36回目の生存戦略中(会話文SS)
本編完結後の妹の悩みを異世界転生者が聞いてる会話文。
異世界転生者は、妹ちゃんとだけで喋ると、転生する前の自分に引き寄せられるのか、割と素で喋りますので口調がやばいです。
*完全にギャグに振り切ってるのでお気をつけください。
「ねぇ、マルス様。誰がいいと思います?」
「誰って? 何の話ですか?」
「お姉様のお相手の話」
「……は?」
「誰がマシだと思います?」
「今クリスが絶賛溺愛中ですけど、クリスじゃダメなんですか?」
「この際だからはっきり申し上げますけど、私クリストフィアの事嫌いなんですよね」
「……は?????? あなた、普通に言い寄ってましたよね?」
「いやですわ、何年前の話をしてらして? もうずっと、遥か昔の話ですわ」
「ディアナ嬢とクリスだけだからな? 俺にとっては体感1年ちょいだけど、実際は数週間だからね?????」
「若かったのよ。10代の小娘だったんですもの」
「そんな恋愛経験豊富な顔してますけど、あなた一応まだ15歳ですからね? 精神年齢計算しましょうか?」
「やってみなさい。淑女に年齢尋ねるなんて愚かなこと、マルス様しないでしょう?」
「しないね! 命大事だからね! でも、一応言っておくけど俺、12公爵家の当主候補だからね? 普通男爵令嬢が話しかけるのも恐れ多いって言われる立場の人だからね!」
「いまさら何言ってるのかしら……そんなの当たり前でしょう? あら、お茶が無くなってしまったわ。おかわりいただけます? マルス様」
「うわっ、言葉と態度があってない。こわいよこの子……なんなのこの子」
「そうは仰いますけど、マルス様。あなたが私の事重宝してるの分かってますのよ、私」
「どこから来るのその自信……。まぁ、俺もさ……前世が割と平民でしかも女子だったから、ディアナ嬢みたいな気やすい感じは確かに楽なんだけど……楽なんだけどね?」
「楽ならいいでしょう? ……今日のこのお茶菓子……プティングと言いましたかしら? 美味しいですわね……またあなたが提案したの?」
「厨房の隅を借りて俺が作った」
「え? ちゃんと手を洗いました?」
「洗ったに決まってるだろ、ふざけんなよ」
「冗談が通じませんわね。でもこの間まで「厨房に入れてくれない……」って嘆いてませんでした? 公爵家の跡取りが厨房でコックの真似事なんてやらせてもらえるわけないって」
「もう耐えきれなくなって……、レシピ渡して、首傾げやがるから実地でやらせろって言ってようやく……、外じゃ絶対言えないけど……」
「前世の方が菓子職人だったってなると、色々大変ですのね。可哀想に」
「後継いだら、絶対専用厨房作る……。絶対だ……!!」
「その時はぜひごちそうしてくださいまし、まぁそれは置いといて」
「その辺にスッと俺の夢置かないでくれる???」
「ねぇ、お姉様のお相手。あのクズ以外で、誰がマシだと思います?」
「王太子捕まえてクズって言わないで貰える? 人払いはしてるけど、どこで誰が聞いてるか分からないんだぞ?」
「でも、クリストフィア凄く無能じゃない? 無能でしょ?」
「……なんでそんなにあいつの事嫌いなんですか? ディアナ嬢、それでも一度はクリスの事好きだったんでしょう? 好きだからリゼット嬢から奪ったんでしょう?」
「……まぁ、事実だから否定しないわ。若かったし、お姉様へのこの溢れる思いを自覚する前だったし」
「って言っても理由はあったんでしょう?」
「まぁ、正直に言えばお姉様への当てつけが8割だったわ。だって、クリストフィアにくっつくとお姉様が私のこと見てくださるから……」
「え? あ? ……そういうことなの????? 最初からそういうことなの????」
「自覚したのはお姉様を失ってからですけどね。まぁ、それプラス王太子っていう立場と顔がよかったからかしら」
「思ってた以上に酷かった……、クリスそれ知ってるの?」
