佐々木、異世界転生したってよ4
まりあが今の自分の立場をひたすらに教えてもらっている場合
授業が全て終わり帰り支度をしているといきなり声を掛けられた。
「メアリー様!!今日も王城へ向かわれますの?よろしければ私も騎士団へ差し入れを持っていく予定だったのでご一緒させてくださいまし!」
ふわふわとカールした金髪に黄色の垂れ目の超絶美少女と友達ってやっぱり類友で美人の友達は美人なのかな?待て、この子も見覚えがある。悪役令嬢の一人、キャサリン・ミモザ・バーンズリー伯爵令嬢だ。このゲームって悪役令嬢のレベル高いのに何故か皆ヒロインに恋をするんだよね。そこがポイントでもあるけど。現世の美人で人生勝ち組が乙女ゲームなんかするわけないでしょ?だからその勝ち組が打ちのめされて行くのが堪らないゲス仕様なんだよね。おっといかん、また現実逃避しとった。現世で現実逃避の為にやっていた乙女ゲームの世界で現実逃避で現世思い浮かべるって何事?もう趣味・特技欄は現実逃避にしようかな。
「えぇ、是非!それではダニエル様に差し入れに?」
「うふふ、えぇたまにはいいかと思いまして!もちろん騎士団の彼と親しい方たちにも配れるようたくさん用意いたしましたの!」
「あぁ、あんな噂が流れているのにも関わらずなんて健気なのでしょう!!」
「噂を気にせず、婚約者の為に王妃教育を受け努力を惜しまないメアリー様と婚約者だけでなくその周りにまで気を配る健気なキャサリン様…婚約者、淑女の鑑ですわ!!」
「あのお二方を悲しませる噂の元凶なんて塵になればよろしいのに…」
ヒロインも真っ青な健気な美少女の微笑を浮かべるキャサリン様と我が取り巻きーずから聞こえる呪詛の寒暖差に若干引きながら玄関まで行く。王妃教育って何するんだろう。学校終わりに塾へ行く感覚でお城に行くってすごいなぁ。
「メアリー様、噂は本当なのでしょうか?」
馬車の中不安げに上目遣いで見つめてくるキャサリン様。可愛さの暴力よ…
「さぁ、どの噂のことでしょうか?」
「かの令嬢がロナルド様、フィリップ様だけでは飽き足らずダニエルとエドワード様にまでちょっかいを出しているという噂でございますわ!その他にもあらゆる子息達からプレゼントを巻き上げているとか!!!」
そうかーヒロイン頑張ってるんだな。このゲームって一回逆ハーにしてから攻略対象者を決めてやっと誰かと幸せになれるんだけど逆ハー状態にしてある分攻略対象者達の糖分多めのアピールが楽しいんだよね。
「あの方がこの学園にいらしてまだ2か月ですのにこんなに秩序を乱されるなんて!しかも派閥を無視したやりたい放題!あの方この国を滅ぼしたいのでしょうか?他国の間者やもしれませんわ!」
そうかぁ2か月っていうことはそろそろ断罪に向けて大きなイベントが立て続けに起こって攻略対象者の気持ちが完全に婚約者から離れるんだよねぇ。ってわたし今もしかして転生してすぐに修羅場迎えそう?
