出して、ラクアは僕に寄り掛かる。


「ちょっと待って下さいね……ワタシの魔力じゃ、一回でほとんど使い切っちゃうんで」


 そう言って腰のベルトから彼女が取り出した液体は《マジックポーションM》だ。Mでも金貨一、二枚はするので、そんな物をホイホイ使うあたりやっぱり常人とは金銭感覚が違うんだろうなぁ。


 彼女はその青い液体をぐっと飲み干し、僕も少しでも助けになればとスキルを発動する。


「少し回復させましょうか。《マナブリーズ》」

「え!? わっ!」


 マナブリーズは周辺に漂う魔力を凝縮し効率的に取り入れることが出来る魔法。魔力回復並びにスキルの回転率向上、威力上昇等の効果がある。


 すると彼女はそのくりっとした目をぱちぱちさせた。


「すっごー……あっという間に回復しちゃった。お、親方! この人絶対工房に引き抜きましょうよ! フツーにヤバいっすよ! 錬金し放題っすよ!」


 ラクアのその言葉に、リタが今僕が羽織っているマントをつつく。それにドガンス氏は納得したようにつぶやいた。


「そうしたいところじゃが、お主、それを(まと)っているということは宮廷魔法士として務めておるのじゃろう? 特例以外では宮廷魔法士の兼務(けんむ)は認められておらん。ワシも国ににらまれたくないから無理じゃな」


 そうなんだ……いや僕、本職は冒険者なんだけどな。

 まぁ多分それは話してあるし、特例ってことで多分大丈夫……だとは思う。


「うう~っ……残念だなぁ。お兄さん宮廷魔法士辞めて下さい! 給料、並の職人の倍は出すっすから!」

「ダメ! フィルシュは渡さない! 第一彼の本職は冒険者なんだから王都に長くはいられない!」

「ってか僕は《錬金》使いじゃないし……」


 がくがくとラクアに揺さぶられながら僕は嬉しいやら困るやら。

 リゼリィをここに連れて来なくて良かった……きっとややこしくなったに違いない。


 王都に来てから本当、すごい人ばっかりと知り合いになって、とても幸運なんだけど……一方で、ものすご~く遠い所に自分が流されて行くような気がして、ちょっとだけこの先が怖くなって来たよ……。 

・面白い!

・続きが読みたい!

・早く更新して欲しい!


と思って頂けましたら下で、☆から☆☆☆☆☆まで、素直なお気持ちでかまいませんので応援をしていただけるとありがたいです!


後、ブックマークの方もお願いできればなおうれしいです。


作者のモチベーションにつながりますので、なにとぞご協力よろしくお願いいたします。

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