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ドガンス錬金工房

 翌日、僕達は王都にある錬金術の工房を訪れていた。


「忙しいのに呼び出しおってからに……なんじゃい」


 どうやら額にゴーグルを掛けているこのお爺さんが例の《錬金》スキルを扱う職人のようだ。ドガンス・クレブンと言う名前らしい。豊かな白髪頭の頂上はつるりと光っている。


 今ここにいるのは僕とリタだけ。

 リゼリィ達は、あまり人を連れて行くと怒られるという理由で、今回はしぶしぶ屋敷で留守番している。


「発見されていない《要素結晶(エレメント)》の断片を持つ魔法スキル使いを連れて来た」

「何じゃとーっ!?」


 リタの言葉を聞いたとたん、ドガンス氏は勢いよく店員を退(しりぞ)け、カウンターから飛び出して来た。


「お前さんかっ! この緑頭め!」

「ぼ……僕ですが……《エアウォーク》で浮力制御と言うのが出て来まして」

「ひょ~ぅ! 浮力制御! いいね! 他には何がある?」


 事前に調べておいた、よく使う風魔法の要素の断片を書き記したものを、リタが手渡す。


 エアウォークを筆頭に、内容は下記のとおり。


《風 風物質化 成形 射出》 ウィンドカッター

《風 範囲指定 成形 操作 回転》 ウィンドウォール

《風 範囲指定 風圧制御 風耐性》 ヘイスト

《風 範囲指定 風物質化 成形 操作 神経伝達強化》 スピードアップ

《風 範囲指定 魔力抽出 吸収 操作 効率化》マナ・ブリーズ 

《風 範囲指定 風圧制御 射出》ガスト

《風 範囲指定 風物質化 固定》エアロック

《風 範囲指定 音波増幅 出力制御》 サウンドアシスト

《風 対象指定 範囲指定 浮力制御 移動操作 風耐性》 エア・ウォーク


 …………などなど。


 おおまかにこんなところだけど、これを見て、ドガンス氏は目の色を変える。


「ついに出よったか! 魔力抽出! 神経伝達強化もレアじゃ! 小僧、すごいぞ……これで開発が頓挫(とんざ)していた要素結晶自動抽出器の開発に一歩近づく!」

「あはは、どれだけすごいのかよくわかりませんが……おめでとうございます!」


 彼のいきおいに釣られた僕の祝いの言葉に、リタが補足を()べる。


「お~……! これは快挙(かいきょ)。錬金術スキルの中で抽出を行えるのは全国に数人もいなくて、いずれ途絶える危険性もあったらしい。単純に使用魔力が多すぎて、相当修練を積まないとその域にたどり着けないらしい」


「その通りよ! 我が工房でもワシを含め、弟子でも使えるのは一人だけ。歴史が変わるぞ! ひゃっほい!」


 リタのくわしい説明に同意した老人はステップを踏みながら叫び踊り狂う。


 その様をながめる工房の関係者も、仰天(ぎょうてん)した目で僕を見つめ「新聞屋を呼べ!!」とか「我らの夢がついに実現する!」とか一斉にあわただしく動き始める。


「あ、あの、あまり騒ぎとかにして欲しくないんで、取り合えず今日は作業だけさせて返してもらえませんか?」

「なにぃ? 淡白な小僧じゃのう……まぁいいわい。ほれ、奥の研究室について来い!」


 ドガンス氏はそう言ってスキップしながら僕達を工房の奥へ(いざな)った。



 雑然とした研究室内の一角。


 透明なガラスにおおわれた空間でドガンス氏は僕に要素の断片の抽出方法を説明する。


「抽出スキルを行う際には魔法の使用者に触れ、ある程度魔力の波長を同一にする必要がある。よって、ワシが合図を使用してから魔法を使用して欲しい。今回使う魔法に、周囲に被害を与えるたぐいのものはないな?」

「ええ、大丈夫です」


 《浮力制御》は《エアウォーク》、《神経伝達強化》は《スピードアップ》、《魔力抽出》は《マナブリーズ》からそれぞれ抽出でき、どれも支援系魔法のため何かを破壊したりすることも無いだろう。


「では、これより抽出作業を開始する。む……?」

「どうしました?」

「いや……いつもより魔力が高まるようなが気がしてな。うむ、いい感じじゃ」


 老人はニヤリと笑う……どうやら調子いいみたいだ。


 ドガンス氏は僕の背中に手を当てて意識を集中させる。ああ、スキルを使う時に魔力がわき上がるのと同じ感じだ。


 背中から伝わる手のひらの感触がぼやけるような感じになったところで、彼は静かに告げた。


「良いぞ……一つ目の魔法を発動せよ」

「はい、《エアウォーク》」


 発動した魔法で浮き上がろうとする体をコントロールし、地面から軽く浮かぶ程度にとどめる。


 ドガンス氏は顔を真っ赤にしながら、「むむむ……」とうなり出し、そして大きく目を開いた。


「ムオオッ……《抽出》ッ!」


 彼の手が引かれ、僕の体の中から光の玉が抜き出される。

 そしてそれを、ドガンス氏はもう片方の手に持つ四角く加工された魔石に近づけた。


「そして、《合成》!」


 するとそれは光の玉を吸収し、緑色に輝き始める。


「フゥー! 成功じゃっ……」


 額の汗をぬぐう老人は満足げにそれをつまみ上げた。


「失敗することもあるんですか?」

「あるぞ……上手く引き出せんこともあるし、受け入れ先の魔石のランクが低ければ合成する時に破壊されてしまうこともあるしの」


 どうやらこの加工魔石はSランク相当の魔物のものを元にしているようで、小粒の宝石と同じくらいの値段で取引されているとのことだった。


「さて、次を……」

「おっしょー様ずるいっす! ボクのいない間になに面白そうなことやってるんすか!」


 その時、研究室の扉が派手な音を立てて開き、一人の人物が勢いよく飛び込んで来て硝子(がらす)の壁にビタンとへばりついた。

・面白い!

・続きが読みたい!

・早く更新して欲しい!


と思って頂けましたら下で、☆から☆☆☆☆☆まで、素直なお気持ちでかまいませんので応援をしていただけるとありがたいです!


後、ブックマークの方もお願いできればなおうれしいです。


作者のモチベーションにつながりますので、なにとぞご協力よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作成系は……愛好者が多い……。
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