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36回目の生存戦略  作者: salt
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35回目で巻き込まれた異世界転生者 1


やっと異世界転生者の登場です。



 俺、マルス・エヴァ・カルライナは、12公爵家のひとつであるカルライナ公爵で、この国の宰相でもあるジール・ディア・カルライナ公爵の長男であり、この国の王太子クリストフィア殿下の御学友であり、そして、どういうわけだか異世界転生者である。


 記憶を取り戻した時、俺はまだ5歳だった。


 ある日突然、前の世界にいた時の記憶が蘇り、発熱。

 体が回復した時には、もう完全に前世の記憶を取り戻していた。記憶を取り戻したと言っても、人格が戻ってきたわけではなく、どちらかと言えば一人の人間の一生を本や映画のようなもので強制的に見せられているような感覚に近く、そのため俺は頭がいい天才として持て囃されたが、中身はいたって5歳の幼児マルスのままだった。


 前の自分はチキュウという世界のニホンという国で、オタクをやっていた。と5才児が突然言い出した時、両親は頭を抱えたようだが、どうにかその発言が貴族の間で噂にならずに済んだのは不幸中の幸いだった。

 自分でも言うのはなんだが、俺も幼いながら馬鹿じゃなかった。

 両親の反応に5歳ながらも「これはダメな奴」と判断して、それから異世界の記憶は自分だけで楽しむことにした。


 幸か不幸か、俺の前世はオタクの女子だった。


 性別はともかくとして、このオタクというものは総じて好きなことに対しての知識がすごかった。

 とりわけ、前世の俺……いや、彼女は好きなことに対して一直線だったらしく、好きなアニメが飛行機ものならパイロットの勉強をし、好きなジャンルが展示をすると言えば西へ東へと1人で旅をするアクティブなオタクだった。


 80年近い生涯をオタクのまま自由に生き、自由に死んだため結婚はしなかったもののそれなりに平和な人生だったんだと俺も、死に際の彼女も思っている。

 生き生きと好きな事を勉強する彼女のおかげで、俺は学ぶことがとても好きだった。


 自ずと勉学に励む日々の中、1つ年上のクリストフィアに出会ったのは7つの頃だ。


 クリストフィアをはじめて見た瞬間、俺は思った。

(前の彼女が大好きな顔をしている)

 俺の前世のオタク女子は、NLもBLもGLもいける雑食だったが、とりわけ王子様顔に弱かった。


 最初はこの顔の持ち主が、実際問題どうやって生きているのかという興味だった。過去の記憶をいくら思い返しても、こんなに性癖ドストライクの顔を3次元に見かけた思い出はない。


 俺自身、幼いながらも自分の顔は前の自分が好きな顔だと思っていた。灰がかったアッシュブロンドに緑色の深い瞳、幼くとも整った顔立ちの自分だが、クリストフィアほどストライクな顔の持ち主は他にそうはいないだろう。


 だからずっと観察していた。


 婚約者ができたときに「婚約者は月の妖精のように美しいんだ」と褒めていた時も、心の中で「なるほど、イケメンは本当にこうやって褒めるのか」と思ったものである。

 時には助言したし、筋肉馬鹿な先輩のアレックスと並んでる姿に「多分前の彼女はこの2人で妄想して、下手したら本とか書いてたなはははは」などと思ったりもした。

 そうして、ディアナ嬢が入学してきた時、「これは三角関係ですね滾りますね」などと思っていた自分がいるのであるが、この時まで俺はあくまで観測者という気持ちだった。


 自分の前の生を観測したおかげで、今世も観測者という立場でいたのだろうと、今なら思う。


 その自分の運命が変わったのは、卒業パーティーの翌日。


 三角関係に終止符が打たれ、殿下がリゼット嬢の手を振り払った翌日……リゼット嬢が死んだという話を聞かされた時だった。




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