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宮廷魔法士団長の頼み

 ――気まずい。


 僕らは兵舎の一室で再度、テーブルについていた。

 円卓を三等分した位置に、僕と、ご機嫌ななめの騎士団長と、扉を開けた少女の三人が座っている。


「お、お茶がおいしいな~……」


 騎士団長手ずから入れて下さった茶は緊張で味がしないが、僕はぎこちない笑顔でそれを飲み込む。


「もう少しだったのに……」

「……何が?」

「何でもない……」


 ぼそりと呟くのは、僕を壁ドンしていた騎士団長。


 そして、少女が気負いなく接しているところをみると、彼女にもそれ相応の地位があるのかも知れない。とてもそうは見えない若さだけれど。


 山高帽を外した彼女の小さな頭は、やや赤に近い紫色をしている。

 髪は肩口で切り揃えており、眼鏡の奥から黄色い瞳がのぞいていた。


 あまり良い例えでは無いかも知れないけれど、じっとしていると人形のように見える。どのような身分の人かわからないので、僕は取りあえずていねいに頭を下げた。


「あの、僕はフィルシュ・アルエアと言います。勲章授与式に呼ばれて来たんです……その際にアルティリエさんには良くしていただいて……」

「知ってる……やっぱり、似てる……」

「へ?」


 ふと表情をゆるめた彼女に、何のことだかわからず、僕は少し首をかしげる。

 わずかにアルティリエさんに苦い表情がよぎったような気がした。


「何でもない……私も授与式に参列してた。すみっこの方だから、きっと気づかれなかったと思う」


 そうだったのか……ということは、やっぱりアルティリエさんの知り合いであるだけじゃなく、ちゃんとした役職についている人なんだ。思えば黒いマントも、下に着こんだミニドレスもかなり仕立ての良い品に見えて来る。


 彼女はにこりともせずに手を伸ばした。


「私、宮廷魔法士団、第二団長を務めている、リタ・チェックって言うの。よろしく。リタでいい」

「……わかりました。よろしく、リタ」


 僕は彼女の小さな手を握り返す……友好的な人物で良かった。


 しかしこの年で団長とは……本当に若いのか分からないけど、彼女は見た目に反して凄い才媛(さいえん)みたいだな。


「わ、私もアルって呼んでくれていいからな、フィルシュ――」

「そんなのはどうでもいい。フィルシュ、私はあなたにお願いがあってここに来た」


 アルティリエさんの便乗した言葉をバッサリと斬りとばし、リタは無感情な瞳を僕に向けて言う。


「力を貸して欲しい。きっとこれは、あなたにしか出来ないこと――」



 ところ変わって、ここは王城の敷地内にある宮廷魔法師達の宿舎、《虹の塔》と言う施設――外観がカラフルに彩られた蝋燭(ろうそく)のような塔の一室。


 アルティリエさんは騎士団の仕事があると席を外し、僕はリタにここまで連れて来られた。


「……この者を、宮廷魔法士に推挙(すいきょ)するというのか。団長リタよ」

「そうです、大じじ様」


 紫髪の少女は、静かに肯定する。

 いや、いきなり連れて来られてこれだから、僕も話が良く分かっていないんだけど。


 今、目の前には姿を見せているのは三人の宮廷魔法士……リタを含めれば、四人か。


 彼女以外は、全員が年老いた老人。

 そして三人の中心にいる、背も横幅も巨大な大じじ様と呼ばれている人物が……宮廷魔法士全体を統括(とうかつ)する権限を持つ、三長老の筆頭……フォルワーグ・ゲスゲンと言う人物らしいのだった。


 彼はぐっと迫力のある視線で僕を見つめる。

 だが、それはなぜか懐かしいものを見ているような遠い眼にも感じる……。


「フィルシュと言ったか……確かに、我らに匹敵(ひってき)する魔力をそなえておる。しかし、この者の持つ魔法スキルは《風魔法》なのじゃろう? 何故風魔法使いが脆弱(ぜいじゃく)だと言われておるか、知らぬわけではあるまい」


 老人は、白い眼をゆっくりと開閉しながら告げる。


「風魔法は具現化しづらいのじゃ。火や水、土のように確固たる形状を有しておらず、その為具体的なイメージが湧きづらい。これはスキルとして扱う際に魔法的な強度が劣るという致命的な弱点となる」

「務まらないと?」

「現に、冒険者であれ、騎士団や宮廷魔法士といった者達であれ、《風魔法》の使い手で上位に昇りつめたものはおらん。歴史がそれを証明しておる……話にならん」

「試して見られてはいかがですか」


 彼女は決然と言い切る。

 ……え、何を? どういうこと? リタさん、主語を言ってくれないかな?


「お主がそこまで言うならば」「試してみるのもやぶさかでは無いが」


 大じじ様ことフォルワーグさんの、両隣の老人二人が初めて口を開く。

 丸刈りと長髪と言う両極端の二人。


「え、ちょっとあの、何を試すんですか?」


 僕はしきりに首をひねって交互に視線をやるが、誰も反応してくれない。

 そんな様子をちらりともせずリタはうなずき、話は進んでゆく。


「ええ、お願いします」

「もし我らの望まぬ結果を示せぬ場合は」「わかっておるな?」

「わかっています……宮廷魔法士を辞する覚悟もあります」


 リタがひざまずき、首を垂れる。


 いや、わかってないわかってない僕は分かってないよ? そんな覚悟勝手にされても困るんだけど。ちょっと待って……?


 そしてフォルワーグさんは、重々しくうなずいた。


「よう言った、では……早速始めるとするかの」


 だから……これから何が始まるんですか――っ!?

・面白い!

・続きが読みたい!

・早く更新して欲しい!


と思って頂けましたら下で、☆から☆☆☆☆☆まで、素直なお気持ちでかまいませんので応援をしていただけるとありがたいです!


後、ブックマークの方もお願いできればなおうれしいです。


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