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特例で宮廷魔法士に迎え入れられる

「「「すまんかった」」」


 再召喚後もほぼ同じ流れで打倒し、先程の部屋へ戻った僕らの前には今、目の前に三人の老魔法師が平伏しており……慌てながら彼らに立ち上がってくれるよう(うなが)す。


「いやいやいや本当気にしないで下さい……リタからも何か言ってあげて」

「ふん、見る目の無いジジイどもめ……!」


 ぼそりと辛辣(しんらつ)な言葉を吐き出すリタに老人たちはさらにしょぼんとして、僕は必死に立ち直らせようと言葉をつむいだ。


「で、でもあの召喚術は本当に驚きました。多人数でのスキルの合成で、あれだけ強大な召喚獣を作り上げるなんて!」

「そ、そうじゃろう? あの魔法は我らが数年がかりの血のにじむような修行の果てに……」

「一瞬で消されてたけど?」


 ズ――ン。


 重い影を背負ったようにへたり込む老人達を見下して、リタは満足したのか言葉遣いを直してフォルワーグさんと話を進め出す。


 そんな中、彼の左右に(はべ)っていた老人の一人、禿げ頭の方が、つつっと僕の隣に進み出て耳打ちして来た。


「リタはのぅ……抜きんでた才覚を有しており、若くして団長の誰も模擬戦で叶わぬほどの魔法の腕前を持っておるが……なんというか、そう、問題児なのじゃよ。ああ見えて意外と歯に衣着せぬ物言いと後先考えぬ魔法の行使で再起不能にした団員は数知れず……」

「んん……?」

「ヒッ……な、何でもないんじゃよ」


 ギラリと彼女の視線がこちらに向き、老人はすぐにうろたえて素早くフォルワーグさんの元へ戻る。どうやらよっぽど彼女は恐れられているらしい。


 リタはそれを見て何も無かったように話を続けてゆく。


「――でもこれで分かったでしょう……年齢は若いかも知れませんが、彼こそが今後の魔法士達を導き、魔法スキルの発展を担う稀代(きだい)の魔法使いであることは」

「言われんでも分かっとるわい……。そなた、フィルシュと言ったな?」

「は、はい……」


 フォルワーグさんは、重々しく僕にたずねる。


「あれ程の魔法スキルをどこで覚えたのじゃ? 師の名前は? さぞかし著名な人物なのじゃろう?」

「あ、いいえ……恥ずかしながら、独学で」


 すると三人の老人は全員飛び出さんばかりに目を見開く。


「独学ゥ!? お主、スキルの同時詠唱や合成詠唱の難度を分かっておるか!? 単一魔法を同時に二つ詠唱するだけでも、優秀な者が師について時には十年以上の時間をかけようやく覚えられる程だというのに……。ましてや合成詠唱など、宮廷魔法士の中でも一生を費やして覚えられんものはごまんといるんじゃぞ!」


 彼が言っている単一魔法云々というのは《ヘイスト》と《スピードアップ》を別々に詠唱した場合のことで、僕は同時に三重詠唱までしかできないので、それらを合成することで枠を確保して同時に使える魔法を増やしているんだけど、それってそんなに凄いことだったのかな?


 元々使える魔法の効力が低かったから、手数で補わざるを得なかっただけなんだけど……。


「は、はぁ……すみません。冒険してて死にそうになることもあったので、何とか覚えました」

「ぬ、ぬぅ……度重なる死線が成長をうながしたということか。いや、それにしても……才能うらやまじぃぃ……」

「最長老」「お顔に出ておりまする」

「い、いやなんでもないぞ、ウォホン」


 一瞬嫉妬(しっと)で顔を真っ赤にした老人が僕の目を見つめ、ゆっくりと頭を下げた。


「お主を宮廷魔法師に迎えたい。特例じゃが、入団当初よりリタと同じ団長の席を用意する……どうか、頼む、我々と共にこのリミドア王国の未来を担ってくれぬか」

「ええっ……そんな大げさな!?」


 宮廷魔法士はこの国で十本の指に入る位に、待遇(たいぐう)が恵まれている職業だ。


 何せ国のお抱えで、ヒラの団員ですら、月に一年は遊んで暮らせるほどの給料が約束されていると聞く。その団長なんて……そんなの僕には荷が重すぎるし、第一……。


「も、申し訳ありません……冒険者の僕には街で待っている仲間もいますし、このまま王都で勤め続けることは無理なんです!」

「そ、そんな! フィルシュさっき私達をできる限り手伝うって言った! それは嘘だったの!?」


 リタが泣きそうな表情で僕に取りすがる。

 そりゃあ言ったけども……さすがにここまでの大事になってしまうと腰が引けちゃうよ。


「こ、ここにいる間は出来る限りのことはしますけど……それ以上は」

「むぐぐ……い、いつまで王都に滞在するのじゃ?」


 悔しそうなフォルワーグさんからそんな風にたずねられるが、今後の予定がきっちり決まっているわけではなく、僕は素直に答えた。


「アルティリエ第三騎士団長から、追って勲章が手元に届けられるからそれまで待つようにとは言われています。それが終わったらクロウィの街に帰らないと……」

「そ、そうか……ではリタよ! お主に命ずる! フィルシュが王都に滞在中、そなたは彼のサポートを受け、風魔法を利用した飛翔術について徹底的に研究し、実用化を目指すのじゃ! 他の仕事は全て後回しにしてかまわん!」

(うけたまわ)りました……!」


 リタは大仰なお辞儀をして、僕の腕にからみつく。

 どうやらしばらく解放してくれる気は無さそうだ。


 そして奥から彼の両隣の老人二人が、一つのマントと帽子を持って来る。


「これは我らが虹の塔の通行証替わり」「同時に宮廷魔法師の一員と認められた証、受け取られよ」

「いやいやいや、ちょっと……」

「案ずるな……特例として一時的に貸与するだけじゃ。日当も支払うし、特に何かの責任を負わせるということは無い。もちろんそなたが望めば相応の地位で迎え入れる用意はあるがの」


 そう言って僕に強引にそれらを押し付ける。


「ではフィルシュ。我が国の未来の為……リタと末永くお幸せ……では無かった、空中を自由自在に行き来する為の魔道具の開発を進展させてくれることを期待しておる。よろしく頼むぞ」

「は、はぁ……わかりました」

「……リタ、わかっておるな?」

「はい、必ず…………。それじゃ行こ、フィルシュ」


 リタは大じじ様と何やら怪しげな視線を交わし、コクリと頷くと僕の手を引っ張った。


「ど、どこへ行くんでしょう」

「その他人行儀なしゃべり方はもうよして。私達はこれから運命共同体……だから当然今から行くのは、私の家」

「ええっ、ちょっとっ……待って! 僕は宿に仲間が……」


 僕は引きずられながら彼女を止めて貰おうと後ろの老人達を見たが、彼らは安堵(あんど)したような笑みを僕に送るだけで、何の助けにもなってくれなかった。

・面白い!

・続きが読みたい!

・早く更新して欲しい!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 下手に師匠が居るほうが育たないということはありうるか。 まあ、才能なり努力する余裕なり何なりあれば。
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