二人の共同生活
こうして僕と美冬との共同生活が始まった。
美冬は僕のアパートを見てひどく驚いていていた。
「……これが、アパート!? 違うでしょバカっ! 高級マンションじゃないの!! ていうかなんで二LDKなのよ!! 広すぎよ!」
「そうなの? 父さんに小さなアパートをお願いしたんだけどね……これ、大きいんだ……」
「お、親ばかね? 愛されてるわね……。はぁ……仕方ないわね」
愛されてる? いや、違うよ。
美冬に常識がないと言われると釈然としない。
だけど、なんだか分からないけど……こんなやりとりだけで、少しだけ楽しい気分になっているのかな?
自分の感情の振れ幅がわからない……
「ほら、ボケっとしてないで荷物置くよ。ねえ、今日の夕食は私が作るよ。……そんな事くらいしかできないけど」
美冬は確か料理上手なはずだ、家の事は全てやっていたから任せて大丈夫だろう。
……僕の家に人がいるって言うのも不思議なものだね。
誰かといるだけで、心の隙間がうまるんだ。
「ああ、キッチンはそこで、荷物は……」
これが人といる生活。
何か分からなけど、何かが分かりそうな気がしてきた。
「早くーー! あ、私この隅っこでいいからね? 寝床は床でいいから!」
そんな事はさせないよ。
僕と美冬の短い共同生活が始まった。
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その日の夜は賑やかだった。
「も、もしかして、私、俊樹君に手篭めされちゃうの!?」
「はぁ、僕は興味ないから安心してね。ほら、これと一緒に寝てね」
「はう!? ……う、うさぎのぬいぐるみだ。可愛い……これいいの?」
「ああ、今日からそれは美冬の子だ。よろしくな」
「……へへ、こんな大きなぬいぐるみが欲しかったんだ……」
流石に疲れたのか美冬はご飯を食べた後、いつの間にか、ぬいぐるみと一緒に寝てしまった。
……僕は仕方なく、空いている部屋のベッドに運んであげて、ぬいぐるみと一緒に寝かしつけてた。
――うん、寝顔はブサカワだ。
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「はう!? ね、寝坊したよ!! こ、ここどこ……あ、俊樹君の家……だ」
「おはよう、昨日は夕食を作ってくれたから、今日は僕が朝食を作ったよ。まだ七時だから大丈夫……ゆっくりして」
「う、うん、私も手伝うよ……って、顔洗ってくるね!」
人が一人増えただけで、ここまで賑やかになるものなのか?
美冬から感じるエネルギーは凄まじいものであった。
僕は朝からそれに圧倒されてしまった。
「きゃーー!! 何これ!? 昨日は見なかったけど貴族のお風呂よ! き、キレイ……タオルもふかふか!!」
少し騒がしすぎるけど……まあいいか。
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美冬はアルバイト先でも元気一杯であった。
「おはよーございます! 今日もよろしくお願いします!」
様々なアルバイトを経験していたのか、美冬には学がないが、地頭が良い事がわかった。
そして、見た目も美少女で、本来の明るい性格に戻ったのか、カフェのお客さんにすぐに好かれていった。
「俊樹君もしっかり働いて! もう、全然動いてないじゃん?」
――僕はマイペースでいいの。
美冬がそんな事を言うと、いつも店長が慌てて飛んで来た。
「美冬ちゃん! だめ、絶対! と、俊樹さんだけは怒らせないで……マジで、お願い……」
……ねえ、店長? 僕が何したの?
美冬は笑顔で答えるだけであった。
「はーい!!」
その笑顔を見ると、なぜか胸の中の何かが溶けて行くように感じた。