「知ってるわよ。5回目の時は猫被ってたからあれだけど、6だか7回目だかの時にあんまりにも腹立って大喧嘩した時に結構な殺し合いを……」
「殺し合った話は聞いてたけど、もしかして理由それ? それなの? そんな理由で殺し合ったの???」
「若かったのよ」
「若けりゃ何でも許されるとかそういうことないからね!!!!?」
「まぁ、そういうわけで私、あの無能のことは戦友だとは思ってるけど、それとこれとは別でお姉様のお相手にしたくないのよ。嫌いだし」
「その一言いらなくない???」
「大嫌いなのよあいつ」
「もうやめてあげて!! そうは言ってもですね、王太子であるあいつ以上に、相応しい人います?」
「そうなのよね……、あいつ王太子って言う身分だけは使えるのよね。でもぶっちゃけそれだけなのよね……」
「しみじみと言わないであげて!!!!」
「身分で言うなら、あのクズ最高ランクなのよ……。なんてたって王太子ですもの。無能は無能だけど、普通に王太子としては申し分ないほど能力あるし」
「それは無能って言わない。俺から見ても、あいつはいい王様になれると思うよ。 ……まぁ、リゼット嬢が絡むとポンコツだけど、だいぶ改善したし……」
「でもね、マルス様……。あの男、ポッと出てきた私に靡いて、お姉様の事一回捨てているクズなのよ」
「………………あ~っ……」
「ね? 頭抱える程度にクズでしょう?」
「……いやでもそれを貴女が言いますかディアナ嬢」
「まぁ、相手が私だったっていうのは仕方ないと思うわ。だって私美人で愛らしいですし」
「おう、自信が凄い」
「でも、それであの女神のように美しく優しいお姉様捨てます? お姉様の努力一切気づかないとか無能でクズでしょう? はっきり言って」
「前世の俺なら多分切れてる……ダメンズ図鑑とかに載っててもおかしくないレベル」
「あらやだ、腹立ちそうな読み物があるのね異世界。こちらでも作りましょう! 筆頭はあのクズで」
「でも! ほら! めっちゃ反省したじゃんクリス!! 頑張ったじゃん!!」
「やり直す機会がありましたからね。なかったらただのクズ……」
「やめてあげてよ!!!!!!」
「それに、あいつお姉様の顔に一目惚れしてるってとこも気にくわないのよね……。お姉様は内面だって素晴らしく美しいのに」
「今!! 今取り返してる!!! 凄いじゃん!! 今の溺愛ぶり!!! 過保護になるのはともかくとして、メロメロじゃん!! この間だって、普通にデートしてたし!! 「リゼットがこの間、俺が疲れてるように見えたからって、手製の茶葉を持ってきてお茶を入れてくれたんだ……。疲労回復のまじないがかかっていて、身に染みたよ……。リゼットは本当に、心優しい乙女なんだ」って惚気てたし!」
「10年も婚約してて今更何言ってるんでしょうねあの男は」
「ばっさり!!!!」
「夜も下手くそだし」
「まって!? 爆弾発言まって」
「で、他にマシな男いないかしら? マルス様どなたか心当たりなくって?」
「聞いて!!!! 俺の話聞いて!!!! ……はぁ、マシな男……ね」
「あら、諦めるのね」
「どうせ、俺の話を聞く気ないでしょう? ……ちなみに俺とかどうで……」
「ふっ」
「鼻で笑われるの地味にショックなんですけど!!!」
「マルス様頭いいし、顔もいいですけど、異世界転生者なせいかたまに発言がちょっと……」
「持ち上げてから盛大に突き落とさないで!!! ありがとね!!!……、身分とか関係なくいくなら、あの近衛騎士とかは?」
「は? あいつはダメよ」
「子爵家だから?」
「身分なんかこの際どうでもいいわ。王太子以上の人なんているわけないもの。でもあいつはダメ、あれは確かにお姉様に誠心誠意仕えてくれているし、それは大いに認めるけど、あの男のあれはあくまで敬愛だもの。お姉様が妖精に似た姿でなかったら、決してあんな風に仕えてくれなかったわ」
「……愛情が芽生えるかもしれない」
