表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命一ヶ月の僕が、ボロボロの少女を拾って同居したら幸せになれた話  作者: 野良うさぎ(うさこ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/29

死力を尽くす

 

 手術室の扉が開いた。

 手術を終えた先生が扉から出てくる。


 私達は先生の元へ駆け寄った。


 先生は疲れ切った表情で私達に告げた。











「手術は成功だ。全て除去できたはずだ――、が、非常に危うい事には変わりない。転移を含めて術後観察をしなけれ――」





 突然、先生は膝から崩れ落ちた。


「せ、先生ーー!?」

「だ、大丈夫ですか!」


 看護師達が倒れた先生の脈を取って青ざめた顔をする。


「――やばば、ちょっと部下の先生呼んで来て!! これ緊急オペ必要かもよ!」


「ちょっと――、あ、やばいね。担架もってきて!! 早くしろ!」


 私達はまごまごするだけで何も出来なかった。

 そうしていると、先生よりもちょっと年下のお医者さんが走ってやってきた。

 なんだかイケメンだけどほんわかした雰囲気がある人であった。先生を見つめる視線は真剣そのもの。


 お医者さんが息を切らしながら私達に告げる。


「はぁはぁはぁ――、あ、あとは任せて下さい。と、俊樹くんの手術は成功しました。追って連絡しますので、一旦待合室でお待ち下さい」


 看護師さんの叫び声が聞こえる。


「――意識無いよ!! 早く!!」


「ああ、任せろ! 俺が絶対助ける――」




 俊樹くんのお父さんが私の腕を引く。


「一旦、待合室で待とう。今は、手術の成功だけを喜ぶしかない。先生の事は彼に任せるしか無い――」


「は、はい。――わかりました」


 私達は騒然とする手術室前を離れて待合室に向かう事にした。






 私は待合室ですぐに未来さんにスマホのメッセージで連絡をした。

 とりあえずの報告しか出来ない。


 だってまだ俊樹君の姿を見ていない。

 先生だって倒れちゃったし――


 妹さんは私の手を握って不安そうに呟く。


「お兄ちゃん、大丈夫かな――、成功したって言ってたけど、まだ会えないのかな――」


「大丈夫よ。俊樹君は強いんだから。ね、もう少しだけ待ってみようね? 成功したんだよ! 喜んでいい事なのよ」


 俊樹君のお父さんとお母さんも私の意見に賛同した


「ああ、確かに不安は残るが、先生は死力を尽くして戦ってくれた」


「ええ、成功って言ってましたから、大丈夫ですよ」


 その顔は涙で滲んでいた。

 私は未だ実感が無かった。俊樹君の顔を見れるまで心が落ち着かない――


 それでも、今は――


 私達は喜びを分かち合い、お互いを抱きしめ合った。








 看護師さんが私達の元へとやってくる。


「す、すいません! お、遅れてしまいまして!! 先生の手術は完璧でした。あっ、俊樹君は病室に移りましたのでご案内致します!」


 私達の不安を少しだけ解消することが出来た。

 俊樹君の病室まで私達は足を運ぶ。


 




 病室をあけると、そこには――俊樹君が安らかな顔で眠っていた。

 胸は浅い呼吸を繰り返している。


 生きている証であった。


 みんな俊樹君の元へ駆け寄る。

 もちろん私も駆寄ろうとしたが、足が動かなかった。


 視界がぼやけてうまく前が見えない。


 看護師さんはちょっと得意気に私達に説明を始めた。


「先生の手術は本当に完璧でした。まさに神業です。この手術って業界で超有名になっちゃいますよ――。あっ、それで見える範囲の腫瘍は除去しました。転移したとしても向こう一年から三年は大丈夫だと思います」


「――もちろん、転移が無かったら十年は確実に大丈夫ですよ! これ、本当にニュースになるくらい偉業なんですよ!」


 私はすでに看護師さんの言葉を聞いていなかった。

 家族は涙を流しながら私に手招きをする。


 私は涙でぼやける視界の中、俊樹君の元まで歩く。


 私は俊樹君の右手を握りしめる。

 ――あれ? 何でこんなに熱いんだろう? 凄く熱い――


 私はそんな俊樹君の右手を優しく抱きしめた。


「俊樹君、あとは――目が覚めてからね」


 私はまだ泣かない。俊樹君がちゃんと目覚めるまでは――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