ゲームでは王城で開かれるパーティーに在学生全員が出席して学園で学んだマナーや交友関係を親や大人たちの前で披露する超大規模な授業参観みたいなイベントで悪役令嬢たち全員が断罪されるんだよね。
しかも婚約破棄の際に支払う慰謝料が莫大なんだよ確か。簡単に破棄出来ないよう婚約時に契約を交わすんだけどその時に変なことをお互いにしないように保険をかけて結構大袈裟な金額設定されているの。結果悪役令嬢たちは家族からも見放されてそれぞれ修道院とか貧民院とかに飛ばされて慰謝料を受け取った攻略対象者達はそれを使って更にヒロインに貢いだり結婚式の資金にしたり旅行に行ったりするんだった。他人事で貢がれる側だったから気にしなかったけどこれは由々しき事態じゃ…
「キャサリン様、最近ダニエル様の様子はいかがですか?」
「実は最近少しよそよそしくて何故かわからないのです。なので今日は少しでもちゃんとお話が出来ればと思いまして…」
よし、ヒロイン処す。
だいたいせっかく大好きな世界に転生したのに自分が悪役令嬢でヒロインが他にいることも気に食わない。よし作戦を練ろう。でもそんな頭わたしにはないし誰か相談できる人を探そう。
馬車が王城の玄関についたのを合図に頑張ってと送り出す。ごめんなさい、あなたが頑張ってもたぶん何も変わらないことをわたしは知っているけど今は助けられません。だってわたし自分のことで精一杯だから。
あぁここがお城。あの王太子と仲良く過ごす中庭が見えるし騎士団のほうに行けば差し入れに行って周りから茶化されてうふふなルートがあったな…それにしてもわたし何か大切なことを忘れている気がする。
通された部屋にはシンデレラの継母そっくりな厳しそうな女性が待ち構えていた。
「ごきげんよう、メアリー様。本日はメアリー様の質問にお答えする時間とさせて頂きます。」
「ごきげんよう、どういうことでしょうか?」
「メアリー様の王妃教育はかなり進んでおります故今日はメアリー様の疑問に思われていらっしゃるところを改めて確認し次に繋いでいこうかと。」
これラッキーじゃない?なんでも聞いていいんだよね?
「では、我が国の派閥について教えてください。」
「それはもうずいぶん前に学ばれたはずですが?」
「あれから時が経ち理解できる範囲も深さも変わりました故お願いしたいのです。」
「そうですか。では、まず我が国には6つの公爵家、6つの侯爵家、8つの伯爵家、12の子爵家、20の男爵家があるのはご存じですね?そして8つの名門と呼ばれる貴族家がございます。建国時に特に篤い忠義を王家に示したアシュビー公爵家、キャンベル公爵家、アマリリス侯爵家、ゲイツ侯爵家、バーンズリー伯爵家、ブレイクリー伯爵家、ドーキンス伯爵家、フォレスター伯爵家です。特に北のキャンベル家と南のアシュビー家を筆頭に2つの派閥に分かれており貴族家の男性のミドルネームにはどちらに属しているかを示すために北はスペードとクローバーを南はハーツとダイヤを使用します。また女性のミドルネームの花の名も7つの貴族が高貴な花を好んでつけるため同年に生まれたその他貴族の子は洗礼式前に花が被らないように派閥の長にお伺いを立てることになっています。」
うへぇ名前一つでこんなに語れるものなのね。
「冬は寒く厳しいですが、工芸品に優れ勤勉な方が多く夏には避暑地としても人気の高い北と温暖な気候に恵まれ作物が豊かで楽観的で芸術家が多く冬でもそこまで冷えないことで人気の南。お互いの利益や思想の違いから派閥として2つに分かれていますが、それぞれの才を活かし代々国に忠義を誓い発展に尽力してまいりました。例えばキャンベル家は代々宰相を輩出していますしドーキンス家は騎士団長を多く輩出しています。ブレイクリー家は書の門番と呼ばれるように古今東西の書物に精通していますしゲイツ家は魔術師として才のあるものが多く宮廷魔導士長の多くが輩出していますしバーンズリー家は辺境伯として国の要塞を守る役目を担っています。またアマリリス家とアシュビー家は王族の降嫁先になることが多かったため王族の次に王族の血が流れていると言えましょう。なので他国の王族から同盟の為の婚姻の打診の際に適齢の王子王女がいない場合はこの2家が代わりにお受けします。まさにメアリー様のご両親もその例でございますわね。どちらの派閥もお互いを牽制しあうため切磋琢磨し国を発展させています。」
「もし派閥がなくなればどうなりますか?もしくは派閥の争いが激化したら?」
「派閥というものはどうしても利益を求める者がいる限り出来る者。なのでなんとも言えませんね。ただ混乱はするでしょう。派閥の争いの激化ですか…そうですね、建国以来の派閥でその意識は領民たちにもあるので内戦に繋がるやもしれません。まぁもしもの話ですわよ?そのようにお顔を真っ青にされて!王妃になる者はそのように簡単に表情に出してはいけません!!!!まぁ今日はもうここまでにしましょう。」
つまりゲームでは描かれてなかったけどこれって国を賭けたボール(ヒロイン)取り合戦になりかけていると…そんなこと起きたら修道院なんかにいる場合じゃないじゃん!!!!!!あぁわたしの幸せ転生ライフよ。
長すぎたので分けます。