「マルス様、宗教的な意味で敬愛してる神様を、そういう意味で愛せて? よしんば神を神と思ったまま愛してると自信満々に言いだしたら、それこそ傲慢以外のなにものでもないわ。それに重い」
「あ、俺が悪かったですごめんなさい」
「あの男が、お姉様をお姉様として愛していればともかく、現状それはないでしょう? そんな男にお姉様を伴侶として任せたくないわ」
「……それじゃあ他に誰がいるんですか? アレックスは?」
「なぜ私があの筋肉馬鹿にお姉様を任せなくてはいけないんですか?」
「真顔で言うのやめていただけますか? じゃあもう他にいないですよ」
「マルス様もしかして、お友達いないんですか? もっとマシなお友達お作りになったほうがよろしいですわよ」
「盛大に余計なお世話なんですけど!!!? そういう貴女は、マシな男知らないんですか?」
「……マリアンヌとか?」
「筆頭女官だった方捕まえて何言ってるんですか貴女は」
「えぇ、だってマリアンヌとっても男前なのよ。少なくとも貴方よりはイケメンって奴だと思うわ」
「いや、俺もあの方はイケメンだと思いますよ。35回目の時に敵に追い詰められた際、バッタバタと敵を薙ぎ払ってた時は普通にときめきましたけどね?」
「あら、ときめいたの? マルス様、マリアンヌが好みなの? ふぅん、へぇそう」
「そういうわけじゃないです、そういうわけじゃない! 普通に恰好いい女性だと思っただけです!」
「別に言い訳は結構よ。はぁ、私は同性でもお姉様を幸せにしてくれるならマリアンヌだって構わないと思ってるのに……」
「いや、こういうことはっきり言うのは憚れるけど、この世界は同性愛に対して偏見もってるし、君のお姉さんは同性愛に理解はあるけれど異性愛者ですからそのルートはないです」
「それに子孫を残さなくてはいけないという使命があるのよね……、未来のためとはいえそうやって一方的に母親になる使命与えるのはどうかと思うわ。お姉様が母親になりたいと望んだらでよくなくて?」
「その意見には、前世の俺が激しく同意するけど、突き詰めるといろんな問題を浮上させるからやめてください」
「はぁ、マルス様。宰相になったら、同性愛者同士でも結婚できる世の中にしてくださいね」
「……考えておきます。それにしても、同性愛って話になった時に、ディアナ嬢が「自分が結婚する」って言わなかったの意外でしたね」
「ええまぁ、さすがに近親相姦はダメだと思いまして」
「前言撤回させてください」
「ねぇ、マルス様。あなたの前世の世界に、別人になったうえで性転換できる薬とかないかしら? そうしたら私がお姉様と結婚できると思わない?」
「ねーよ!!!! 爆弾発言も大概にしてくれよ!!!」
「はぁ、あなたの前世の世界ならなんだってできると思ったのに、意外とないのね。がっかりだわ」
「がっかりだわ っじゃ! ない!! もう! ほんと! いい加減にして!」
「ねぇマルス様、このプティングもう一つない?」
「あるよ!!!!!!! もうやだこの妹!!!!」
「あら酷いことおっしゃらないで、悲しくなってしまうわ」
「いけしゃぁしゃぁと!!!! でもまぁ、俺が思うに誰を充てがったって結局無駄になると思うけど?」
「今更何を仰っていらっしゃるの?」
「いや、うん。今更だけど……、リゼット嬢ってクリスの事大好きじゃん」
「……」
「昔は王太子妃になるからって気を張ってたけど、現在クリスのあまりにもあからさまな溺愛に気が緩んで、めちゃくちゃ可愛いことになってるじゃん」
「……」
「この間もクリスにほっぺにチューってされて、真っ赤になってたじゃん。めっちゃイチャイチャしてたじゃ……」
「殺すわ」
「は?」
「あのクズ男を殺すわ!!」
「王太子を殺さないでくれますか!!!?」
「嫌よ!! 何が一番腹立つって、あのクズが一番お姉様に愛されてるのがムカつくのよ!!!!!!」
「結局それが本音じゃねーか!!!」
この話の裏テーマは「冷静に考えると、妹を含めてヒロイン以外碌な奴がいない」でした。
 




